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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
二十二章 冥精
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「とりあえず彼女の扱いだけど」

「エルフの方としてはどうしたい?」

「僕……ではなくエルフの村の方だね。エルフの村としては彼女がいられるといろいろ困る感じだね」

「あら? 歓迎してくれたと思うんだけど?」

「いや……流石に精霊を無碍に扱えるほど僕らも精神は太くないよ。精霊は強い、恐るべき存在であり機嫌を損ねないようにしないと何が起きるか、何をされるかわからない。それに周囲に起きていた魔物や獣の不審死もあったし、精霊がその原因なら自分たちも似たようなことになりかねない。だからなるべく大人しくしてもらえるように、という気持ちで応対していたんだろうと思うけど」

「そうなのかしら。残念ね」

「……わかって言ってるよな」

「ええ、もちろん。私たちの扱いなんてどこも似たようなものだし」


 死の精霊としてそれなりの長い期間を生きている彼女は精霊としていろいろな形で扱われた経験があった。そのほとんどは精霊ということで敬われたり恐れられたりが主となる。もちろん精霊に対して対抗しよう、敵対意思を見せるといったこともないわけではないがかなり珍しいケースである。そのことに関してプルートは理解しているし、それゆえにエルフたちの扱いもいつも通り、本当に自分を歓迎しての物でないのは理解している。ただそう扱うのならそう扱われよう、程度の考えだ。彼女としてはどうしようとも別に構わないところである。殺しても、無視して去っても、何もしなくても、話に乗っても。好きに生きるという点では妖精も精霊も変わらない。妖精ほどの気まぐれさ、心変わり、気移りがないというだけで精霊もまた自由に生きる存在、自然に生きる者。


「ま、つまりは私にはいてほしくないということよね。それならそれでさっさと言えばいいのよ」

「それを言って何をするかわからないのが怖いっていうのがあるからな」

「私はまだ寛容な方よ」

「俺を殺した件について」

「あら? 生きているじゃないの」

「たまたま生きているけど、仮にあれがメルやヴィラ、あるいはアルディーノだったら死んでる。実際俺も一時的には死んでいたわけだしな。寛容というならまず最初に殺す前に話し合いをするべきだっただろう」

「そうね。でも私に何かするつもりだったのでしょう? そんな物騒な相手に対して大人しく従うなんてつもりはないし。だいたい私が従う理由もないし。危険なら殺す。別に変な話じゃないでしょう」

「それはそうなんだけどな……」


 結局のところプルートが公也に即死攻撃を仕掛けてきたのは公也たちがプルートに対する敵対意思を見せていたから、その行動に危険を彼女が感じたからに他ならないだろう。事前に公也たちの存在を知り、その危険性を知った。ゆえに仕掛けていた死の一撃を公也に向けて振るい公也を即死させた。公也が仮に本当にただ話し合いをするだけのつもりで来たならば、まだそこまで攻撃的ではなかったかもしれない。いや、彼女が精霊であることを考えれば多少の傲慢さはあったかもしれないが。


「結局、プルートはエルフの村にはいられないということでいいんだな?」

「そうだね。大人しく出て行ってくれるのが穏便かな、村にとっては」

「ま、別にいいわよ。どうせ面白みもない生活だったし」


 精霊として生きる彼女はそれなりにいろいろな経験をしている。エルフの村で歓迎を受け楽しむ、そんな生活に対して彼女はあまり面白みを感じてはいないだろう。ただ、歓迎され恐れられる敬われる、上位者として見られること自体には彼女はちょっとした優越感を感じている。他生物を殺しその力を見せつけるのも自分には構わないとひれ伏すその姿、その姿勢が彼女にとっては楽しめるものだからこそだ。ちょっと性格が悪い。


