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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
三章 群体悪霊
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「どうやら冒険者たちは悪霊の群体の退治に失敗したらしい」


 フーマルやロムニル達も集まり、公也達は今後についての話を行っている。特にロムニルとリーリェは魔法使いであり霊体のアンデッドに対して比較的有効な攻撃手段を持つ。それゆえにその力を求められる可能性があるため、今後の話、状況についての話は必須である。とはいえ、彼らの立場や存在が把握されているかもわからないためそこまで危険視する必要性はないのかもしれないが。


「街が騒がしくなってるのはそういうことか……」

「面倒な話になったわね。でも、退治への参加を求められるとは限らないけど……」

「場合によっては話が来るかもしれないから念のため準備は必要かな」

「冒険者ギルドもけっこうざわざわしてたっすよ……」

「…………実際どういう状況かはわかってるか?」

「ちょっと……全然情報収集できてないっす。流石に今日戻ってきたばかりっぽいっすし」

「そうだな……フーマル、冒険者ギルドでの情報収集は頼む」

「了解っす……ところでヴィローサさんは?」

「あちこちで情報収集に回ってもらってる。街の外の観察もな」


 この場にはヴィローサがいない。ヴィローサは公也に頼まれその大きさ、妖精としての性質、飛行能力を生かした情報収集に回ってもらっている。公也から離れることに不満はあるものの、公也の頼み、命令であれば彼女としても文句は言えない。


「しかし……やっぱり負けたか」

「やっぱりって……」

「まあ、魔法使いの数が少ない感じだったしね。そもそも魔法を使えない前衛を連れていくこと自体悪霊退治には向かないし」

「無意味ではないけどね。魔法の使い方次第では戦いに参加してもらえるもの……でも、冒険者の魔法はあまり期待できないもの」

「冒険者の魔法は本当に戦闘に使う、使えるくらいで性能はあまりよくないからな……」


 公也が実際に見た冒険者の魔法はロップヘブンにて放浪魔を相手にしたときに使われていたものだが、攻撃能力も低いしそもそも詠唱も呪文も画一的な物、多少のアレンジはあっても結局のところ多様的なものではない。そもそも魔法の知識の薄い冒険者が魔法の改良などできるはずもなく、単純な攻撃手段としての魔法しか使われていないわけである。もちろん魔法について詳しく知ろうとするどこか頭のおかしいずれた冒険者もいないわけではない……公也という例外以外にも、研鑽して魔法技術を高めている冒険者はいるだろう。大体そういう冒険者は高名な実力のあるランクの高い冒険者なのでこういったあまり重要ではない街に滞在していたりすることは少ないだろう。

 別にこの世界、この国に高名な冒険者が少ないというわけではない。そもそもCランク以上からの冒険者の数がもともと少ないわけであるが、今この世界に残っている多くの国には相応に国を維持できるだけに十分な実力のある冒険者はいる。ただ、そういった冒険者は相応の舞台となる場所にいる。魔物の被害が大きい所、あるいは重要拠点、あるいは後輩の冒険者の教育のためなど、様々な形で己の仕事をしている。あるいはの国の冒険者でも別の国に冒険者の仕事で赴いたり、スパイのようなことをしていたり、まあいろいろとあるのである。そういうこともあって唐突に起きた悪霊の群体は本当に急な発生ということもあって対処に赴くような冒険者がいない……それ以前に情報伝達自体できていないかもしれない。

 幸いにも悪霊の群体が出現したのは公也たちのいる街から首都方面へと進む道の途中であるため、首都側からこちらに来る人間が被害に遭い首都に戻ることで情報が伝わり、そちらか冒険者、魔法使いなどが出向いてくれば対応される可能性は高い。なのでそこまで気に掛ける必要性はないと思われる……状況なのだが、首都側の情報把握がされる前にこちらがその存在に関して知り、またこちら側から首都へと行きたがる人間も多いということもあり、こちら側では早急に対応したいということで戦力となる人員を求める可能性が高い。


