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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
三章 群体悪霊
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「アンデッドは死者がなるもの、まあ不死はよくわからないけど、死者も霊体も基本的には死んでなるものだ。これはどのアンデッドも特に変わりないものである。しかし、アンデッドには通常の魔物とは違う特殊な事情が存在する」

「特殊な事情……さっきから聞いてる、元々魔物でない存在がなるとかそういうものっすか?」

「いや……ふむ、それも関わりがあるのかもしれないけど、僕はそのあたりのことはわからないね。キミヤ君はどう思う?」

「…………魔物はどんな魔物も魔物として、生まれる。アンデッドでも、魔物として生まれるのは変わらない。ただ、アンデッドの場合、生まれる以外の出来方がある」

「生まれる以外の出来方……?」

「アンデッドは作れるんだ」


 アンデッドの他の魔物との違い、特殊な例外。人などの生物から、魔物以外の存在から成り果てるというのも特殊である、生者でなく死者から生まれるというのも特殊な物である。しかし、そういったものは特殊であるが、自然に発生するという点では他の魔物と変わらない。歪で不自然であろうとも、魔物は自然に勝手に生まれてくるものであるというのはどの魔物でもそうだ。ゴブリンでも、異常な数の繁殖ではあるが母体を元に生まれてくるのは変わらないように、二種の生物の混合したような姿の魔物が魔物として、最初から生まれてくるように。生物が死んだ結果アンデッドとなるというのは偶然の産物であるが、自然なものだ。

 だが、アンデッドの場合はそういったものとは違う、とんでもない特異性が存在する。他の魔物にはほぼ例を見ないそれは、アンデッドは人の手、魔法使いの魔法によって作り出すことができるという特殊性である。


「作れる……」

「そう。アンデッドの特殊性はそこだ。魔物は自然に生まれてくるものだ。アンデッドもまた自然に生まれる、発生するものだが、アンデッドは他の魔物と違って人間の手で作り出すことができる。死者をアンデッドにする魔法によってね」

「……マジっすか」

「もちろん魔法としては特殊で簡単に作れるものじゃない。生物干渉の魔法が難しいようにアンデッドの作成の魔法も難しい。まあ、不可能じゃないが……」

「そうね。やろうと思えば魔法使いは誰でもその魔法を使うことはできる…………ただ、作ることができるからと言って、それがまともなアンデッドとして作り出せるわけでもないし、それによる魔法使い側の負担も大きいわ。消費する魔力も桁違いになるし」

「それに法律的な問題も倫理的な問題もある。アンデッドを作るような魔法使いは危険視される。魔物を作り出す魔法使いだからね」


 アンデッドを作るような魔法使いは一般的に認められるようなものではない。そもそも魔法使いの作るアンデッドは通常まともなアンデッドにはならない。それこそ単純に死体を操っているだけ、であったり理性も何もないただ人を襲うだけのような幽霊を作り出すとか、そういうものにしかならない。基本的に不死を作り出すようなことはほとんどの場合できないと言われている。

 もっとも、魔法は基本的に誰でも自由に扱えるものだが、個人の才能が全くないわけではない。今までのこの世界の歴史の中、名のある才能高いアンデッドを作る魔法使いが存在し、それらが不死を作り出したり強大なアンデッドの軍団を作り出したなどの記録は一応存在する。もっとも、アンデッドを利用する手段はなかなか難しいものでその試みが成功してもその後の展開がうまくいかないことが多く、ほぼすべてが早い段階で滅されている。

 一方で魔法使いが作り出したアンデッドが長く残り続けることが多く、その被害が尋常でないことが多い。特に不死には吸血鬼、ヴァンパイアの存在もあり、繁殖の性質による作り出された眷属による大きな被害が起きたこともあった。今では大分鳴りを潜めているが、それでも当時に作り出されたアンデッドが未だに残っている可能性は低くないと言われている。


「才能のあるアンデッドを作り出せる魔法使いはいるが、それくらいだな」

「そういった魔法使いは滅多に見られないけどね。そもそもアンデッドを作り出すこと自体が許されていないから」

「それでも出てこないわけではないのよね……魔法使いの中に道を間違ってそっちの方面に進む屑が時折いるのよ」

「アンデッドは作っちゃいけないっすか……」

「危険が多い、不死でも作り出そうものなら洒落にならないくらいに被害を出す、死んだ人間を操る時点で危険視されてもおかしくないし、自分の家族の死体を好きにいじくりまわす魔法使いが好かれるはずがない、死んだ人間を兵士にできるなら生者を兵士にするよりも効率的すぎて戦力として危険、理由は様々だな」

「まあ、やっぱり倫理的な部分が一番だよ」

「そうだな」


 最終的には魔法使いの倫理が重要視される。


「ちなみに、優秀なアンデッドを作り出せる魔法使いはネクロマンシーと呼ばれているんだ。いや、アンデッドを作り出す魔法使いは皆そう呼ばれるかな?」

「彼らは魔法使いではない、と私たち魔法使いは認定するの。そうしないと魔法使いが糾弾されかねないものね」

「アンデッドを使うやつらはネクロマンシーって呼べばいいのね。キイ様も魔法使いだもの、同じに扱っちゃいけないわけね。わかったわ」

「そんなに酷いやつらなんすか……」

「基本的にアンデッド作成なんてものに手を出すのは大抵屑だからな……興味はあるんだが」

「ダメだよ」

「ダメよ」

「ダメだって」

「ダメらしいっす」

「……わかった、やらないから」


 流石に公也も魔法使いの二人、パーティーメンバーの二人を敵に回してまでアンデッドを作成するつもりはない………………まあ、バレない場所バレない機会で、隠れて作成することは将来的な可能性、一つの魔法の知識を深める手段として考慮している。まあ、それも本当に隠れて裏での話であり、またアンデッドを扱う、利用するつもりではなくあくまでアンデッド作成の魔法についての技術を知る、調べるための物である。いずれ機会があれば……だが。


※魔物は発生、生殖により増える。アンデッドは自然による増え方は発生のみ。ただし他の魔物と違い人工的な増え方がある。まあ魔物でもキメラ、合成魔獣は人工的に作れる可能性があると思われるが。

※魔法に寄るアンデッドの作成、あるいはアンデッドに関わる魔法の研究は犯罪。研究していると知られた時点で指名手配、追手がかかる、即逮捕のレベル。だからアンデッド関連の研究は進まない。なお、アンデッドを作る魔法が使えるかは魔法を使う本人の素質に大きく影響される。

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