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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
三章 群体悪霊
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「ふむ…………その話は確かに面白い内容だ」

「アンデッドに関してのことは普通の魔法使いは手を出さない。倒す以上のことに関わらず研究がしづらい。魔法使いとしてはそうだからその手の発想が出てこなかったのね……確かに内容としては面白くはあるけど、やっぱり調べにくい内容ではあるわ。アンデッドに関連する物事に触れなければいけないから」


 翌日。前日の夜、霊体のアンデッドたちを相手にした時に思った内容に関し公也はロムニルとリーリェに語って聞かせた。そして二人は公也の発想を面白い、と感じている。そもそも多くの魔法使いは霊体のアンデッドに通用する魔法を使うことができても、何故その魔法が通用するのかはほとんどの場合考えない。理由としては根本的にアンデッドという存在に関して研究することはそのままアンデッド作成の魔法に関わる危険になるからだ。それゆえにアンデッド方面は魔法使いは研究しづらい。ただ、魔法使いでも魔物に関する研究をしている場合詳しく調べている可能性はある。一応ネクロマンシーとして認定されるのはアンデッドを作る魔法、操る魔法などを使った場合である。特に作る魔法。なので研究するくらいならまだそこまで問題にはならない。ただ、やはりどこか忌避感があるため今までそういった方面での考え自体が生まれなかった。まあ、生まれなかったわけではないかもしれないが、結局研究や考察はされなかった。

 そういう意味では公也は魔法使いとしては少々異端と言える。まあ、公也の場合はネクロマンシーと呼ばれないように隠れてアンデッド関連の魔法を研究したい、知識をため込みたいという思いもあるし、アンデッドという存在に対する忌避感も薄い。死者ということで忌避感がないわけではないが、根本的にアンデッドという存在に対する興味が強い。少なくともその存在は公也のいた世界には居なかったゆえに。機会があれば暴食でその存在を食らいその存在の知識を得たいという願望もあったりする。


「アンデッド関連は厳しいか」

「まあ、通用する魔法の研究程度なら問題はないだろうけどね」

「下手にアンデッドに関わると面倒なことになることが多いの。他者から見た場合でも、自分がどうするかでも。興味を持ってしまうと……私たちみたいなのはそっちに手を出しちゃうことも多いのよ。知らない、考えない、関わらない。それが一番なの」

「ああ……確かにそういうところはあるな」


 研究者の厄介な所に知ってしまったことに対する興味を持つことがある。手を出してしまえばその分野に関して手を広げ、伸ばし、そして触れてはいけない部分に触れ、使ってしまうかもしれない。アンデッドに関しては作成の魔法を使った時点でアウト。なのでまず関わらない前提で接し、関わるにしても必要以上に関わらないようにする。そうしないと彼ら彼女らは手を付けてしまう。アンデッドの作成の魔法に。


「だけど効果の検証自体は……機会はあるかな?」

「例の悪霊の群体と戦うことになるかどうか次第ね……どんな感じ?」

「可能性は低くないと思うな。昨日霊体を相手にしたからその件で、な」


 前日の霊体のアンデッド相手にした戦い。公也は己の実力を見せつけた。短時間、何の問題もなく被害を出すことなく、ここの街に向かってきていた霊体を消し飛ばした。それは魔法を使える冒険者ではまずありえないような対霊体アンデッドへの戦闘能力である。そのことに関して冒険者ギルドが知れば、あるいはこの街の上層部……悪霊の群体をどうにかしたい人間が知れば、まず放置することは有り得ないだろう。

 公也はそうなることを考慮したうえで戦った。公也としては今回の悪霊の群体を相手にすることは参加したい出来事でもあったからだ。参加できないのならばそれはそれで仕方ないが、参加できるのであればしておきたい。それは知識的なもの、暴食による食事的な意味合い、犠牲者の数を減らすなど複数の意図を持ったものである。まあ、そう都合よくいくとは限らないが……少なくとも何らかの接触がある可能性は高い。

 そんなふうに三者で話し合いをしている。ちなみにヴィローサはまだ眠い様子だったので部屋で寝るようにと言い聞かせて寝かせている。そして、そんな三者が話し合いをしているところに戻ってきた一人の影が。


「あー……面倒くさいっすー……」

「フーマル? どうした?」

「あ、師匠。いやあ……妖精連れた奴と一緒にいたよな、ちょっと妖精連れていたやつを呼んできな、っていわれたっす……まあ、師匠のことっすよ。なんか知らないっすけど、師匠のことを冒険者ギルドのギルドマスターが呼んでいる見たいっす」

「そうか」

「ギルドマスターか……いきなり大物だね」

「まあ、キミヤ君は冒険者みたいだし下手に街の偉い人に呼ばれるとかよりはいいんじゃない?」

「そうかもね。あ、戦力への参加なら僕らも参加することは伝えておいてもらえるかい?」

「呼び出しでも受けたか?」

「そういうわけじゃないの。でも、ほら、今話していたこととかいろいろと試してみたいじゃない? それにアンデッドと戦うということ自体滅多に行うことでもないわ。霊体のアンデッドは魔法しか通用しないけど、私たち魔法使いが出る例は稀よ」

「魔法を使える冒険者で十分だからね。数がいたところでこちらも数をそろえればいいだけって言うのが普通だから。悪霊の群体のような例外の方が普通はないんだよ。だからそういった相手を直に見る機会は僕らも欲しい」

「……わかった。一応向こうにはロムニル達のことも伝えておくことにする。まあ、魔法使いのことだから冒険者ギルドがどう対応するかはわからないけどな」


 どうやら前日にやった公也の行動は冒険者ギルドのギルドマスターという大物に目を付けられるようなことであったようだ。そしておそらく今後の悪霊の群体退治への参加が促される可能性が高い。それに関して公也は大いに参加するつもりであるし、ロムニル達も存分に手を出したいところなようだ。ただ、問題としてはロムニル達の立場だろう。

 公也やフーマルは冒険者である。それゆえに冒険者ギルドがどう扱おうと問題はない。まあ、冒険者は元々自由な性質が強いため、強制的に、無理やりというのはあまり外聞きが良くない事柄ではある。できないわけではない。ただ冒険者という存在、そして冒険者ギルドに少々悪影響が出ると言うだけだ。それ以前に公也は別に著名な冒険者というわけでもないのでそういった強制的な依頼はやりづらい。せめてCランクになっていればまだ話は違ったと思われるが。

 一方でロムニル達は魔法使い。魔法使いは魔法を使える人間のことを言うのではなく、国の所属である魔法使いと認定されるだけの魔法を技術として持つ存在のことである。はっきり言えば公職の一種とでも言うのだろうか。いや、研究者研究職といったところだろうか。あるいは軍人。そういう感じであるため、冒険者ギルドからは話を通しづらい。どちらかというと先ほど言っていたこの街の偉い人がそちらの担当になるだろう。まあ、冒険者ギルドに話を通しておくのは悪いことではないだろう。あとで連携をとるにも、そういう人物がいるという情報があるなら悪い所でもない。あるいは冒険者ギルド側から伝えるという手段もある。

 ともかく、公也は冒険者ギルドに呼ばれている。それに赴き、話を聞き、どうするかを決める。


「……ヴィラは起こしておくか」


 その呼び出しに出向く前に、公也はヴィローサを起こしておくにした。連れていくにしても、待たせるにしても。



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