表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
一章 妖精憑き
8/1638

8


 魔法を使いその技術を高める。そんなことをする傍ら、暴食の方も公也は使いその技術を高めていく。もっとも、暴食はその力の強さ、影響力、規模、そういった点では魔法よりも世界への被害が甚大となるため、積極的に多用していくつもりは公也にはない。使い続ければ、何度も何度も使い続ければ、確実に世界を滅ぼしかねない力だからこそ、扱う技術は高める必要があるし、使う必要性や頻度は下げなければいけない。とはいえ、食事の代わりともなるものだし、生存性を高めるのに必要なものでもあるゆえに、そこまで単純な話でもないが。

 暴食の力は現時点における公也の食事の代わりとして使われている力である。暴食により生命力を自身に還元する、食べた物質を自身に還元する、そういった点で暴食は食事代わりに使える。利点は高い。公也は別に普通の食事ができないというわけではない。ただ、食事をするうえで色々な問題はある。まあ、問題はないと言えばないのだが、ある。

 まず、食事をすることによる毒の影響など。これは一応効果があると言えるのだが、基本的には一時的に効くがその程度。今の公也の肉体であればそれほど大した問題はない。また、これは暴食で食らうことで判別ができる。暴食は食らった物の情報、知識を得ることができるからだ。もっとも情報の得方次第では毒と言ってもどんな毒があるかは不明だったりする。毒の名前をだされてもそれが毒かわからなければ意味はないゆえに。

 だが、毒以外の問題もある。なんというか、これを問題としてあげるのがあれな気がするのだが、味の問題がある。誰だって不味いものを食べたくはないだろう。暴食は何を食べたところで味は感じない。味覚的な知識は一応入るかもしれないが味で感じるわけではない。ゆえに辛い、苦い、甘い、酸っぱい、不味い、美味い、そういった味がどの程度の物か、というのを判別できない。物質量などで判別しようと思えばできるが、やはりそういった判別法は難しい。別に不味くても死ぬわけではないのだから問題がない……なんていう人はいないだろう。よほど腹が減ってそれこそそれ以外食べるものがなく死にかけている、とかの状況でなければたとえどれほど美味くてもゴキブリを食べようとする人はいるだろうか? 食べることが平気でも、美味いものと不味いものがあれば美味いものを積極的に食う、食べたいと思う物を積極的に食う、そうなるはずだ。つまりは、食えるから何でも食うというわけではない、ということである。できれば焼いて、美味い食べ物を、となる。そういったものがないのなら、暴食で代わりに食事を行った方がいい。

 まあ、そういった事例は少々極端だろう。普通に食べるのに食事の用意や必要な栄養素を考えること、それにかかる時間を考えるとやはり暴食で一瞬で済ませる方がいいとか、食べるものを考えなくともその辺にある物でいいとか、いろいろと理由はあるが、やはり食事自体は普通に食べたいところでもある。問題は調理道具もない、皿などの載せる物もない、ほぼ着の身着のままでの活動であるとかいろいろな理由である。まあ、その他いろいろと気にする点はあるが。

 さて、それとは別に暴食の力の利用だが、まずこれによる食する対象の選択、範囲の選択などがある。以前山一つを暴食によって食しているが、これは一度に一気に山を食したわけではない。暴食の力でがっそりがっそりと何度も使い徐々に削って言った形である。本来暴食の力に力の届く範囲などというものはない。その気になれば山一つくらい余裕で一度に食らえる。しかし、公也の認識の問題でそれができなかった。また、例えば届くといっても、どこまで届くものかも不明である。数百メートルか、それとも数キロメートルか、あるいは距離の際限がないのか。そういった点で不明点が多すぎる。実際のところ、これといって距離的な際限がない。もっとも、あくまで公也が認識できる範囲でなければならない、という前提はあるが。山一つも、その山一つを本当に食せるかどうかは公也の認識次第である。そのあたりはいろいろと面倒かつ複雑な性質となっている。

