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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
二章 魔法使い
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 ロムニルとリーリェが公也たちと一緒にオーリッタムを旅立つこととなった。

 と、端的に書けばそれだけの話なのだが、それに伴う面倒は公也たちにとっては大きく増えている。一つは二人の立場だ。ロムニルとリーリェは扱いとしては魔法使い、研究者である。二人は冒険者ではない、これがまず大きな問題だ。冒険者としてのパーティーは公也、フーマル、ヴィローサの三人。それ自体は別に困る話ではない。ロムニルやリーリェとともに活動しても三者の記録しか残らないという点はある意味でいえば二人にも分散されるはずの評価、二人が行った行動や活動の分の評価が三人に入ってくるということでそこに関して言えばお得な部分と言えるだろう。

 しかし、一方で二人が冒険者ではないということは冒険者としての仕事、特に集団での仕事に関して二人を含めることができない、連れていくことができないという点が問題になるだろう。例えば護衛の仕事では冒険者ではない、仕事を受けていない二人を一緒に連れて行くということはできないだろう。今回の件で護衛依頼は受けずにという話になったのは行き先の問題だけではなく、二人の存在があるからこそ護衛依頼には連れていけないからこそという問題もあった。一応依頼自体が一時的な依頼、移動を伴わない周辺での活動に関わる依頼であればそこまで大きな問題にはならないだろう。二人は仕事に連れて行かず、街で行動させていればいい。ロムニルとリーリェも色々と知的好奇心の類があり、研究者として研究に携わる分野には手を出したいという部分はあると思われるが、冒険者の仕事に積極的にかかわりたいというわけでもない。ゆえにおいていくこと自体は問題なくできると思われる。

 まあ、つまりは冒険者として仕事を受けるうえで二人がいることで結構な制限を受けるのが問題、ということになるわけである。逆に言えば冒険者の依頼でもない出来事であれば問題なく二人を連れまわしても構わないということでもあるが。もっともそんな冒険者以外が関われるような事件がそう多くあるとも思えない。結局のところ二人は街に一時的に置いていく、ということが増えるだろう。


「………………すっげえ疲れるっすよ」

「まあ、面倒が増えてるのは事実だな」

「その………………ごめんなさいね、二人とも」


 疲れた様子のフーマルと公也。そしてその二人に謝るリーリェ。一体何があったのか……と、深く考える間でもない。原因は解り切っている。ロムニルである。基本的にロムニルは研究馬鹿とも称されるくらいに研究に傾倒しており、そのための実践、実験を機会があればやりたがる。魔物相手に。そのため魔物を見つけた時、勝手に倒しに行ったり自分の判断で行動したりする。つまり公也たちとろくに連携が取れない……取ろうとしない傾向にある。まあ、これはある程度制御ができないわけではない。研究にかかわる分野、事情をうまく利用したり、事前にある程度取り決めをしていればいくらロムニルでもあまり勝手な行動はしない。リーリェに指示を出して言うことを聞かせるのも効果的だ。

 しかし、そうそう都合よくうまくいくわけではなく、大体の出来事は突発的なことや突発的な相手が原因で起きることが多い。そういうこともあって面倒なことになることは多い。また、魔物に関して以外にも、何か物珍しい野草があればそれを採りに行ったりすることも多い。もちろんそれらに関しては魔法薬に利用するつもりで採取するようだが、基本的にロムニルが知らないだけで既に知られている物であることがほとんどだ。しかも大半は特に利用価値のないことが多く、そういった行動でそこにいる獣や魔物の行動範囲、縄張りに入ったりして面倒なことになる。

 更に、そういった魔物などに関連した出来事だけではなく、日常生活……今回でいえば野営に関しての物事になるのだが、休息用の仮設テントの設置、食事のための料理の作成、それ以外にもいろいろな片付けなどでロムニルは基本的に役立たずである。下手に関わらせると逆に悲惨なことになる程度には。そういうことに関しても基本的には今までリーリェがやってきたわけである。これで研究方面の才がなければロムニルはダメダメのダメな人間として見られていただろう。


