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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
二十二章 冥精
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「プルートは俺を殺した。なら俺もプルートを殺してもいいということになる」

「………………………………私にはあなたを攻撃するだけの理由があったと思うけど?」

「だから殺していいと? なら俺も殺されたから殺していい。それをするだけの理由があると思うが」

「う……まあ、確かに殺してしまったのは事実だけど……」

「話だけ聞いていると到底信じられない内容だなあ……」

「普通は殺された後に生きていることはないですからね。まあ、死んでいれば今彼女はこうしてゆっくりできていないのです。わたしやヴィローサが容赦なく殺しにかかっているのですし」

「実際殺していいなら殺すよ? 今からでも。キイ様にそれだけのことをしたわけだし」

「………………あなたたち怖いわよ?」

「まあ、それだけ怒っているってことだな」

「むしろ殺されたはずのご主人様は全然怒ってないほうなのですよね。でも、プルート? お前を殺すだけの理由があればご主人様は容赦なくお前を殺すのです。それを理解しておいた方がいいのです。自分の死の力をあっさり消されたことを忘れてはいけないのですよ」

「…………………………………………」


 公也が普段通りなため勘違いする……いや、勘違いではないが、実際に怒ってはいないように見える。しかし、公也もアンデールの王、民をまとめ守るものとして、必要ならばその力をふるうこともある。プルートが先に自分を襲うだろう危険を排除したように、公也もまた自分たちを襲うかもしれない危険は排除する。エルフの村を追い出される形になったプルートは果たして公也やエルフたちに復讐心を抱かないだろうか、報復しようとはしないだろうか。そこに絶対といえることはない。

 ならばどうするかと言えば、容赦なくプルートを殺す。公也はそれをするだけの理由、殺されたという最大級の攻撃理由があるわけであるし、関係を持つかもしれないエルフに対して、自分に対して今回の件も含めた復讐をしてくるかもしれないという点など、プルートが攻撃してくる可能性があるのであれば、逃がさず大人しくいかせず、容赦なく殺す、それを選択できる。公也はアルディーノとは少し違う。アルディーノはそこに存在しなければ調査も研究もできない。しかし公也には<暴食>がある。<暴食>で得られる知識と得られない知識はあるものの、どちらも得られないままプルートを放逐するよりは公也が<暴食>により食らいその生態知識を得る方が公也としては欲求的に都合がいいことになる。公也としては可能な限り殺したくはないと考えてはいるだろうが、今回の場合最悪のことを考えなければいけないため、死の精霊である彼女を始末する必要がある。まあ彼女が死んでも死の精霊はまた生まれてくるので死の精霊という驚異自体は依然この世界には存在する。そこは仕方のないことである。


「で、どうだっていうのよ? 私に何をするつもり?」

「俺としては殺したいわけでもないし、アルディーノみたいに研究したい調査したいというのはあるが無理にどうにかしたいわけじゃない。とりあえず、どこか流浪するのではなくうちに住んでみるつもりはないか?」

「…………はい?」

「俺はアンデールという国の王で、そこに城を持ってそこに住んでる。表に出る機会があるかどうかはわからないが、そこに住んでもらっていい。どうせ行く当てもないんだろう? まあ、退屈しのぎになるようなものは少ないだろうけど……」

「なんで私がいうこと聞かなければいけないのかしら? 別に聞く必要もないと思うけど?」

「そうなんだが……じゃなければ俺はお前を殺す」

「それ脅しってやつでしょ」


 そんなことを言いつつもプルートは若干興味がある様子は見せている。公也の言う通り公也が彼女を殺す可能性はある。このままプルートがこの場を去るのであれば公也は彼女を殺す。それは事実である。それも踏まえて、プルートには選択肢がないといっていい。


「………………あなたについていかなきゃ私は死ぬわけ?」

「そうなる」

「はあ。じゃあ選択肢はないでしょ。ああ、でも、変なことはしないでもらえる? 私別にそういうことはされたくもないし」

「ああ、それは別に問題ないよ。アルディーノも研究したいとは言っているが、無理に調査したりはしない」

「え? できればいろいろ調べたいから触る許可が欲しいんだけど……」

「それは本人にもらえばいい」

「触らせるわけないでしょ」

「ええー……」


 公也としては色々と観察、情報収集ができればそれでいい。アルディーノとしてはいろいろ触れて回り調査したいかもしれないが、それはプルートの方が許す気はないらしい。まあ、それでも間近で精霊の調査ができるだけでも内容としては大きいだろう。


「わかった、とりあえず一緒に行けばいいんでしょう?」

「ああ」

「それで……なに、私はあなたに傅けばいいのかしら?」

「いや。そういう目的じゃないし。単に住んでもらえばいいから……まあ、大人しくはしていてほしいけど。欲しい物とかあるなら頼めば内容次第では答えてもいいし。どうせなら友人とか作って楽しく過ごしてもらえれば」

「閉じ込めるつもりの側がいうこと? 自由に出歩いてもいいわけ?」

「人にあまり見つからないように、城の周りなら、かな……」

「そ」


 プルートに関してはあまり好き勝手な行動は許可できないが、城内ではある程度の自由は許す。ただ住んでもらう場所はできる限り公也たちも安全できる場所、彼女をどうにか管理できるのではないかと思う存在の場所で。できればそこでそちらの管轄に入りできれば制御してもらえれば、と思っている。てはいえ自由を一切許さないわけでもない。殺されたという事実があるのでその分だけの制限はかけるが、アンデールにいてもらうという束縛だけでも大きいかもしれない。

 まあ、そんな感じでプルートの扱いは決まった。とりあえず連れて帰りアンデールで過ごしてもらう。できれば一生、彼女が死ぬまで永遠に。精霊である彼女は通常の生死、寿命による生死がないためその点生き続けるのであればずっとい続けることになるだろう。そういう点ではちょっと不安もなくはない。いつまで束縛できるか、という点で。やはりどうにか彼女自体を抑えられる存在はいてくれた方がいい気がする。


「メル、ヴィラ、とりあえず彼女と一緒にいてもらえるか?」

「安全面で心配なのですが……エルフの村に行くならプルートはいないほうがいいのですね」

「殺していい?」

「ダメ」

「ダメなのです」

「えー…………」

「できれば逃がさないように。逃げたら連絡頼む」

「わかったのです」

「…………逃げないわよ?」

「そうなのですね。逃げたらご主人様はたぶんあなたを殺すのです。わたしもちょっと本気でお前を殺すために行動するのですし、ヴィローサもその力に関して手加減はしないのです。死の力は使うな、なのですよ? その気配の感知はできるのです。使えば私はその体を焼くのです。ヴィローサには毒による汚染を頼むのです。本気で言っているのでちゃんと話を聞いて大人しくしているほうがいいのですよ?」

「………………わかったわ」


 プルートは精霊で強力な存在ではあるが、そんな存在でも恐ろしいと感じる気配をメルシーネが放っている。なんだかんだでメルシーネは竜、それも世界最強に近い竜といってもいいくらいの強さは有する、有する可能性のある存在。それが見張っている以上プルートも迂闊なことはできない。死の力は強力ゆえにその気配の感知もしやすいのだから。




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