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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
一章 妖精憑き
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「…………っと、ようやく基本的な所かな?」


 公也はまだ街の方へと行っていない。この世界のある程度の常識や知識、何をしたらダメなのかなど基本的なことは最初にこの世界で食らった女性のおかげで知っている。同時にその時に得た魔法、それが彼にとってかなり興味を引く内容だったこともあり、彼はその内容の把握、技術の成長のために練習したりどのような性質があるのか、知識分野でも興味があり頑張っている。

 特に使用による技能面とそれに伴って得られる技術の知は彼にとってもかなり美味しい食である。満足、充実、魔法と呼ばれるような特異性の高い自分の世界では存在しない、特殊な技術は特に彼にとって価値のある物である。言うなればそれは彼自身が覚えた興味に由来するものだろう。実在しないとされた特殊な物ゆえに、それが実在する世界で自分自身が使えるようになり、女性を食らったからという理由もあるがそれを使えるだけの能力を持つようになり、そしてそれは全く自分自身の知り得ない知と技術であり、あらゆる方面への発展性がある。それを極めるというただ一つだけでも数年、数十年、数百年は充実した人生を送れるのではないかと思うくらいのものだ。

 今の彼には寿命は恐らく存在しない。彼は一般的な生物としての生き方ができる可能性は極めて低い状態にある。仮に普通の生物が死ぬような体が消滅するような攻撃を受けても、その攻撃後体を補填する今まで食した物による還元が行われる。そして彼自身がそういった攻撃を暴食にて食らうことができる。海だろうと、火山だろうと、周囲一帯を包み込むような消滅攻撃だろうと、彼の持つ暴食に食らえないものはない。まさに神の権能の一端であり、この世界における最大の異端であり、あらゆる存在にとっての脅威と言えるものである。

 それだけの物を持つが、結局のところ彼が行うのは自分の生を満たすことでしかない。充実、満足、それができれば彼にとってそれでいい。食は生きるために必要な分を満たすのみ……あとは興味を引いた食を満たすくらいだろう。それもまた知であるゆえに。だから彼はそれほど極端に自分の力、暴食を使い食らうつもりがない。極端なことを言えば世界そのもののほとんどを食らえるが、それでは結局将来的に生きる未来がなくなる。


「まだ初期のレベルか。初心者が使えるような魔法レベルだな」


 そんな彼についての話はさておき、今の彼は魔法を使いその技術を磨いている。街に行ったときに彼自身が使う能力、強さとして魔法は解りやすい。ある程度、せめて魔法使いとして中堅レベルの強さを得るまでは彼は鍛えるつもりである。暴食という力は強さとしては手っ取り早く強力でわかりやすいが、それを見せつけるのはあまりよろしくないと考えたためだ。まあ、魔法への興味もあるが。

 しかし、いくら技術としての知識や経験的な内容を知識として得られるとしても、今まで扱ったことのない力を簡単に扱えるほど魔法と呼ばれる力は簡単ではない。それこそ本当に生まれつきの魔法使いでも、その力の認識や研鑽に多大な時間を要するような、極めて特殊な技術である。暴食により食らいに食らった結果、山にいるあらゆる生命から得られた微々たるものの積もったそれなりに多大な総量増加と、最初に食らった女性の魔法使いの総量の大きさもあってそれなりの力押しができるが、力押しだけではどうしようもないところもある。最終的に彼なら暴食で総量を増加させて力押しでどうとでもなるが、今は流石に無理である。


「知識ではわかっても、やっぱり使うのはなかなか難しいな……」


 難しい、と言いながらもその表情は楽しそうだ。それは彼が新しい経験、困難を経験しているからだろう。いつまでもそれではあれだが、それでも最初の内はその経験すらも彼にとっては糧である。一度得て、二度得て、三度得て、それくらいになったら流石にそれ以上同じ経験はいらないが、いろいろな形で得られる経験もやはり彼にとっては充実の一つである。


