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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
二章 魔法使い
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「………………その人たちついてくるんすか?」

「やあ、改めてよろしく。ロムニル・ギールセスだよ」

「この人が迷惑をかけるかもしれないけど、なるべく私が対処するから……何かあったらごめんなさいね。リーリェ・ギールセスよ。よろしくお願いするわね」

「あ、はい……フーマルっす。よろしく」


 魔法使い二人がついてくることになり、フーマルとしても色々と不満はある。しかしロムニルは自分で決めたことを簡単には覆さないし、もうついてくる気満々だったためそれを追い返すというの難しい。家を引き払う準備も、荷物を持っていく準備も、いらないものは既に送り出したりと持ち物整理もそれなりにされていた。完全に公也についてくるつもりだったのである。

 もちろん公也がそれを気にする必要性はない。ロムニルが勝手にやったこととロムニルのことを袖にすればいい。実際そうしても構わないだろう……それでもロムニルが勝手についてくる可能性が高いことに目を瞑れば。また、ロムニルは研究馬鹿と散々アルディーノに言われていたように研究さえできていれば別にそれでいいような人間だが、そんなロムニルと結婚し一緒にいるリーリェにとってはロムニルの勝手な振る舞いに振り回されその世話をしなければならないのは大変だろう。まあそれに関してはリーリェの意思であり、望みであり、彼女がしたいからそうしているだけである。しかしそれで確実に苦労する、面倒なことになるということがわかっているのにそれを見捨てるのは流石に公也でも忍びないと思った。それに関してはヴィローサの方からもリーリェの苦労を軽減したいという援護射撃もあった。

 そういうことで、リーリェとロムニルはついてくるということになり、フーマルに紹介する次第となったわけである。


「……いいんすか師匠?」

「まあ、確かに彼らがついてくるのはいろいろ苦労することもあるだろうけどな。でも、旅の人数が増える以上、苦労だけが増えるんじゃなくて夜営の手伝いとか、戦闘時に戦ってくれるとか、そういう部分で役に立って……くれるかもしれないだろう。一応魔法使いだし」

「かも、とか言ってるっすよね? なんとなくわかるっすけど、この人ら……特に男の方、ロムニルさんって絶対ずれてるっすよね? 面倒事が増えるだけになりそうな気がするっすけど……」

「…………それはわかるんだが、それがわかるならここで追い払ったとして、ついてこなくなると思うか?」

「あー…………」

「もう家も引き払ってるし、荷物も持ってきてるし、いらないものは捨てたり余所にあげたり寄贈したりとかしたらしい。それでも来ないか?」

「なんすかそれ…………頭おかしいっすよね……」


 冒険者であるフーマルでは絶対にしないような考えなしの行動である。まあ、ロムニルのような魔法使いで魔法研究を追求するような人間、変わり者と呼ばれるような存在だからこそ、それくらいの行動ができるのだろう。まあ、その影響やその行動による被害とかそういう方面に関して考えないからこそ……かもしれないが。だからこそできることもあるのかもしれないが、被害を受ける側にはたまったものではないだろう。


「あー、まあ、二人がついてくることは仕方ないっすけど、今後どうするっすか? えっと、冒険者ではないっすよね?」

「フーマル、護衛依頼はあったの?」

「今のところは見つからないっすよヴィローサさん。近場の採取の護衛とかは多いっすけど、人の移動のそれはないっすね……」

「ならちょうどいいんじゃない? ねえ、キイ様」

「……どういうことっすか?」


 依頼がなくてよかった、などと言われると冒険者としてはどうなのだろう。フーマルとしては依頼を見つけられなくて文句を言われるのではないかと思う場面なのに、そのほうがいい、都合がいいと言われると文句を言われないという点では悪いことではないはずなのに不満が出る。それに関しては冒険者であるという矜持がフーマルにもあるからだろうか。

 とはいえ、ヴィローサの言う通り護衛依頼を見つけていないのは都合がよかっただろう。仮に見つけていても護衛依頼をフーマルが勝手にパーティーで受ける、ということはない。そのあたりは一応パーティーリーダーは公也だからというのもあるし、公也に相談して良し悪しを見極めたうえで受けることを決めるべきだからだろう。しかし、受けないにしても護衛依頼は時期的な問題もあり比較的早い者勝ちであるため、その依頼を見つけた時点でギルド側に話を通しておいた方がいい。仮に見つけた場合、相談したり受けるかもという示唆くらいはした可能性はあるだろう。そういう点も含め、護衛依頼がなかったのはありがたい話になるだろう。


「いや、護衛依頼を受けると行く方向がその依頼に依存するだろう? それに……冒険者でない仲間がいる場合、依頼は受け難いかもしれない」

「あー、確かに……そこの人たちが来ることは想定してなかったっすから、そこはしかたないっすよ」

「それとは別に、あちらの提案になるんだが、首都方面に向かおうって話になってな」

「首都っすかー。いや、それは結構いいかもしれないっすね。別に冒険者としてその辺で無秩序に依頼を受けてばたばた移動するのもいいっすけど、何か目的目標をもってどこに行くっていうのを決めるのも悪いことじゃないと思うっすよ?」

「…………お前は賛成なのな」

「まあ、首都なら質のいい武器や防具もあるかもしれないっすし、依頼も結構いろいろとあるかもしれないっす。大きな都市は冒険者としては魅力的な仕事場っすよ。もっとも人も多いっすから、割のいい仕事とかはもう持ってかれててあまりないとかもあるみたいっすけどねー」


 フーマルは冒険者としての本分が達成できるのであれば割とどこの街でもいい、と言った感じである。むしろ大都市の方が武器防具、依頼の質がいいなどの理由もありそちらの方がいいのでは、と思うところもあった。

 ただ、大都市など人のたくさんいる場所、冒険者が多く依頼がちゃんと遂行される場所などでは、依頼が消化されていることによって冒険者として多大に活躍することのできる場面というのがそうない可能性もある。もちろん依頼者が多いということはその中に何かドラマ性のあるような大きな事件の依頼もあるかもしれないが、たくさんの依頼の中そういった依頼を見つけるのは難しいし、仮にそういった依頼があったとしてもフーマルに解決できるかは不明だ。

 冒険者として名を上げたいのであれば、それこそ今いるような地方都市、未開地など、大きな事件や異変の起きやすい場所に行った方がいい。そういう点でも大都市はそういった出来事が起きにくい場所だ。まあ、シティアドベンチャーのような街中で起きるような事件もなくはないが。フーマルはどちらかと言えば大都市でしっかりとしたこれからの活動への準備ができること、今のような乱雑に依頼を受けるのではなく、順々に依頼を受けることでの成長が期待できることの方がいいのだろう。まあ、そんなことを期待したところで想定通りに事が運ぶとは思えない。そもそもフーマルは公也を師匠とし、それについていくつもりなのだから望んだ通りにはいかない可能性の方が高い。


「……まあ、フーマルがそう思うならそれでいいが」

「強くなりたいっすから、できれば魔物退治系の依頼が多いといいっすけどね」


 本当に強くなりたいのならばフーマルは公也を師匠とするのではなく、ちゃんと師匠として己の技術を磨ける師匠に出会う方がいいのだが、それに関しては公也も何がいいのかわからないのでフーマルに何か言うことはなかった。もちろん他の面々が言うことはない。彼らの中で一番フーマルのことを考えてやれるのは公也だけという、色々な意味でフーマルにとってはよくないパーティーだと言えるだろう。


※主人公たちの中で常識人な人物:フーマル、リーリェ  リーリェがついてくるのはある意味フーマルの苦労、負担がある程度減ることにもなる。

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