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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
二章 魔法使い
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 冒険者ギルドで採取に関する事柄の詳しい内情、どうすればいいのかを冒険者たちに暴露したところで公也たちがすることが変わるわけではない。そもそも採取に関してどうすれば魔法使いが求める状態の素材が得られるかを分かったところでその素材を得ることができるかどうかはまた別の話。図書館で調べる手間もあるし、採取するにしても実際に採取してみなければ採取できるかどうかもわからない。また、その採取時間も普通の冒険者は活動しないような時間であれば無理にその時間に出向かなければいけないということにもなる。まあ、公也もその時間に出向くわけではないのでそのあたりはまた別問題だ。

 公也の場合普通の冒険者と違い魔法の存在もある。ヴィローサを利用し毒を使うという手法もある。流石に時間を巻き戻したりなどはできないが、最適な採取状況を疑似的に作り上げたり、また性質や性能をある程度固定することなども不可能ではない。まあ、色々と無茶な部分も多いのだが。ともかく、根本的な知識や技術などの点において公也は他の冒険者と大きく違うためそういうことができるわけである。そのため指名依頼もある程度分散されるようになったがやはり公也に集まるのは仕方のないことであった。

 そういうわけで別に無理に受ける必要のない指名依頼であるが、他にやることがないのであれば指名依頼を受ける点に問題はない。公也としても一応冒険者のランクは受ける依頼を増やす目的もあって上げたいところであるし、そのため指名依頼で高評価を受けすぐに上げられるのであれば都合がいい。まあ、その分依頼を受けざるを得ない状況など面倒は降りかかってくるわけであるが。


「師匠! 来るっすよ!」

「フーマルは素材になる草花を守れ!」

「了解っす」

「キイ様、私は?」

「他に近づいてくる奴らがいるからそっちを頼む。殺してもいいが足止め程度でもいい」

「わかったわ」


 そんな指名依頼の一つの最中であるが、公也たちは現在魔物との戦闘中である。別に依頼の最中に獣や魔物との遭遇がないというわけではないが、今の状況は比較的珍しい状態だろう。現在公也が受けている依頼、その依頼における採取を必要とする素材を出現した魔物が狙っている、そんな状態である。魔物とて元々生息しているわけだからそういった素材を狙っている、というのは少し奇妙に思える。まあ、素材の採取タイミングが最もいい状態を狙ったというのであればこのタイミングで襲ってくるのもおかしな話ではないかもしれないが、同時になぜこの日、彼らが採取をするときに限ってきたのか、という話でもある。月一などかなり限定される採取タイミングならともかく、一日の内のこの時間という感じのタイミングであればこの日でなくともいいはずだ。彼らの目的は人間ではなく、最適な状態の採取素材。それがなぜこれ以前の日の同じタイミングではなく、採取を行うこの日のタイミングなのか。

 まあ、そんなことを疑問に思うわけであるが、なぜこの日このタイミングで彼らが襲ってきたかというと、彼らがこの地に来て素材を発見したタイミングがこのタイミングだったから、というだけだ。放浪魔ではないが、魔物も独特の縄張りや行動スタイルを持つ。普段は人間が採取しに来る比較的浅めな場所ではなく、深い森の奥や山の奥などで活動しているがそちらで得られる素材が減ったり、あるいは逆に魔物側が増えたりすればそれらは人間たちがいる場所にも出てくる。今回公也たちが出会ったのはそういう魔物であったということだろう。


「風、土、火、水……水だな。流石に素材がある場所であまり無体なことはできないし」


 魔法を使い倒す、直接的な戦闘でもいいが手っ取り早く複数体を倒すのには魔法がいい。問題はここに素材があるため、そちらに被害がいかないようにしなければいけないこと。彼らは魔物を倒すことが今回の依頼の目的ではなく、素材の採取が目的である。素材を狙う魔物を倒したところで素材が魔物と一緒に殲滅されなくなってしまえば意味はない。

