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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
三章 群体悪霊
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6



 首都への移動の旅の途中。基本的に冒険者として無理に仕事を受けることもなく、道中にロムニルが研究目的に色々と行動してその結果小さいながらも面倒事がおきつつ、進む。ロムニルの行動は彼らにとっては面倒事を引き寄せる事態ではあるが、それはそれで彼らにとっても暇つぶし、退屈しのぎ、場合によっては旅の路銀稼ぎくらいにはなる。冒険者としての仕事は受けずとも、討伐の証明を持ち寄ったり回収した素材を供したり、ロムニルが見つけた素材を持ち込んだり、ロムニルやリーリェの作る魔法薬を売り込んだりとそれなりにお金になるような事柄を行っている。

 退屈しのぎの一環は様々な小さな騒動ばかりではなく、ロムニルの語る様々な蘊蓄、魔法に関わる知識に関してもその一つ。一応ロムニルの話すそれは魔法使いの使う魔法の知識、あるいはその関係、魔物に関することなどいろいろだが、基本はやはり魔法に連なるものになる。どちらかというと魔法に詳しくないフーマルやヴィローサ、魔法の知識を知りたがる公也に対して教えるように話しているものでもある。

 彼がそのような形で知識の披露、教授を行うのは魔法に関しての発想の手助けになることを望んで、また他にも魔法に関わる素材に詳しくなりフーマル達でも回収ができるようになること、あるいはフーマルやヴィローサが魔法か魔法に近しい能力を使えるようになりそれを調べることなどを目的としている。ただ話すだけであるし、魔法への発展はせずともフーマルやヴィローサの手助けになるのであればそれはそれでロムニル達の旅路の手助けにもなる、などと様々な効果を望んでのものだ。


「ところで」

「何か?」


 そういった知識の披露を普段はするロムニルであるが、この日は公也に対して話しかけてきた。フーマルもヴィローサも眠っており、他の面々も本来は寝ている時間。ロムニルとリーリェは何故か起きて公也と魔法に関する談義を続けていた折である。


「キミヤ君、君は時々ゴミとして処分しなければならない物を消滅させているよね?」

「ああ。邪魔になるからな」

「あれ、フーマル君に聞いたけど、魔法だって言ってたね。でも、あれ……魔法ではないよね?」

「………………」

「一瞬で消えているから空間魔法に見えなくもないけど、さすがに魔法使い相手に魔法であると偽るのは無理よ?」

「……そうだな」


 公也の持つ能力、暴食の力により公也はゴミ掃除を行っている。倒した魔物から素材を剥ぎ取った余り、あるいは旅路に持ち込み使用してこれ以上は用途が存在しない処分するだけの物、魔物などを相手にした結果破損して処理しなければならないものなど。そういったいらないものを公也は暴食によって食らっていた。普段から能力を使わなければ公也の中で振るわれない力が鬱屈として溜まり、周囲に大被害を与える小規模災害のような破壊として暴食の力を振るわなければならなくなる。多少の消費、多少の食事で完全にどうにかできるものではないが、ある程度は力を振るうことでその暴走を制限、期限を延ばすことができる。それゆえにそうして隠れて力を使っていたわけだが…………流石にともに旅をしている以上ロムニル達にもばれてしまうわけである。

 魔法であるのかそうでないのかは同じ魔法使いであればある程度はわかる。また公也の使うそれは魔法としても少々異質で有り得ない現象と言えるだろう。たとえるなら空間魔法が近いが、空間魔法で亜空間へのしまい込みや隔離は出来なくもないが魔力消費の問題もありそう頻繁に使えるものでもない。公也の場合は魔力の総量が高いので不可能ではないが、それでも少々使いすぎだ。ため込みすぎれば亜空間自体の利用が厳しくなる。またゴミゆえに腐るなどの問題も発生するかもしれな。まあ、亜空間なのである程度は大丈夫かもしれないが、ともかく公也はあまりにもゴミの処分に使いすぎているわけである。流石にそれは怪しまれても仕方がないというわけだ。そうでなくても詠唱なしで使い過ぎで明らかに怪しいのだが。


