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「せっかく竜に乗れたのに……」
「ねえ、あれはいったいどうしたのかしら?」
「単純に竜に乗って空を飛んだのに籠の中だったから外を碌に見れず竜に乗れた感じが一切していない感じだからじゃないか?」
「あの籠、改善していただけませんか? 少し狭すぎます」
「確かに。ハルティーア様を守るには少々……」
「無茶を言わないでほしいのです。わたしが運ぶ以上わたしの大きさの関係もあって運べる大きさの限度があるのですよ?」
シェリーとレリトンが籠の大きさに文句を言う。メルシーネだけで運ぶ関係上あまり大きな籠を作りそこに人を入れて運ぶ、というわけにもいかない。メルシーネの力であれば多少大きくとも問題がないわけであるが、メルシーネが持って運ぶ関係上大きさの限度はある。籠に取っ手をつけるとか、紐とかを結ぶとか体に回すとかいろいろ手段はありそうなものだが現状普通に持って運ぶという関係上そこまで大きな籠にはできていない感じである。
改善自体はやろうと思えばできるだろうし魔法を使う、魔法陣を刻むなどで対策はあるが、別に必要とする機会が少ないこともあってやっていない。改善するにもなんだかんだで時間は関わるわけであるのだし。メルシーネに乗っていくということ自体、公也やヴィローサ以外はほとんどない。ウィタやフーマル辺りが時々そういう機会がないわけでもない、くらいか。アリルフィーラも機会があればあるかもしれないが今のところそういう機会もないし、あるにしても結局人数がそこまで必要ないことも多いだろう。いや、一国の皇女、元皇女で現王妃なわけだからそれ相応に連れて行く人数がいてしかるべきか。だとしてもそもそもメルシーネに乗って移動するかどうかはまた別かもしれない。いや。アリルフィーラの場合はアンデールに控えている従者の数が圧倒的に少ないのでそのあたりは大丈夫か。その点ではハルティーアが一番多いのがむしろ大変なところかもしれない。
「しかし、もう少しちゃんとした場所で休むことはできなかったのですか?」
「ハルティーア様は野宿の経験とかはほとんどないでしょう」
「……まあ、そうね。なんだかんだで王女だし。一応それなりに元気に活動してきたけど、こういった旅路の途中で野宿とかそういう機会はなかったわね」
ハルティーアは野宿経験が少なく、今回みたいにメルシーネから降りて暗い中野宿、というのはどことなくそわそわして慣れていない感じである。旅の途中で街や村に寄らずに休むということはハルティーアは少なかった。その点に関してはハルティーアは王女でありそういう機会が少ないのはむしろおかしくない。アリルフィーラは皇国内のあちこちを自主的に旅をしていたということもあってまた少し話が違う。ハルティーアの場合王女らしくないあれこれに手を出して、というのはあるが、それでもそれは王女が手を出す分野、やるべきところではない分野に手を出しているというだけであり、アリルフィーラのようなあちこちの慰労とか炊き出しみたいなものを行うとかそういうものとも違う。あくまで一般的な王女が手を出せる内向きの部分で色々やっていたという感じだ。
「えっと、大丈夫っすかね? 問題ないっすか?」
「そこまで気にしなくていいわよ、フーマル。まあ、それなりの態度は示してくれないと困るときもあるけど、ここにいるのは身内だけだしそこまで厳格にする必要もないし」
「そうっすか……」
ハルティーアはまだそれなりに来やすく接することができる……ということはない。フーマルにとってはまだアリルフィーラの方が気楽だろう。彼女に関しては皇女として知る前から関わりがあるから、というのがある。ハルティーアは最初から王女、そして王妃としての関わり方でどうにもフーマルも緊張する。まあそれでも本人の性格もあってそこまで付き合いにくいというわけでもない。少なくともペルシアよりははるかにましだ。