「………………」


 ぼっ、と音に空中に炎が発火し浮かぶ。物理的には有り得ないそれこそ魔法の力によるものである。


「…………」


 その炎を見て、公也はそれが現実ではありえない光景だと思う。確かにそれは魔法なのだろう。だが、その炎を見て思うのは魔法とは何か、だ。一応彼が食らった女性からそれらの知識に関しては得ている。だが、それで言われている内容は多岐にわたり、そのどれが正答なのかは不明である。そもそも魔法使いでもそういった叡智の追及を行うものは少ない。魔法は技術であり、学問としてはそれほど発達していない。もちろん学問として学び取り扱う者もいるが、どちらかというとそういう者は少数派だ。技術としての追求の方がより優先される傾向にある。

 そのため、多くの魔法使いはその技術がどういうものに由来し、どういう影響をもたらし、どういう形で扱われているのかを知らない。先人の知恵、技として極めた技術としての魔法、そういった物ばかりで学問的に公式を作りそこから魔法を発展させるようなことはその能力のある一部の魔法使いしかできず、そしてその数が少ないゆえにあまり発展していない。

 あるいは隠しているのかもしれないが、そこは彼の中にある知識には知り得ない情報である。彼が食らった女性は魔法使いとしてはそれなりに頭がよく、いろいろと手を出していたようであるがそういった深い所に入れるような立場にはなかった。


「…………試すか」


 魔法に関して、いろいろと彼は思い、一つ試してみることにした。彼は自分が生み出した魔法に向けて暴食の力を使う。暴食はありとあらゆるものを食らうことができる。物質的な物、生命的な物、現象的な物、そういった様々な物を食べることができ、そして取り込むことができる。当然彼の生み出した魔法に対してもその対象は及ぶ。

 ここで重要なのは、魔法を食らうことで何を得ることができるか、だ。


「…………なかなか、面白い話だな」


 魔法を食らうことで得られるのは、魔法そのものの情報だ。魔法を構成する要素要因どういう変換が行われているのか、どういう作用が行われいるのか、なぜそこに存在するのか。魔法そのものの情報、魔法そのもの知識、魔法そのもの構成。すなわち、魔法とは何か。


「……あの女性はかなり有能だったらしいな。食べてしまったのは少々もったいなかったかな? でも、そうしないと今こうやって知識もないし魔法を使えてもないし……ある意味一番いい相手、とも言えるのか? 他にいい素材がいたらまだ判断のしようがあるんだけど、ここに誰も来ていないしなあ……っていうかなんであの人はいたんだろう? まあ、今更気にしても仕方がないか」


 どう考えたところで、食した存在が元に戻ることはない。一度食されたものは消化し取り込まれる。元の原型は存在せず、元の形質は存在せず、元の意思は存在せず、元の在り方は存在せず。返ってくることはない。帰ってくることはない。還ってくることはない。永遠に彼に取り込まれたままとなる。


「さて、魔法……もう少し試してみようか」


 魔法に関して、魔法自体を食らい得た情報は、彼の中にあった女性魔法使いの知識とある部分では一致していた。それ以外の情報もあったが、彼女自身様々なことからその解答に到達していたゆえの知識、ということになる。だからこそ、先ほど彼は彼女のことを有能だと言い、食べたという事実をもったいなく思ったのである。


 この世界における魔法は世界の改変、あるいは法則の改変に位置するものであり、望む現象を引き起こすのに魔力を使い起こす力である。


※主人公を殺すには主人公の能力を封じる大前提がいる。そうでなければあらゆるものを食らう暴食によって対応される。あるいは意思そのもの、魂や存在などの物質寄りでない部分を攻撃するのも一つの手。補填が効くのは基本的にその肉体に対してである。

※魔法は魔力さえあれば割と何でもできるチート技能。少なくともこの世界では。ただし何でもできるからと言って必要な燃料の量の問題もある。そういう点では主人公は総量の問題が解決している比較的利用しやすい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公の行動理念や思考回路が盤石なのがいい。 [気になる点] まるで問題提起と解法をつらつらと書き連ねた教科書じみた哲学書の雰囲気がある。 事実を説明してまた確認する。そこから導かれる意味…
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