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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
二章 魔法使い
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14


「よろしく頼む」

「ああ…………」


 護衛として冒険者ギルドから商隊に加わるパーティーは公也のパーティーも含め三パーティー、総数では十二人。五人、四人、三人である。なお公也たちの場合ヴィローサもパーティーに含めてだ。つまり実質的に公也のパーティーは二人組であるともいえる。まあ、冒険者の護衛は護衛としては数合わせに近く、護衛では足りない守り切れない範囲のカバーとしての役目が強い。


「護衛依頼の経験はあるのか?」

「いや、ない。これが初めてだ」

「そうか。ならできるだけ此方の指示に従ってほしい。いや、俺たちよりも商人たちの護衛の指示の方が優先されるがな。経験が違う。下手な行動をしてミスをするよりはいいだろう」

「わかってる。そのあたりは頼りにさせてもらう」


 公也も護衛という仕事の面倒さ、難しさは理解している。なので頼れる部分は頼るつもりである。


「しかし二人か。夜の見張りとかは大丈夫か?」

「恐らくはな」

「護衛は馬車についていく形だ。体力的には?」

「俺は問題ないな……仲間の方はわからないが、まあダメならどうにかする」

「いや、どうにかってな……」

「最悪あいつを置いていってもいい」

「……それはそれでどうなんだ」


 厳しい物言いであるが、公也がフーマルを見捨てる可能性は低い。そもそも既に依頼を受け参加することが決まっている状態で公也たちが参加しないという選択肢はない。ここで話されている内容はどちらかというと公也たちの能力の確認に近い。

 護衛に関しては、冒険者たちも商人の護衛も基本的には商隊の馬車についていく形となる。こういった護衛のやり方はその時々、商人や馬車の状況など様々な形で変わり、今回は外に出て守る形になる。とうぜん馬車での移動にかかる時間は人の足に合わせることとなるため通常よりは遅くなるだろう。もっとも人間が歩く速度で、というわけではないので人間側は少し急ぎ足になると思われるが。もちろん護衛は外だが商人は中。御者をしている場合もある。

 これに関しては急いで移動するよりも安全を重視した結果、ということだろう。盗賊がいるのか、あるいは魔物の危険があるのか、少なくとも何らかの危険があるため商人たちはそのようにしているということだろう。急ぐようであれば乗せていく。まあ、積み荷の状況次第ともいえるかもしれない。中に隠したいものがあれば乗せないだろうし、大量に物を載せていれば乗せられないだろう。そういった事情に関して護衛として雇われている冒険者は聞かないのが基本。相手の心証的にも、下手なことに首を突っ込んでやらかさないためにも。


「まあ大丈夫ならいい」

「……そういえば俺のパーティーにはこんなものがいるんだが」


 そうして公也と護衛の冒険者の中でリーダー的な役割をやれる経験ある冒険者との話し合いが進んだ。




 そして護衛として商人たちについていき移動する。


「馬車には乗れないっすね……」

「まあ、あちらの都合だから仕方がないだろう」

「フーマル、ちゃんとついてくるのよ?」

「くう……ヴィローサさん空を飛べていいっすねえ」

「空を飛ぶのは飛ぶので結構体力がいるのだけど? 摩訶不思議な力で浮いているってわけでもないのよ? 半分くらいはそうだったりするけど」


 ヴィローサは空を飛んでいるので体力的な疲れはない……ということもない。飛行自体はヴィローサの妖精としての在り方、性質が大きい部分もあるが、やはり飛行するうえでヴィローサ自身の体力的な消費もある。無意味に浮いているわけではない。たまに公也に寄り添って休んでいることもある。まあ、そこは公也に寄り添える部分が彼女の中では大きいので疲れたふりをして休むということもあるが。


「しっかし、フズはいいっすねえ……馬車の上でのんびりできるっすから」


 そんな彼らの仲間でもあるフズは馬車の上にいる。理由としては単純明快でフズが警戒烏という獣であり、その特殊能力が極めて有用的であるため。そしてそれを理由に公也が見張り代わりの警戒役として使うことを提案したからだ。公也たちにとってもフズを連れるのは負担が大きい。飛ばせ続けてもいいのだが、ずっと飛んでいると体力が切れてすぐに落ちる。移動するだけならともかく、移動に伴ってずっと飛ぶというのは無理だ。そして公也たちがフズを運ぶのも手間である。ならば馬車の上に乗せてもらい、さらに警戒をやってもらえば一石二鳥と考えるのはおかしな話ではない。


「あいつには警戒音で危険を知らせてもらう。その仕事の駄賃みたいなものだ」

「……できるっすか? この商隊の危険を知らせることが」

「できる。フーマルやヴィローサが対象に含まれていた時のように、その対象範囲を広げているだけだろう。そもそもあいつは森にとっての危険を知らせる役割を持つ存在だ。森が住処であり、森の生物が仲間である状況ゆえにそれらすべてにとっての危険を知らせることができる。今回その森を商隊全体にしただけの話だ」

「……?」

「まあ、よくわからないなら別に深く考える必要はない。あいつはそういうこともできるってだけだ」


 何もない時は公也だけだが、ヴィローサやフーマルがパーティーとして行動するようになり二人も警戒音を鳴くうえでの対象に含まれている。そして今回は商隊をその中に含めており、それにより商隊全体への危険、敵意を感知し鳴くことができるようになったという話である。まあこの仕事が終わるまでの話になるのだが。こういった能力があるので警戒烏は多くの人間が欲しがる獣なのだが、なかなかそれを捕まえて飼いならすのが難しいためそこまで実用的な使い方はできていない。烏ゆえにか相応に頭がいいようである。公也が手に入れたのは救出機会の偶然があったからだ。


「とりあえずフーマルはなんとかついてこれるようにな」

「……がんばるっす」


 公也のパーティーにおいて、ヴィローサは飛行手段があるゆえに体力的には比較的長持ちするだろう。公也を止まり木にする場合もあるし。公也はその持ち前の体力はとても高い。山一つを含めかなりの生命を食らった結果その体力は極めて高い。それゆえに一日中歩いた所で体力的な問題はない。しかしそういった二人に対しフーマルは極めて一般人としての性質の強い人物である。まあ、まだ獣人であるためそこまで心配する必要はないかもしれない。

 と、そんな感じに護衛依頼が開始される。護衛と言ってもそこまで極端に何かが襲ってくることはない。魔物や獣の類はかなりの数の人間がいる馬車を襲うことはそこまでない。どちらかというとそういった危険は数の多い商人の積み荷を狙うような盗賊たちの方が高いだろう。しかし、そういった事例の中で最も危険なのは、たくさんの人間がいて襲う危険の方が高いだろうと推測される馬車を襲う魔物の方である。例えばそれは放浪魔のような、強力な魔物であるのだから。

 まあ、そういった存在が襲ってくるとは限らない。公也たちはあくまで馬車についていき襲ってくる危険に対処するのが仕事である。その危険な何かが襲ってくることはとりあえず今のところはなかった。


※妖精の飛行は羽ばたいて飛んでいるわけではない。そもそも生物的にヴィローサくらいの重量を浮かせようとしたら必要な羽ばたき数がやばいと思われる。基本的には妖精の種族特性。

※珍しいフズの出番。むしろこういう場面でこそ活躍するべき場面。

※フズの能力範囲は自分の属するコミュニティ全域。厳密にどの範囲までかと言われると難しい。

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