そしてこの場においてはフーマルは野宿の運営という点で役に立っているためまだ立場的にはやりやすいだろう。もっとも野宿に関して関わらないのは基本的に研究馬鹿なところのあるアルディーノとか、何に対しても特に想うところのないウィタとかである。ヴィローサもそうでヴィローサは公也と一緒で特にいつも通り。公也なんかはそれなりにやってはいるが、そもそも野宿自体そこまで準備の必要なものではない……公也たちには。
荷物に関しては公也が空間魔法で運んでいるし、環境的にも簡易な建物くらいは魔法で作ることができる。まあこの場においては男性も女性もいるわけであるし、ハルティーアの安全を図るつもりならちゃんとした環境がある方がいいわけで。食事に関しても狩りをして新鮮なものを、というのも別にいつも通りなので問題ないし、公也の運搬は食料も運搬しているのでその点でも特に問題はない。
「まあ私のことは気にしないで……キミヤ、今場所はどのくらいなの?」
「アルディーノ……は今あんな調子だから置いておくか。おおまかにどのあたりか事前に教えられたうえで、地図を確認して大まかな場所を把握して、今も魔法で移動経路の見える限りの地図は作成して、そのうえでの」
「ちょっと待って? 魔法で地図の作成?」
「ああ。この世界の形、それぞれの地域の地図情報がないと困るし」
「…………地図があればどこを攻めればいいとか、そういうのもわかるからかなり危ないのよ? いえ、まあ、アンデールの情報が外に漏れないのであれば別に。他国の情報ならアンデールには危険はないのだろうけど……いえ、そもそも魔法でそんなことができるわけ?」
「ああ。俺の魔法だからちょっとどころじゃなく独特なものだけど」
「………………今は無視しておくわ。それで、今はどれくらいなの?」
「もう既に半分は超えている。明日には村周辺にはつくな。ただ、村には連れていけないぞ?」
「そんなに……早いわね」
地図作成の話を聞いたハルティーアは戦略的観点から地図の有用性とかつい考えてしまうが、別にアンデールが他国に攻めるとかそういうこともないので利用価値としてはそこまででもないかな、と思い直す。もっともそれはそれでかなり重要な物な気もするが今回は話だけ聞いておいて後で追及しよう、と考え頭の隅に置く。それよりもエルフの村はどこか、あとどのくらい時間がかかるのか。そちらの方が重要だ。
とはいえ、空を通じての移動。メルシーネという移動手段を使っている都合上、とても早く着く。そもそもエルフの村自体はそこまで遠くでもない。アルディーノがキアラート周辺にいたことからもそうだが、基本的にはアンデールからもそこまで大きく離れてはいない。まあ、それでも空の旅でなければそこまで早く着くということもないが。
「村には精霊をどうにかしてから、よね?」
「ああ。安全にしてからだな」
「……行くのは公也だけ?」
「アルディーノ、メル、ヴィラ。ああ、でもメルシーネはいざというときのために置いていった方がいいのか」
「ダメなのですよ。ご主人様に何かあった時に動けるようについていくのです」
「……メルはキミヤの方を頼むわね。私たちは……何かあれば、自分たちで戻るべきかしら?」
「そのあたりはワイバーンに言っておくのです。わたしたちが戻らないか、あるいはわたしの指示が届いた場合、ハルティーアに従うように言っておくのです。アンデールに戻っておくのですよ。その時はリルフィも含め全員の事を頼むのです。そういうのを任せられるのはハルティーアくらいなのです」
「わかったわ…………」
「何もないのが一番なんだけどな」
いざというときのための対策、準備というのはいつでも必要なものである。公也、ヴィローサ、メルシーネ、アルディーノ以外は残る。ハルティーアを守るためだが戦力としても精霊相手にする場合無意味に中途半端な実力者を連れて行っても仕方がない。ハルティーア、シェリー、レリトン、フーマル、ロムニル、ウィタはこの場にワイバーンとともに残りハルティーアのお守りである。最悪何かあった時にすぐに戻れるように、という感じな理由も置いていく理由にはある。まあ移動手段がワイバーンなので少数しか戻れない。メルシーネの命令もどこまで通じるかわからないが、とりあえずはそういう感じで予定は決めておく感じになっている。本当に公也の言うとおり何もないのが一番なのだが……そうそう何もないでいられるとは思えないだろう。




