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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
三章 群体悪霊
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「出現が不明瞭だとして、何か問題があるかな?」

「アンデッドの起源の問題だ。ただアンデッドが生まれただけなら特に問題はないが、アンデッドの場合は人為的に作り出せる可能性がある」

「……ネクロマンシーの存在ね」


 公也が考慮している今回の悪霊の群体が出現したことの問題点はそれが偶然発生したのか、それとも誰か人の手によって発生させられたか、という点になる。アンデッドは基本的な他の魔物と違い例外的に人為的な作成が行える。仮に今回の悪霊の群体が人為的に作られたものであるのならばまた同じような事件が起きるかもしれない。公也にとっては別にそういった事件が起きるかどうかは重要ではないが、無駄に被害が大きくなるのは望む所ではないし首都への道がそう何度も封鎖されるのはいろいろな意味で面倒である。そういう点ではネクロマンシーの手によるものであってほしくはない。

 それにネクロマンシーの手によるものであるのならば、アンデッドを作り出すというだけではなく人類側の害となる行いをしているということでもある。反国感情か、人間への敵意か、それともただの快楽殺人者の類か、ともかく極悪人であるのは間違いないことだ。それを野放しにすることは決していいことではない。個人が行っているのならばまだそこまで大きな危険はないかもしれないが、組織的な動きであればネクロマンシーの手による事件だけで済むとも限らない。裏にかかわる事項の調査も又必要になる。

 と、色々と考えられるが現状ではそこまで正確な判断はできない。そもそも悪霊の群体がネクロマンシーの手によってつくられたものであるのかを判断するすべは普通の人間にはない。同じネクロマンシーならできる可能性もあるが、その才質は公也にもロムニルにもリーリェにもない。アンデッド作成の魔法は使うことができるとしても、ネクロマンシーと呼ばれるくらいのアンデッド関連の魔法使いにはなれない。まあ、ネクロマンシーと呼ばれるのに程度はそこまで関係ない。アンデッドの作成を行ったかどうかの違いでしかないのだから。ともかく、彼らに判断しようがなく、またこれから悪霊の群体を倒しに行こうという冒険者たちにも判断のしようがない。なのでその問題に関しては彼らでは放置するしかない状況である。


「えっと、どうにかしてネクロマンシーが裏にいるかどうかの判断っていうのは……」

「アンデッドを見てそれがネクロマンシーによってつくられたかなんてわからないのよ」

「魔法使いでも、アンデッド作成の魔法に触れていればまだわかる可能性はあるかもしれないが、僕らはそうではないしね」

「……少なくとも見て判断できるものじゃないな。アンデッドの動き次第でもある」

「つまりわからないってことよね……まあ、相手は魔物だしそうなるのも仕方ないことかな」

「面倒な話になってくるっすね」

「そうでもないよ。そもそも現状は僕らがかかわることでもないしね」

「そうね。今回退治しに行く冒険者たちが失敗したらお鉢が回ってくるかもしれないけど」

「なんだ……それなら多分問題ないっすよね」

「……キイ様? なんとなく嫌な予感がするのだけど?」

「多分その予感は正しいな、ヴィラ。ここまでフラグになる台詞を言って順当に済むとは思えない……」

「やっぱりそうよね……」


 自分たちにはかかわりがない。悪霊退治に失敗しなければ参加することもないだろう。冒険者ならなんとかしてくれる。そんな期待を抱いた所で、そもそも冒険者たちが成功する可能性は公也から見て低いと言わざるを得ない。そもそも魔法使いだけで出向いたとしても悪霊の群体の退治は難易度が高いだろう。そこに余計な冒険者の付属、そもそも魔法を使える冒険者だけで行っても火力不足に陥る可能性の方が高い。魔法使いと魔法を使える冒険者は使える魔法の質、範囲、性能に大きな差がある。戦闘に関しては魔法使いよりも冒険者の方が能力は高いと思われるが、魔法の技術に関しては話が違ってくる。魔法だけは魔法使いの方が能力が高い。そして悪霊の群体相手には戦闘の実力よりも魔法の質や性能の方が優先される。つまり魔法使いを使わないという状況の時点で掃討に不利なわけなのである。まあ、そこまでの人材がいないというのも理由の一環かもしれないが……






 と、アンデッドの存在が首都への道を封鎖している、悪霊の群体が現れたことを知った公也たちであるが別にその悪霊退治に参加することはなく、公也たちはのんびりと街で冒険者たちの成功の吉報を待つ。可能性が低いとはいえ、不可能とは一言も言われていない。もしかしたら、彼らは成功するかもしれない。そんな淡い期待を彼らは抱いていた。アンデッド退治は相応に面倒であるがゆえに、その面倒が自分たちに回ってこないよう。

 しかし、そういった期待、願いは往々にうまくいかないもの。そもそもの前提からして冒険者たちでは悪霊の群体に勝てるものとは思えないという話。


「……ん?」

「どうしたのキイ様?」

「いや、少しあっちが騒がしいと思ってな」


 首都方面の道……街のそちら側に人が集まっている。もちろん門の先、街の外に出られるわけではない。それなのに騒がしい。何かがあった、そう思える状況だ。


「わかった。ちょっと見てくるね」

「頼む」


 ヴィローサは公也の望みを察し、自分から集団の下に情報収集に赴く。彼女は空を飛べるのでそういったことは難しくない。バレるとあれだし妖精であるため見つけられれば捕まえようとする動きもあるかもしれない。まあ、今の彼女は毒の力を自由に使えるので捕まえようと近づいた時点で麻痺させられるのだが。妖精であるため、近くに寄られてもそこまで気にすることがない。というのも、妖精とは基本的に気分屋、移り気の存在だからだ。好き勝手して周りに迷惑をかけ、人間に捕まえられ撃退される。そんな存在であるため、妖精が近づいてきただけでは一般的な人間には特にこれと言って手を出されることはない。

 そのため盗み聞きなど容易であり、何が起きたのか話されていることを聞いたヴィローサは公也の元へと戻ってくる。


「キイ様、悪霊退治失敗したって」

「そうか……」


 おおよそ予想通りの結果に終わった悪霊の群体退治の話。魔法使いということでロムニルやリーリェの招集があるのかどうかが気になる点だ。まあ、それなりに準備されて退治に行ったのにそれが負けて戻ってきた以上、すぐに行動できるようになるとも限らないだろう。ともかく状況がどう動くかを把握しなければならない状況と言える。


※アンデッド関連の魔法は特に才能に左右される。ほかの魔法も才能がかかわる部分はあるがアンデッド関連の魔法ほどではない。

※妖精を捕まえるのは妖精を売り払うつもりのある人間。そもそも妖精はヴィローサほどでないにしても危険が多い。下手に手を出さないほうがいい。多少いたずらをさせる程度でひどい場合に退治するというのが基本的な対応。一応魔物ではあるが人寄りの人間に理解のある生き物であるし。

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