「それじゃあ私はどこか適当なところにまた向かうってことでいいわね」

「流浪するってことか」

「いや、エルフの村から出ていくという点はエルフの村にはいいけど、僕らにとってはよくないよ」

「はあ?」

「君にどこかに行かれると困るんだ」

「…………どういう意味よ?」

「僕は君を調査したい。魔物……いや、精霊、めったに見ない自然の化身たる魔物。その肉体、生態、能力に関して詳しく調査したいんだ」

「………………ごめんなさい、何を言っているかわからないわ」


 言っている言葉の意味は分かる。要はアルディーノはプルートを調査したい、という意味の内容である。しかしプルートはその意味は分かってもその意図がわからない。いや、意図といっても単純に彼女を調べたい、精霊について調査したい、それだけの話になるのだが。やはりその理由が理解できないというか、わからないというか。


「アルディーノは魔物研究者で魔物の調査、研究を行っている。広義になるが精霊も魔物、それも普通はめったに見られない魔物だからその精霊の様々なことに関して調べたい、ということだな」

「………………意味が分からないわ。そんなことして何になるわけ?」

「別に何でもいいよ。僕としては魔物について知りたい、そのさまざまな要素を解き明かしたい、それだけだ」

「………………」

「知識に対する欲求、知りたいという欲求。珍しいことじゃないな」

「ええ、ええ、意味は分かる、意味は分かるわ……でもそれは私じゃなくても」

「ほかの精霊をを紹介してくれるのか?」

「そんなことしないわよ。だいたい同種って言っても、そもそも精霊ってそれぞれ好き勝手しているものだし。探すなら別に止めないわ。炎の精霊とか水の精霊とかわかりやすい精霊なら探せば見つかるんじゃない?」


 いくら同じ精霊といってもそれぞれの種で全然違う。魔物もそうだが同じくくりでも全然違うというのは珍しくない。精霊と妖精が全然違うのと同じ、精霊でもそれぞれの精霊で生態、生活場所は違うだろう。精霊としての在り様、形態は似通っているかもしれないが。


「いや、目の前にいる精霊を無視して別の精霊に目を向けるのは変じゃないか?」

「知らないわよ。言っておくけど、私はそんなことをさせるつもりはないから。する気なら当然抵抗するわよ?」

「…………死の精霊相手だとちょっとあまりうかつなことはできないなあ」


 誰だって自分のことを調べよう、調査しよう、研究しようとしてくるのは流石に遠慮するだろう。ただ、今回の件も含め彼女に関してはもう少しどうにかしてうまく取り扱いたいという考えになる。なぜならば彼女は死の精霊。その存在は下手な形で誰かに使われれば危険すぎる。いくら精霊が協力といえども、どうにかして利用される危険はありうるだろう。実際公也は彼女の攻撃に対し対抗できる、死を回避できる。そういった特殊能力持ちがいるかもしれないし、精霊といえども精神は普通の精神、その精神を操れる、浸食できる、洗脳できる、そんな存在がいればどうだろう。死という力は強力無比な故に、できれば誰の手にも渡したくない、封じたいという気持ちがある。

 また単純に調査という点で目の前にいる精霊が手っ取り早いというのもある。死の力というのも特殊能力としては希少、レアもの。できれば調査したい。それに関してはアルディーノも公也も意見としては一致している。問題はどうやって彼女を説得するか、という話になる。


「今回迷惑をかけたことに対する代価」

「私が望んでやらせたわけじゃないわ。エルフが勝手にやったことよ」

「そうだな。じゃあ……穏便に過ごせる場所、というのはどうだ?」

「別に私の力があれば関係ないし」

「一応言っておくけど、俺はお前を殺せる」

「………………私に殺された分際で」

「まあ、俺としても精霊という存在に対しての知識は欲しい。それに実際他者に迷惑をかけたのは事実だろう。ああ、なら俺の場合はこう考えればいいか。殺されたことに対する報復、復讐」

「殺された本人が言うことじゃないわよね……」


 公也としては彼女に対して最大最強の攻撃理由が存在する。公也は彼女に殺された。自分を殺した彼女相手に、同じだけの報復ができるというのであれば、公也は彼女を殺すだけの権利を持っていると考えることもできる。しかしそのつもりはない。それを言う気はないが、殺されたのだから殺してもいいと考えるが、殺さないかわりとしての代価の要求とかしようと思えばできるかもしれない。まあそれをプルートが受け入れるかどうかはまた別の話。そのあたりの判断はプルートに任せるしかないことである。




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