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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
二章 魔法使い
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「ふむ、この街を出ていくのか。いつ頃になる?」

「今の所予定は不明……まあ、そんなに長い間ここにいるということもないけど」

「そう……急いで出るとなると大変だろうけど」

「冒険者ギルドで護衛依頼がすぐに、というわけでもなければある程度準備をしてから出るつもりだ」

「……ふむ。別に何処に行く、という予定があるわけではないんだね?」

「ああ。そもそも冒険者として流浪に近い形であちこち移動するつもりではある……まあ、何処か定住したい場所でもできればそこに残るかもしれないが、今の所そういった予定もない。住むにしても、住民権とか国籍とか、そもそも住む建物の問題とかあって面倒くさいしな」

「はは、そこまで気にしなくてもいいと思うよ? 僕らもここにはあくまで借り家の仮住まいさ」

「……………………ちゃんとした家が欲しいんだけどね。まあ、この人も意外とあちこちに行くものだから」

「そうなのか……ここに住んでるものかと思ったが」

「それほど長くではないわ。まあ、それなりにはいるけどね」


 彼らもまた公也たち冒険者ほどではないがそれなりに各地を移動するタイプだ。魔法使いは基本的に研究のため必要な物が得られる場所、必要な知識が手に入る場所、あるいは魔法の研究のやり取りができる場所、それらが活発な場所にいるのがいい。そのほうが魔法の研究がしやすいからだ。もっとも、魔法の研究と言ってもより深く、より様々なことを調べるのであればそれなりに色々な所に行って知識を深めるのはありだろう。多くの魔法使いはそういうことはせず、派閥の繋がりと柵もあってなかなかそういった研究のみに従事することはできない。また、魔法使いとしてその力を使わなければならない機会も多い。魔法使いは魔法使いで色々と複雑である。まあ、ロムニルたちはそう行ったことを気にしている様子はないが。


「予定がないなら、首都の方に行ってみるのはどうだい? いや、そもそも君たちがどこから来たのかは知らないけどね?」

「……首都か。そもそも俺はこの国の名前も首都も知らないんだが」

「…………あれだけ魔法の知識があるのにそういう方面は無知なの? 変な人ね」

「………………」

「ああ、ごめんなさい。彼のことを悪く言うつもりはないのよ? でも、魔法使いとして学んでいるのにこの国のことを知らないというのも奇妙だから……」

「まあ、確かにキイ様はちょっと変わったところが……変わったところが多いけど」

「知らないのは事実だから何とも言えないがな……いろいろと事情があるんだ」

「ふむ、ならばそういったことを学ぶ上でも首都方面に行きこの国のことを知るのは悪いことではないと思うよ? 首都からであればいろいろな場所に行くのも楽になるし、物も多い。知恵者も、冒険者の仕事も、色々と豊富だよ。下手に変な所に行くよりはよほどいい。それに間違って国を出るとそれはそれで大変かもしれないしね」

「……別に俺はこの国にこだわりがあるわけじゃないが」

「あら……そうなの? せっかく仲良くなったのに、そう思われてると残念ね……」

「はは、まあそういうこともあるさ。でも、別に国が違ったとしても彼と仲良くなってはいけないわけじゃないしね」

「なんで敵対するようなことが前提になるんだ……」

「この国も他の国との関係はいろいろあるから、だよ。そういったことも君は知らないだろう」

「…………確かに」


 公也は色々な意味で物を知らなすぎる。一応一般的な常識は入手しているはずだが……それに関しての引き出しが甘い。そもそも、公也はこの国の国際情勢やこの国の状況などはあまり興味がなく、最初に食らった相手から得たのはどちらかというと魔法関連と世界の一般的な事柄に関してが主である。彼の中の知識、記憶を探れば恐らくこの国のことに関しても…………出てくる可能性は低くはない。ただ、相手の魔法使いの女性も森の中に入り込むという変わった行動をしているのでこの国のことを知っているかどうかは不明だが。


「そうだね、ぜひとも色々と君に教授してみながらあちこち行って意見を聞かせてもらおう。魔法の実践という点でも大いに助けになる」

「……いや、別に俺はロムニル達と一緒に行くわけじゃないが」

「ん?」

「あら?」

「え?」

「……もしかして、ついてくる気か?」

「ロムニル? もしかして言ってないの?」


 ロムニルのまるで同行するかのような発言に対し、公也がそういう予定がない、同行しないと答えると疑問顔で返される。そして、リーリェからロムニルに言った言っていないのか、という言葉。そもそも何処に行くかもわざわざ聞いてきたし、ロムニルがわざわざ首都方面に進むといいんじゃないかという発言をしたりと、そういった意図があるような下地はあった。

 しかし、いきなりそんなことを言われても公也たちとしても困る話である。


「いやあ、ごめんごめん。実は君との話が有意義でね。しかし、君たちはどこか別の所から来た冒険者だろう? もしかしたらこの街から出ていくかも、と思った。数少ない僕らの派閥、僕らの結論と同じ答えを持つ者だ。できればその動向は把握しておきたいし、もっといろいろと話をしたいんだよ」

「少し前に同じ結論の子がいたんだけど……残念ながら少し前に出て行ってしまったからね。あの子はあの子で色々と自分の目的はあったから仕方ないんだろうけど」

「そうなのか……でも、いきなりついてくると言われてもな」


 流石に魔法使いの男女二人の面倒を公也たちがしなければならないのか、と思うと中々に大変なことだ。


「自分たちのことは自分でするわ……この人は全然だめだから私がするんだけど」

「代わりに僕は魔法で色々な支援をするよ。戦闘とかね」

「むしろ戦闘方面以外はあまり得意じゃないでしょう? もう……」

「実はもう支度は済ませているんだ。ここを引き払う準備もできているし。荷物もまとめているからね」

「…………そういえば部屋の中の整理は確かに済んでいるが」


 どうやらもう既に旅立つための準備は済んでいるらしい。


「そういうことだから、あなたたちについていってもいいかしら? ダメと言われてもこの人はついていくと思うんだけど……」

「…………止められないのか?」

「そういうことができる人じゃないわ」

「何というか……面倒くさいね、キイ様」

「……まあ、止めてもどうしようもないなら連れていくしかないな」


 色々な意味で頭を抱えたくなるが、止めようがないのならば連れていくしかない。魔法使いで研究者、その性質がより強く、他者のことを気にしないことも多い自分の意志を強く持つ面倒な存在。嫌っているわけでもなく、仲のいい相手だからこそ、そういう面倒な部分はどうにも困るものである。まあ、公也にとっては確かに同行者が増えるという面倒はあるが、それ自体が極端に困るわけではない。一番困ることがあるとすれば、公也の持つ暴食の力を使い難くなることだろう。それに関しては公也は後々考えることにした。今はどちらかというとフーマルにどう説明したものか、と考える部分の方が強かった。


※国の名前くらいは知っていてもいいのでは? というより様々な人間を暴食で食らっているのでそれくらいの知識は蓄積していてもいいと思われる。まあ本人が興味なくて引き出してない可能性はある。そのあたりどの知識があるかはかなり曖昧。でもこれはあってよかったんじゃないかなと思う。

※あの子。女性の魔法使い。主人公たちと同じ魔法に関しての理解を持つ至っている人物。

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