「恐らくだけど、フズの持つ危険感知のような、普通ではあり得ない特殊能力だね?」

「ああ。様々な物を食らうことのできる力だ」

「……食らうか」

「そうだ。あまり細かくは聞かないでほしい。存在は知られてもいいが、詳しく教える気はない……あと、他の人に話すのはやめてほしい」

「それは何故……と、訊く必要性もないかしら。さすがに起きていることからその力の内容は推測できるわ」

「そうだね。仮に考えている内容と合致するのであれば……少々危険性が高いからね。いろいろな意味で」


 公也の持つ暴食の力はその使い道が極めて広範囲にわたり、またその危険性もとてつもなく高い。犯罪利用も容易であり、戦争利用も用意、裏でも国でも使い道は様々な形であるだろう。ロムニル達は詳しくその効果対象を知らないが、仮にこれがどんな相手でも可能であり、認識している範囲であればどこまでも届き、どれだけの対象でも選択できる、などと知れば流石に絶句していたと思われる。今回はあくまでゴミ処理に使っていたためどの程度の規模まで使えるかは不明だが、それでもいろいろな意味で危険性は高いと認識できる。その利用の危険性もまた。

 今回公也はこれらの力を彼らの前で使ったのは迂闊……ではなく、彼らにバレることはある程度考慮済みである。流石にずっと使わずに済ませられるとは思っていないし、ある程度使い小さな規模での力の行使を最大認識にしてしまえば、それほど危険性の高い力ではないと認識してくれるかもしれない。それに彼らであればこの力の多様性、方向性の危険性を認識してくれるという思いもあった。そしてそれを誰にも話さずいてくれる、とも。これに関しては半ば希望しているところだったが、どうやら彼らは相応に頭がよく、周囲に言いふらす危険性とそれによる影響の大きさ、騒動の発展になることを理解している。


「誰にも話さないでおこう」

「誰にも話さないでおくわね」

「ああ、頼む」


 ゆえに、彼らは誰にも話さず秘することを選んだ。まあ彼らとしても穏便に過ごしたいことには変わりない。便利だが危険な力は自分たちで隠れて使い良いように利用するのが一番、そう彼らも考えるわけである。


「それにしても……まさか魔法も使えて特殊能力も持つのか……魔法と特殊能力は別物? 一致していないのか……魔法は特殊能力の一種であるという仮説を立てたが、特殊能力の重複は有り得るのか? ふむ………………」

「それに関してだが、俺は魔法よりも先に特殊能力の方を持ってたからな? それ以前は魔法は使えなかった。特殊能力を得てから魔法を覚える機会が来て覚えた。そもそも特殊能力は魔力を使うものじゃない」

「魔法とは別、というのはわかっている。ふむ……特殊能力と魔法はやはり別物か?」

「そもそも魔法は魔力を利用することで現象を起こす力だろう。個人、あるいは種族の持つものと違って魔力の方に由来するものなんじゃないか?」

「つまり魔力がある生物は魔法を扱えると?」

「魔法を使うのに必要な魔力を考えるとそこまで単純には言えないが……」

「長くなりそう? 流石にそろそろ寝たほうがいいと思うわよ?」

「………………」

「………………」

「確かにそうだね。この話はまた明日ということで」

「ああ」

「今回は君の特殊能力について尋ねたかったからちょっと長く起きていたけど、早く眠って頭を休めないと……」

「研究者は頭脳が命だもの…………おやすみなさい」

「ああ、おやすみ。じゃあキミヤ君、野営は頼むよ」

「わかってる」


 そうして公也だけを残し、二人は眠りにつき、この場にいる五人の内三人は眠っていた。起きているのは公也と……公也の特殊能力の話をしているのを眠っている状態で聞き取った結果ばちっと目が醒め隠れて話を聞いていたヴィローサだけだ。


「…………お休み」


 公也の言葉を聞き、答えは返さず、ヴィローサは眠りにつく。そうして公也だけが見張りとして残った。


※能力バレ。魔法使いには暴食の力は明らかに異常に見える。

※暴食の力の平和利用はかなり便利になる。もちろん悪用も。むしろ悪用のほうがやばい。

※仮に主人公の能力を二人が話すような可能性があった場合、二人を抹殺する覚悟くらいはある。もっともそれを察知する手段の有無の問題があるが。まあ、何かあった時にそうするくらいの覚悟はある、という感じではある。

※ヴィローサは地獄耳(主人公に関することのみ)

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