「問題は被害が出たことかな」

「冒険者が取り込まれたか……人数次第だが、面倒なことになるな」

「面倒って……どういうことっすか?」

「アンデッドに取り込まれるとアンデッドになる。アンデッドは生者を殺して数を増やす傾向にあるの」

「つまり、霊体のアンデッドに殺されることで同じように霊体のアンデッドになる……それがこちらの味方である可能性は低い」

「さらに言えば、相手は悪霊の群体……つまり霊体の群れだ。強くなる可能性も高いな」

「……それってやばくないっすか?」

「やばくはない。相手をするのが面倒になるだけで」


 基本的に悪霊の群体という魔物、アンデッドに関して公也はあまり警戒はしていない。基本的に魔法使いであれば魔法によりある程度身を護る術もあるし攻撃する手段も豊富にある。それ以上に公也は暴食の力もあって倒すにしても生きるにしても基本的には安泰である。


「それを言えるのは君だけだろうね……魔力の豊富さもあるんだと思うけど」

「魔法が自由に使えるのは反則ね……でも、取り込まれた霊体の動きはどうなるかしら?」

「えっと、どういう意味っす?」

「悪霊の群体の一部として活動するか、別れて個々の悪霊として活動するかだな。悪霊の群体はその集団性からあまり極端に動くことは少ないかもしれないが……一個の悪霊ならフットワークは軽い。場合によっては自分たちを見捨てた冒険者に恨み辛みを晴らそうと、またはこの依頼を持ち込んだこの街に復讐を、とか考えて行動するかもしれない。そういう意味でも被害者が出たのは面倒なんだ」

「なんすかそれ……」


 悪霊の群体は群体……つまりは群れということで複数のアンデッドが存在する。集合することで強力になるかもしれないが、その分個々のアンデッドの意思が群体での活動の障害になり得る。自分はこうしたい、私はああしたい、俺はこうする、僕はああする、そういう感じでアンデッドの一部がそれぞれの意思での活動を求める。それらの意見のぶつかり合いの結果、群体は己の自由を持たず、望み通りの行動ができずに周囲を蠢くことしかできない……ということもある。アンデッドによっては個々の意思がない存在もいるし、群体を統括しまとめ、指揮する存在がいればその意思個体によって積極的な活動が成されることもある。

 その一方で個々の悪霊は己の意思を優先し、己の望む行動を行うことが多い。特にケースとして多いのが悪霊の生前の恨み辛みを晴らす復讐事案。なお、こういった復讐をすることで恨みが消えて成仏する……ということはない。死者として生者に妬み僻みを持ち、生きとし生けるものを全て殺したくなる、また復讐した相手もアンデッドとなり、そのアンデッドと一緒に生者に恨みを……となることも多い。なお、アンデッド同士での争いはないわけではない。場合によっては復讐されアンデッドになった存在と殺し合いをすることもある。もっとも、結局どちらかのアンデッドが残ることには変わりなく、アンデッド被害は起こり得る。まあ、ほとんどの場合はなぜかそうならないことの方が多い。


「とりあえず情報収集が優先だ。まあ、参加を促された場合……参加したほうがいいかもな」

「これ以上被害が出ると後々に祟るからね……」

「悪霊だけにね……」


 上手い言い回し……ではなくガチの話である。実際悪霊が増え、大きくなり、大規模な被害を出して祟るということは普通に在り得る。なのでできれば被害が増える前に早急に、可能な限り倒しきるのが一番である。まあ、数が整わない状況で戦いに行くのはよくないが。



※魔法を使うにはまず魔力量が一定以上が必要量の前提となる。そして魔法使いになるには魔法をある程度以上に使えることが前提となる。つまり魔法使いは総じて魔力量が多い。魔法使いになれなかったのが魔法を使える冒険者、つまり魔法を使える冒険者の魔力量は少ないため多様な魔法は使えないことが多い。

※一般的な霊ならともかくアンデッドに殺されてアンデッドになる場合悪霊化する。今回は相手が霊なので悪霊になる。そうなるとまともな思考では動かない。一部の悪意を肥大、暴走させて行動するようになる。

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