「ロムニルは魔法方面のこと以外はあまりさせないほうがいいわ」

「……魔法は得意なんだよな。水を作るとかその程度でも、十分使い道はあるか」

「逆にそれ以外に役に立たないのが困るっすけど……」

「まあ、才能は人それぞれだ……世の中にはとことん料理が苦手な人間とかもいるし、ロムニルの場合は研究以外は全然できないタイプの人間なんだろう」

「正確には研究に関わること以外、でしょうね。じゃないと戦闘で魔法を使うこともろくにうまくいかないことになるわ」

「ともかくロムニルは魔法以外の事柄で働かせない……そういうことでいいな」

「ええ、そうして頂戴」

「で……今は何やってるんすか?」

「ヴィローサに監視させてる。採取した野草の類で色々実験してるよ」

「ここ、野営地っすけど実験とかできるっすかね?」

「そのあたりは魔法でちょちょいのちょい、って感じでどうにかできるのよ。研究に関することなら大体応用ができるの」

「…………もうちょっと普通のことに力を費やしてほしいっす」


 頭を抱えたくなるロムニルの使えなさである。まあ、ロムニルに対して公也たちはそこまでの期待を抱いていないのでそれに関してはまあいいか、と思うところである。


「それで……現状どの程度進んでる? ロムニルが時々道を逸れるから方向が変わってるときがあるんだが」

「そうね………………ちょっとずれてるけど、道なりに進めば問題ないわ。まあ、すぐに首都につくことはないけど。途中にも街はあるからそこで休んだ方がいいわね」

「ちょっと休憩挟めるのはいいっすね。出発はできれば疲労が回復してからがいいっす」

「別にそこまで疲れてないだろ」

「精神的な疲れっす。気疲れっす。いろいろな意味で……」

「…………ごめんなさいね」

「いや、気にしなくていい。原因はほぼロムニルにあるが、ついてくることを許しているわけだし、一緒に行くことを決めたのもこちらだ。リーリェの方こそ大丈夫なのか? 結婚している相手とはいえ、そこまで負担を強いられて」

「あら。あの人はああいうところが可愛いのよ?」

「………………」

「………………」

「聞きたいのならロムニルの魅力を語りつくしてもいいけど……聞く?」

「いや、いらない」

「やめておくっす」

「そう。残念ね」


 蓼食う虫も好き好き。人の趣味は人それぞれであり、好みも千差万別。研究馬鹿の魔法研究者のロムニルに対し、そんなロムニルのいろんな部分を可愛いと称して気に入っているリーリェ……いわゆるダメ男が好きなタイプだろうか。ともかく、この二人自体はとても相性がいいのかもしれない。


「はあ……いい奥さん、羨ましいっすね」

「頑張って恋人を探すんだな」

「………………師匠はその辺どうっすか?」

「ヴィローサ次第だな」

「あー…………じゃあ一生無理っすかね」

「さあな」


 公也の場合、恋愛関連に関しては少々複雑な形になりかねない。何故ならヴィローサが常に側にいるからである。まず公也とそういう関係を築きたいのであればヴィローサをどうにかする必要性がある。そこまでして面倒な恋愛関係を発展させようと思う人間はいるだろうか? それこそロムニルとリーリェの関係と同じ、蓼食う虫もというやつになりかねないだろう。

 そういう点を踏まえれば、彼らの中では一番恋愛的な将来性があるのはフーマルかもしれない。まあ、既に結婚しているロムニルとリーリェはそもそも恋愛関係の最終的な発展とも言える。ある意味そういったこれから、の人間とは比べることもできない立ち位置かもしれない。

 と、そんな話をしながら野営地をしっかりと作っていた三人であった。まだまだ旅の途中、そんな中での雑談である。


※勝手に出立する魔法使い。仕事はどうした。

※ヴィローサは他者を許容しないわけではないのでそこまで問題はない……まあヴィローサに脅かされて逃げない、負けない精神性があることを本人は求めている。それくらいに強くなければ来るな、といった感じ。そういう意味ではやはりヴィローサ次第というのは間違いではないのかもしれない。

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