表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
二章 魔法使い
68/1638

26


「水の魔法は水のある場所とない場所、空気中にある水を集めるか集めず生み出すかで消費魔力が違う」

「ふむ? 空気中に水?」

「そこはわかるでしょ。でも、消費魔力が違う理由は……手間の問題?」

「代替の理屈だな。既にある物を利用するのと、集める手間と、ない状態で魔力を代替物にする……ふむ、水の総量での違いもあるか? 微かにあるとないでは全然違うかもしれない」

「水はそれでいいが、氷が謎なんだ」

「氷か。何が謎なんだ?」

「氷を生み出す場合と、水を集めて氷にする場合と」

「それは最初から氷にするからじゃない? 水の操作と凍結による氷化と、最初から魔力を氷にする。温度変化も関わるなら、最初から指定した温度で発生させる氷の発生の方が楽」

「なるほど」

「ふむ、つまり条件次第では既にある物を利用するより魔力で作り出すほうがいいのか」

「大半の魔法はそうじゃない? 手元に土や水や火、あるいはそれを生み出す物があるわけじゃないし」

「風の魔法はそういう点では空気がどこにでもあるから扱いやすいな」

「時間の魔法や空間の魔法はどうだろう?」

「難しい物を事例に出してもあまり適用しにくいと思うが」

「彼の言う通りね。そもそもそれらの操作は現状から大きく離れるものばかりじゃない」

「む……」

「ちょっと色々と実践してみようかしら。でもここじゃ狭いわね……」

「外に出て試すか。いや、でもその前に理論を書いてから……」

「論文は俺には専門外というか、俺は一応冒険者なんだが」

「そういえばそうだったね。そうだ、実戦で使う魔法はどんな魔法がある? 呪文は?」

「私も気になるわ。どんなものがあるか詳しく教えてくれないかしら?」

「ああ、えっと……」


 公也とロムニルとリーリェの三人が魔法に関して詳しく話している。それをヴィローサは傍らで見守っているわけであるが、入る余地がない。彼女は特殊な能力を持つがそれは魔法とは別ものだ。魔法で同じことができるものでもないと思われるため、魔法にそのことを持ち出してもあまり意味はないだろう。とはいえ、魔法を研究する者にとっては妖精の持つその能力も、魔法との関連、関係、影響、性質の違いなどいろいろなことを考えるうえで参考になるものであり、役に立たないわけではない。もっとも現状の公也たちの会話にはかかわりのないことだ。


「はあ……キイ様は楽しそう。私はキイ様と一緒にいられるけど、相手にされないのはそれはそれで寂しいんだよ? はあ……」


 ヴィローサは公也と一緒にいられるだけで嬉しいが、やはりちゃんと自分を見てくれるのが一番いい。魔法について話している公也は己の欲求を満たせるということもあって充実としている感じであり、それはヴィローサにとっても喜ばしい。それが自分と話している時ならもっと喜ばしい。そして話に参加できず公也と話す機会がないのは寂しく悲しい。


「……魔法に関して学んでみようかな。一応ちょっとくらいは知識あるけど」


 そんなふうに魔法に手を出してみようか、とヴィローサは思う。もっともヴィローサは魔法の才能に関して言えばかなり低いだろうと思われるし、どちらかというと妖精が持ち得る特殊な能力の方に力が向いているため使えない可能性の方が高い。まあ、魔力に関しては決して低いわけではない。なのできちんと学び、使えるように鍛えれば使える可能性はある……かもしれない。もっとも攻撃性能でいえば現状のヴィローサの特殊能力の方がはるかに優秀だが。

 と、そんなことを考えている中、ギールセス宅に一人の人物が訪れる。


「ロムニル、いるかい……ん? 妖精? ロムニルの奴、妖精を飼ったのか? 妻帯者のくせに趣味が悪い……」

「私はあの二人の物じゃないわ。何、趣味が悪いって? キイ様の趣味が悪いとでもいうつもりかしら? そもそも私は飼われていないわよ?」


 入ってきた男性の言葉で一気にヴィローサの雰囲気が変わる。本性をさらけ出したヴィローサはその雰囲気が一変し、気配に毒が混じり出す。毒気は迂闊な一言を言った男性も感じられ、当然ながら話し合いをしている公也やロムニルやリーリェも感じるものである。流石にそれを無視してまで研究の話をするほど彼らは研究馬鹿では…………あるかもしれないが、さすがに公也とリーリェは気配の方を優先する様子で行動が早かった。


