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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
二十二章 冥精
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10




「僕はこの城に残っていろいろこの城……城魔とか調べたかったんだけどね。雪奈君だっけ? 彼女も魔物だし、どうやらワイバーンもいるという話だ。しかも大人しいから調査もしやすいだろうし……妖精も住んでるんだって? いや、ヴィローサ君だけでなく、たくさんの妖精がさ。それにアンデッドも住み着いているらしいじゃないか。他にもなんか冬の魔物とかがいるとか。もうすごく興味があるんだけど残ってそっちの調査をしたらダメかな? いいよね? 別に僕がついていく必要性はないよね、場所は教えたわけだし」

「ダメに決まっている」

「ダメに決まってるでしょ」


 自分の村に帰りそこで起きている問題を解決するよりも自分の欲求、魔物研究者として数少ないとんでもなく珍しい魔物を研究できる機会と考えれば確かにアンデルク城に残りたいというのはあるかもしれないが、それを止められる。まあ止めるだろう。良いか悪いかではなく、アルディーノにはエルフとの話をするうえでの仲介役も頼みたいところである。少なくとも同じ村出身のエルフがいるかいないかで相手の反応はまた違ってくるだろうというのもあるのだから。

 それに魔物の研究、調査に関しても彼らをこの地の留め置いている公也のいないところで好き勝手されるのは望ましくない。もちろん魔物本人がアルディーノの調査を受け入れるかどうかはまた別の問題である。彼らがいいというのならそこまで大きな問題もないかもしれないが。


「だいたいメルちゃんだってエルフの村に行くわけだし、精霊の調査もしたいんじゃないの」

「むっ! た、確かにそうだけど……」

「調査ならば後ですることも可能だろう。少なくとも今すぐにここで残ってまでする必要はない。事が終わってからすればいい」

「……それもそうか」

「そもそもアルディーノがいなければ大まかに教えてもらったとはいえエルフの村に行くのも大変になる。それに相手はエルフだから同じエルフがいるかいないかでこっちの印象も違ってくるし、アルディーノを通して話をすればこちらも話しやすい。そういう点でもついてきてもらわなければ困る」

「まったく……仕方がないなあ」


 仕方がないのはどっちだ、と言いたくなるところだが相手が素直に受け入れてくれたのならばその方がいいだろう。そういうことで全員で準備しエルフの村に向かうことになる。







「しかしハティがついてくることになるとはな……」

「悪いかしら?」

「いや……安全面を考えると置いていきたいんだが」

「それならキミヤだけでちゃんと対人関係、対種族とか対国の関係とかをうまくやりとりできるようになるべきね。普段国のこともあまりしていないでしょう?」

「…………それを言われると痛いな」

「まあ、その分キミヤは別の仕事も多いから仕方ないんでしょうけど」


 公也も決して仕事をしたくないから仕事をしないわけではない。いや、本人としてはあまりやりたくないとは思っている。それでもやらなければいけないことはちゃんとするし、自分のできることは可能な限りやるようにはしている。ただ現状のアンデールにおいて公也でなければできないこと……厳密に言えば公也がやるのが手っ取り早いので公也に押し付けられている仕事というのが多い。人材的にもアンデールは動ける人間が不足している。アンデール内における諸々であればある程度はアンデールの住人だけでも十分なのだが、国の拡張とか道づくりとか大きいものはどうしても公也くらいに力が余っている存在がいないと無理だ。現状維持はできても拡張できるほどの人材はいない、足りていないということである。


「でも公也様? 無事に戻ってこれますよね? そこが私は一番の不安です」

「それは俺も保証できるものじゃないが……大丈夫、ちゃんと戻ってくる」


 アリルフィーラとしては公也自身の心配がある。今回の相手は精霊、それも死の力を操るだろうと思われる精霊。それを言い出したのは精霊の名前を聞いた公也自身であるが、そこにメルシーネもおそらくそうだろうと賛同している。つまり死の力を持つ、冥界の性質を持つ、そんな感じの精霊であるだろうという推測はほぼ確実なものだと思われるわけである。そんな相手にいくら強い公也だろうと死ぬ危険はあるかもしれない。

 公也自身は<暴食>の力による生命力の過剰貯蓄、死んでも肉体の補填による回復など、おそらく自分は死なないだろうという推定はしている。それでも絶対のもの、確実なものではないわけであるし、そんなことをアリルフィーラが知っているわけでもない。公也がいくら大丈夫だと思ってもアリルフィーラ含め公也の能力の詳しい内実を知らない存在にとっては不安があるのは仕方のないことだろう。


「…………無事ご帰還くださいね」

「ペルシアも心配してくれるんだな」

「…………もちろんです」


 少々ぶすっとした感じはあるが、ペルシアも一応公也の心配はしている様子である。彼女の場合は公也に思うところもあるがアリルフィーラと話して少しは仲良くなったりと関係改善はちょっとだけ進んでいる感じである……かもしれない。まあ彼女の場合公也がいなくなあった後の立場が複雑というか、彼女にとっては公也がいなくなる方が余計に面倒くさいことになるのでいなくならないでほしいというのもあるかもしれない。


「なんだかんだでペルシアも王妃だもの。夫である王の心配をするのは当然でしょ」

「ハルティーア? あなたに言われることではないのですが?」

「あらそう? ま、私はついていくからね」

「そのままあなたは戻ってこなくてもいいんじゃないですか?」

「そうすると面倒なことになるんじゃなくて? 大体今のこの国に私の力がないのはそれはそれで困るでしょう。貴女と違って私はそれなりに活躍しているし」

「余計なことをしているだけ、自分が出るところではない場所にしゃしゃり出ているだけでは?」

「そんなことはないわ。ちゃんと、問題なく、仕事はしているもの」

「王妃としての役割ではないでしょう、それは」

「あら、そっちはそっちで問題ないわ。貴女の方はどうなのよ?」

「私の方も問題はありません。王妃としてきちんと王を立てる、正妃であるアリルフィーラ様とも仲良くさせてもらっています」

「そ。頑張ったら?」

「同じ側妃であるあなたに言われることではありません」

「あら。同じと言ってもどちらかというと私の方が上でなくて?」

「同じ立場に上下も何もないでしょう。それとも自分の方が上だと言いたいのですか?」

「そういうわけじゃないわ。何もしていないよりも何かしているほうがいいんじゃないかと思うだけよ」

「邪魔せず大人しくしているほうが立場としては当たり前の行動ではありませんか? 王妃であることを忘れているんじゃありません?」


「…………あの二人、あれで大丈夫なのか?」

「問題ないと思いますよ? あれはあれでお互いの立場を踏まえたうえでの仲のいいやり取りだと思います」

「仲がいいとは到底思えないんだけどな……」

「ふふ、女性の友人関係は複雑なんですよ? 特に私たちの場合は立場的な問題や国の関係もありますし。お互い相手に思うところもあります。でも、公也様を通じてどうしても仲良くやらなければいけないところもありますし、国同士の関係の改善もあるようですから。ただ、やっぱり今までが今までらしいので」


 ハルティーアとペルシアの関係は結構複雑で独特らしい。まあお互い敵国だった者同士、関係改善も仲良くなろうにもいろいろ本人たちの事情や心象などもあって難しいところもあり仕方がないのかもしれない。しかし出発前だというのにお互い言い争いをしていていいものだろうか。準備とかもあるかもしれないのに。まあ騎士なり侍従なりが準備はしているだろうから大丈夫かもしれない。



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