 ゆえに水の魔法を使う、ということだ。風は広範囲だし斬撃より、火は炎で燃やし尽くすことになり、土は生えている大地事素材に対し被害をもたらしかねない。水も押し流したり氷などだったら冷やして素材をダメにしかねないが、そこは魔法の使い方の見せどころだろう。まあ、それは別に見ずに限った話ではなく他の属性の魔法でも問題はないが、仮に周囲に広がったとしても被害が少ない、ということで水の魔法を選んだわけである。


「水よ魔の力を持って降りそそげ」


 まずは水を生み振らせる魔法。これ自体は大した力ではない。


「水よ触れし命、動体を包め」


 そして次はその水を動く生命に対して纏わせる。これまでが準備段階。


「包みし水よ包みし物とともに風の力を持って浮きあがれ!」


 最後に風の魔法と合わせ、水の魔法にて包み込んだ生命体……今回採取するつもりの素材を狙い、公也たちと取り合いになる結果襲ってきた魔物達を、水ごと風の魔法にて浮き上がらせる。風の魔法だけでも浮き上がらせることはできると思われるが、制御の観点で対象を包んだ水にすることで操作しやすくする、ということだ。まあ公也の豊富な魔力量であれば無理やりでも問題はないわけだが……そこは普段使わない水の魔法を使う、という意味合いもあるのだろう。もっとも実際に一番使わないのは恐らく土の魔法の方だが。火や水は一応日常的に使う機会は少なくないはずである。風は攻撃手段として普段から活用しているため、一番使われていないのは土の魔法だろう。まあ、魔法の出番など気にしても仕方ないのだが。

 浮き上がった魔物達は抵抗できずに空中に浮いたままだ。纏わりつく水を振り払うにも、魔物達の力が足りていない。


「……フーマル、首を落とすぞ」

「了解っす!」


 浮いてその状態で固定されてしまえばあとはその状態にある魔物を始末するだけ。素材に対して魔物の血がかかることで問題が起きるかも、というのは今回の素材ではないため血がついても問題はない。仮に血がついて問題があっても水で洗えば済む場合の方が多い。


「キイ様ー、そっちは終わったのー?」

「……ヴィラ、こっちは残った奴を始末すれば終わりだ。そっちは?」

「とりあえず麻痺させているわ。毒で殺してもよかったけど、それだと回収できないでしょう?」

「そうか。ならそっちにいるのは始末するだでいいな」


 今回の依頼は魔法使いからの指名依頼、素材の採取だが魔物の回収もできるのであればした方がいい。彼らもまた素材に使えるし、売ればそれなりのお金になる。まあ、退治することで依頼として評価を受けるというわけではないが、仮に今回と同じような依頼があった時この魔物が素材に手を出していると次の依頼を果たせなくなる可能性がある。そういう意味合いでも退治しておいた方が都合がいいわけである。


「………………」

「どうしたっすか?」

「いや、魔物がここまで来たことが気にかかっただけだ。餌が少なくなったか、数が増えたか……」


 公也が気にかかっているのは魔物が現れた理由。今まで現れたという話はなく、つまり今回初めて出てきたということ。それはつまり何かが起きている可能性があるということなのではないか。とはいえ、その理由を探るには魔物の生息域まで行かないといかず、そこまで無理をする必要性は今のところない。素材に被害が出ると困るというのはわからなくもないが、公也自身にはあまり関係のない話。依頼を果たせなくなり評価がもらえないのはそれはそれで困るが、その時はその時でまた別の依頼を受けるなり別の街に行くなりすればいい。オーリッタム近辺の情勢のことは公也自身にあまり関わりのないことなのだから。


※単に獲物が被っただけという話を難しく考えすぎなのでは? というわけではなく本来別の場所にいる魔物が出没してきたと言う話。

※魔法を使うよりもヴィローサを使った方が確実に被害なく倒せる気がする。

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