「ヴィラ、どうした?」

「何、一体? あら、アルディーノ? 久しぶりじゃない。ここに来るなんて。珍しいわね」

「あ、ああ……久しぶり。えっと、そこの妖精は一体何かな?」

「彼女? ああ、そこの彼の仲間らしいわ」

「……仲間? 妖精は基本的に人間に飼われている物だと思うが」

「アルディーノじゃないか。どうした? 珍しい」

「ああ、えっと……彼女に関してなんだけど」

「ヴィローサ? ああ、彼女はそこの彼のだよ」

「ええ? えっと……」

「ヴィラは別に飼われている妖精じゃない。俺についてきてくれているだけでペットとかそういうのじゃないぞ」

「……そうなのかい? ああ、なんか変なこと言ってしまったようで悪いね」

「それはヴィラに直接言ってくれ」

「えっと……ヴィラ」

「ヴィローサって呼ばなきゃ殺す。ヴィラって呼んでいいのはキイ様だけよ」

「ご、ごめん! ヴィローサ、何か不躾に変なことを言ってしまってごめんなさい!」

「…………わかればいいのです。許してあげましょう」


 入ってきた男性をきっかけにした、状況描写を挟む余裕もない人の会話の入り乱れた様子はいったん落ち着く。


「えっと、これはどういう状況かな?」


 入ってきた男性は雰囲気が落ち着いたため、この家の家主であるロムニル、その妻であるリーリェの方に状況を訊ねた。


「ああ、彼は冒険者の魔法使い……魔法を使えるだけの冒険者じゃなくて、僕らと同じく高い魔法の知識を持ち、研究者とも魔法に関する話し合いができるくらいに魔法について深い知識をもつ、魔法使いの冒険者……冒険者の魔法使い? まあ、どっちでもいいね。要は僕ら魔法使いとそん色ない冒険者だよ。あ、名前はキミヤだったかな?」

「彼と魔法について話していたのよ。ええ、色々と参考になる面白い話が多いわ。魔法を戦闘で使うからかしらね?」

「……そうなのかい」

「……公也だ。よろしく」

「ああ、よろしく。僕はアルディーノ・クローフォードだよ。魔法使い……というよりは研究者としての側面が強いかな。ああ、あとそこの妖精みたいに人間じゃない存在だからね」

「エルフ?」

「そうそう。まあ、よろしくね」


 エルフの魔法研究者、アルディーノ。とりあえず自己紹介をすることはなんとかできたようである。もっとも、そちらはあまり重要ではない。そもそも彼はなぜこの家に来たのか、そちらの方が重要なはずである。


※あるものを利用する方が早い場合と新しく作り出すほうが早い場合の二通りの話。

※この三人が話しているとき地の分が妙に入りにくい。話している途中に割り込めないんですけど……

※妖精が魔法を使えるか、ということに関しては使えなくもない、が現状。実体を持つ自然の化身と言える妖精はどちらかというと世界の改変に近い魔法はあまり適性がない……かもしれない。

※本当の意味での研究馬鹿は現状ロムニルのみ……アルディーノは魔法研究者というよりは魔物研究者。研究馬鹿というほどではない……かもしれない。

※エルフ。一般的な他世界における基本的なエルフ像と概ね一致する種族。長命で老いが遅く若い姿をしていても百歳以上ということも珍しくない。どちらかというとスレンダーな人間が多いがこれは住んでいる場所と食事事情が主原因だと思われる。別に美男美女揃いというわけでもないが幼い自分に攫うことで長い間若いままいろいろなことに使えることから幼いエルフは比較的裏の方面から狙われやすい。もっとも多くの場合エルフの住んでいる場所はかなり閉鎖的で警戒が強く、場所もはっきりしているため近づこうとすればすぐにばれるのであまりその手の事件は起きない。もっとも零ではないが。なお、精霊との関わりがあるとか魔法に長けるというのはない。長い時間鍛えることで相応に強くなると言うことはあり得るが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