 それとは別に、暴食で食する対象に関わること。例えば、ここからここまでの範囲という範囲指定ならば、その範囲に存在するすべてを食らうことになる。しかし、それでは面倒が多い。それに食事の仕方が雑だ。できるなら、ここにあるこれのみを食したい、という指定や、これは食べたくないという指定ができたほうがいい……というか、それができる。普通にやるとそこに存在するものを根こそぎ食らうが、大地を食する対象に含まないとか、森の中にいる虫のみを食らうとか、あるいは果実のみを食らうとか、そういう細かい指定もできる。そういったことは本能的な判断だけで全てを理解できるわけではない。試しに使ってみて、それで理解していくものである。

 まあ、ともかくそういう形で邪神に与えられた暴食を利用し、扱い慣れていく。そんなふうに普通に生活している。普通とは何か、どこかから突っ込みが入りそうな話であるが、まあ普通にだ。


「さて……そろそろ街に行くべきか?」


 ある程度は魔法も使えるようになったし、そろそろ山中の森に留まるのもどうかと思い始めた公也。なにより魔法を使う効率の関係、あるいは武器として剣や杖などの武器、さまざまな道具、身を護るための防具、どれも極端な話必要はないかもしれないが、この世界において生きるのならばあった方が都合がいいかも、と思っている。

 一応暴食により食してきたものもあり、多少殺されたところで問題はない。一度や二度殺されたところで死なない。前にも言ったかもしれないが、山一つくらいを消しさるほどの攻撃をしなければ公也を殺すことはできない。ゆえにそういう点では安全性が高い。

 ただ、公也自身の問題がある。いや、見た目の問題もあるが、着ているものだ。彼の装備はこの世界に来るときのそのままであり、つまり元の世界のものである。まあ、多少ボロボロになっている……ところもあるが、それでもまだ実用範囲、いや、そうではなくてむしろその見た目……作りや染色、衣装としてそもそも別物であるのが問題だろう。この世界に存在する衣服とは違うのだから悪目立ちする。できればこの世界の服をどこかで手に入れたい。

 もっとも、そういうことができれば苦労しないわけである。女性ものであるが最初に出会ったあの女性の服を……とか、今更ながらもう戻れないことだが、何度も思っていることであるが、彼はそう思うようになってきている。いや、流石に女性の服はやめておいた方がいいと思うが。


「…………ん?」


 そんな折、彼は歩いているところである物を見つける。巣から飛び立つとき、失敗し落下したのか、少々怪我をした、野生の鳥である。


「………………」


 まだ生きている。このまま放っておいても、勝手に死ぬだろう。食事の問題から獣に襲われる可能性から、様々な点で野生は生存に厳しい。怪我をして自分で餌をとれない獣はいずれ死ぬ。


「拾ってみるか」


 単なる気まぐれに近いが、森の中で一人過ごすのも、彼としては少し退屈だ。いや、自分で学ぶ知や経験だけでも充実はしてるが、人並みに寂しいと思う気持ちはないわけではない。ペットでも飼って気をまぎれさせる、いや、ペットを飼うという経験とそのペットから得られる情報もまた、彼にとって満足する、充足するようなものだろう。やったことないことを試すことをやってみるのもいい、そんなふうに彼は思い、落ちていた鳥を拾ってみた。

 仮にだめだったとしても、その時は食らえばいいだけ。その程度の気持ちだった。


※暴食はそれを貪り自分の糧とする。その過程で情報を得ることができる……が、その得られる情報の性質には問題がある。知ってもそれが知りたい情報であるか、根本的な知識がなければわからない。そもそも、知りたい情報を知りたい形のまま得られるとも限らない。含有する各味覚物質量を知ったとしてどんな味か理解できる人間がどれほどいるだろう。

※暴食の力は便利だが暴食の力で得られない知識、情報も多い。特に経験や感覚に由来するものは暴食ではほぼ得られないと見ていい。ゆえにそういったことは自分自身で体験し経験しなければいけない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] ハムの物語が進まない。 設定とか考察が永遠垂れ流されていて飽きてしまう。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