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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
二十二章 冥精
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「……キ、キミヤ君? 生きて……いるわけないよね、えっと、ならアンデッドかな? アンデッド、魔物? いや、なるにしても……なったとしてもアンデッドだろう、どうする? 魔法で倒すべきか? 死体がないならそれはそれで問題になるかもしれないし……」


 公也の死体がアンデッドになった場合、果たしてそれはまともなアンデッドとして機能するか。いや、そもそもアンデッド事態が異常な存在、問題な存在なわけなのだが。問題となるのは公也のアンデッドが理性も思考もないアンデッドとして動き出すか。アンデッドという時点で厄介なもの、意志があればまだ公也として応対できるため公也に現状を理解させ連れて帰ることもできなくはない。しかしもし、動き出した公也が暴れだすようなアンデッドの場合倒さなければいけない可能性も出てくる。


「落ち着け……死んではいない」

「いや、死んでただろう? それに死の精霊の力で攻撃されたのなら死なないわけがないし」

「まあ、普通はそうなんだろうけど……いや、俺も一応一時的に死んでいた、というべきなのか?」

「一時的に死んでいた? ってことはやっぱりアンデッド……」

「アンデッドじゃない。まあ、証明は難しいかもしれないが……」


 仮にアンデッドが生きていた時と同じ機能、力を持ち得ている場合、果たしてそれは生きているときの人間と区別がつくものだろうか。魔法の使うアンデッド、特殊能力の使うアンデッド、生きていた時と同じ行動をするアンデッド、生きているときと同じ反応をするアンデッド。そこまで行くと生きているか死んでいるか不明だ。一応生者であれば成長するなり生存活動を示していればわかるが、すぐにわかるものでもない。それに成長するアンデッド、排泄を行うアンデッド、食事を行うアンデッド、生殖を行うアンデッドとなった場合、アンデッドと生者を区別する手段は存在するだろうか。


「とりあえず、生きてはいる。そうだな、特殊能力による恩恵で……死ぬ危険を場合によっては回避できる、といった感じだ」

「特殊能力……まさかそんなものを持っているなんて」

「一応ロムニルやリーリェは俺が特殊能力を持っているのは知っている。わざわざ言うことでもないから言っていないだろうけど」


 ロムニルとリーリェが知っている公也の特殊能力と今公也が死を回避し生きているというのは結び付かないと思われるが、特殊能力との関係性や二人が特殊能力を知っている事実自体は事実である。二人が知っている事実に公也が今死を回避した事実が結び付かない、関係性を推定できないというだけで。一応同じ特殊能力による効果だが、結び付かないのは仕方のない点でもあるだろう。


「そ、そうなのかい……?」

「おい、そいつ……生きてるのか? 死んでたんじゃないのか?」

「あ、えっと、そうだね、魔法……ではないけど、ちょっと特殊な力を持っているらしくてそれでなんとかなったらしい」

「ふん、まあ死んでないならそれでいいんじゃないか? それよりもそいつのことよりも精霊のことをだな……」

「そうだね。そっちのほうが今は問題か……」


 公也が蘇ったことは悪いことではない。むしろエルフの側としてはありがたい、うれしい、問題を避けられることなのでかなりいい。しかし起きた出来事は変化していない。精霊がメルシーネやヴィローサと戦っていること。現時点で起きているその問題をどうにか解決しなければだめだ。公也よりもそっちをどうにかするか、のほうが優先される。しかしエルフたちだけではどうしようもない点でもある。そもそもメルシーネがまともに戦えていること、ヴィローサの力の影響が受けていること、それらが普通ではない。エルフも魔法で攻勢を仕掛ければある程度助け舟にはなるかもしれないが、その場合メルシーネに対しても配慮しなければいけないため大変である。


「それに関しては俺がどうにかするべきだろう」

「キミヤ君……だけど君さっき死んでたよね?」

「だけど今は生きている。死んでも死なないなら戦うにしても都合がいいだろう。戦っているのは俺が連れてきた二人でもあるし」

「いや、それは……」

「本来ならエルフ側の問題なのだが……」

「だけどエルフじゃどうしようもないからアルディーノは俺たちを連れてきた。まあアルディーノ個人の目的もあるかもだけど」

「まあ、そうなんだよね」


 エルフでは精霊に対処しきれない、倒すにしても相手に逆襲されて終わり。さらに言えばアルディーノにとっては精霊をどうにかしてとらえる手段を講じるのも目的にある。そういうところはエルフではどうしようもないところだ。まあ公也ならできるかと言われれば困るところだが、ある意味では特殊すぎる公也でできなければ他に誰かできる当てもないといった感じだ。いや、アルディーノの魔法使い関連の知り合いなら少々わからないところであるが。


「とりあえず、あの戦いをどうにかする……といっても、どうするかちょっと考えなければいけないけど」

「まあ、精霊相手だし。っていうかキミヤ君も迂闊なことをすれば死んじゃうだろう?」

「ああ。勝てるかどうかで言えば勝つこともできるだろうけど」


 精霊相手だろうとなんだろうと、公也であれば倒す、殺すだけなら容易、一切の問題もない。今回の問題は相手をおとなしくさせる、調査のためとらえるという点。一度殺されている公也だが別に殺さなくてもいいとは考えているものの、相手の力を考えれば容易にとらえられる相手でもない。迂闊な対応をすればその死の力によって殺される。それに関しては公也が実際にされてしまったことである。




「くぅ! 本当にうざったいわね!」

「おとなしく死んでくれるのです? いえ、死ななくてもそのまま気絶するなり倒れてくれればそれでいいのですけど」

「誰がそんなことになるものですか! さっさと死になさい!」

「っと! それは使われるのがわかるので避けるのはそれなりにできるのですよ!」

「でもいずれ当たるでしょう!」

「その前にそちらをどうにかできればいいのです!」


 メルシーネとプルートの戦いは攻撃自体はプルートの一方的な防御態勢となっている。しかしプルートは多少間を置けば一撃で相手を殺せる攻撃手段を持つ。それが時折襲い来るためメルシーネも攻撃し続けるだけではいられない。油断は一切できず、緊張感がある。どちらが先に消耗しきるかわからない。そんなところだ。


「メル! そいつ殺しなさいよ! 気絶とか、そんな状態になったら私が殺すし!」

「確かにそれはあるのですけど! 殺すことは本来の目的ではないのです!」

「キイ様を殺したやつを生かしておく理由なんてないでしょ! 殺す! 殺す! 殺せ! 殺せ!」

「うわっ…………怖いわー」


 死の力を持つ存在でも、今の変貌し殺意をむき出しにしているヴィローサは怖いらしい。


「たとえ何があっても、私が死なない限りは絶対に殺す! キイ様の仇をとるのよ! とらなきゃたとえ死んでも死にきれない、殺すまではどんな殺され方をしても死んでやるものですか!」

「そこまでしなくてもいいぞ、ヴィラ」

「でもキイ様! キイ様を…………ふえっ? キイ様……?」


 暴走しているところに声をかけてきた公也、死んだはずの公也に対しヴィローサは反応し……そのまま意識が固まる。まあ今まで死んだと思っていた相手が生きていた、となるとそうなってもおかしな話ではないだろう。


「ええ!? キイ様!? キイ様生きてたの!?」

「ああ、問題なく生きてるぞ」

「よかった! キイ様キイ様キイ様キイ様キイ様ー!!!」


 ヴィローサの劇的な反応、メルシーネはそれを聞きそちらのほうに意識をやっており、プルートは自分を襲う力が薄まりその要因であるヴィローサに何が起きたのか、とそちらに気を向けた。


「ヴィローサ、力を使うのをやめるのはやめてほしいのですけど」

「なっ……なっ!?」


 メルシーネは特に驚いておらず、プルートを相手にするのに必要なヴィローサの力がなくなり困っている感じ、しかしプルートは驚いて動きを止めている。まあ殺したはずの相手が生きている、となれば驚いて動きを止めるだろう。今回の場合本当に殺しているはずなのに動き出している、死んでいないのだから。驚きは一入の物である。




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