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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
二章 魔法使い
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10


 翌日。公也たちは冒険者ギルドに来て依頼を受ける。前日に話した通り、受けた依頼は近隣の森や野原などの場所での採取。採取物の内容は薬草や毒草である。


「こういう面白みのない依頼よりも、討伐とかそういうのをやりたいものっすねえ……」

「キイ様に文句があるのなら別に一人で仕事を受けてもいいのよ? 私としてはそのほうが嬉しいけど?」

「いや、そういうわけじゃないっすからね? でも、師匠もなんでこんな依頼を受けるんすか? 薬草の採取とかそれほど大きな意義のある仕事でもないと思うっすけど……」

「そんなことはないだろ。冒険者が買う治療のための傷薬、多くの飲み薬とかもこういった依頼で集められる薬草を使うものだ。それに依頼として頼まれている以上意味がないわけでもないしな」

「それもそうかもしれないっすけど、やっぱり討伐とかみんな困っていることの解決の方がいいんじゃないっすか?」

「こういうことも困りごとだ」


 冒険者たちの受ける依頼、その内容においてやはり多くの冒険者が受ける依頼は討伐系の仕事だ。もっとも討伐系の仕事も過剰にやりすぎるのはよくないわけであるし、そう多いわけでもない。とはいえ、魔物は場合によっては過剰に増殖、繁殖することもあるのでその討伐の依頼は比較的出されることがある。どこでもゴブリンの討伐は依頼として出されているわけであるし。

 やはり依頼内容としてはっきりとしていて、また冒険者の成功譚、多くの英雄譚みたいな華々しい活躍としてそういった討伐仕事が冒険者たちにとっては目に付きやすい大きな成果なのだろう。また、相応に金額がいいというのもある。採取の依頼なども決して悪いわけではないが、それでもやはりそういった依頼に比べると比較的安い報酬に見える。

 だが貢献という点においてはどちらも依頼を受けて仕事を果たしたという点では変わらない。時、場所、場合、現在の状況など様々な点でその内容における貢献度合いは変わってくるだろう。特に街の人間からの依頼の場合は急ぎの依頼であることもある。魔物の討伐など、別にすぐにやる必然性のない依頼とかであればそこまで受ける必要性はなかったりするが、急ぎの依頼ならば次の日には依頼がかかっていない可能性もあるし、その仕事を冒険者が受けなかったことで冒険者ギルドには頼まなくなるかもしれないなどの事情を考えるとそういった依頼の方をやってもらうほうが冒険者ギルド側としてはありがたい。

 まあ、そういったことは結局のところ冒険者ギルドやそのギルドのある街側の事情であり、依頼を受ける冒険者としてはやはり自分たちにとっても分かりやすくやりやすい依頼の方がいいのだろう。採取の依頼は必要な情報、手間、知識に能力といろいろと必要な事項も多く、知識のない冒険者ではできないことも多い。薬草の採取と言っても花がいいのか根がいいのか葉がいいのか、成長度合いで必要な物が変わったりまだ成長していないものは残すなどの配慮なども必要になってくる。そういった点で変に指摘されるのも嫌だと受けない冒険者は決して少なくない。時々依頼が楽だと考え適当に受ける冒険者もいるが、目的の薬草とは別の薬草を持ってきてお叱りを受ける、ということもあるようだ。


「これか」

「……見てもよくわからないっす」

「私も。毒草ならすぐにわかるんだけど」

「まあ、知識がないとこういうのはできないからな……ヴィラには毒草を探すのを手伝って貰うよ」

「任されるわね!」


 そういった事柄に関しては公也は知識がある人間になる。今まで数多くの盗賊、チンピラなどを食らい、また山を食らう際に植物系の情報も得て薬効成分の情報を得たり、一番最初に食らった魔法使いの女性から様々な情報や知識を得たりと暴食による知の恩恵は大きい。まあ、そういったものの中で一番知識的に恩恵が大きいのはやはり最初に食らった魔法使いの女性のものだろう。彼女は魔法使いという存在であり、そのためか魔法に関連する事柄以外にも薬草や毒草に関する知識もある。魔法使いは場合によっては薬を作るようなこともあるらしい。魔法使いというか、魔女というか。

 薬草に関しては公也しか頼りにならないが、毒草に関してはヴィローサも頼りになることだろう。ヴィローサはその能力を発揮して毒を発生させることができるのだが、それとは別に毒の感知、把握などもできる。毒草は毒の成分を有しているため、ヴィローサはその毒を把握できる。まあ、毒と言っても何がどうして毒なのか、という問題もあるが。場合によっては薬も過ぎれば毒である、みたいな話もある。


「ねえ、キイ様」

「なんだ?」

「毒を草花に発生させてそれを持っていくのではだめなの?」

「いや、ダメだろ……」


 確かにそれは毒草かもしれないが、求められる毒草とは違うだろう。毒で侵された物がそのまま毒草と同じ使い方ができるとは思えない。それに場合によってはその草に宿る成分などが毒とどのような反応を起こすかもわからない。場合によっては毒が想定されない効果を起こしかねないだろう。そもそもその発生させた毒素がどの程度の間維持されるかもわからないのでやはり扱いづらいことには間違いない。そもそもどのような毒を求めているかにもよる。ヴィローサであればどのような毒を発生させることができてもおかしくないが、欲しい毒でなければ意味はない。


「そう……ならやっぱり探すしかないかなー」

「っていうか、なんで毒草が欲しいっすか? 誰か毒殺でもするつもりなんすかね?」

「毒も煎じれば薬になる。弱い毒を利用して毒に対処する薬を作るって言うのはよくある話だ。それに毒に効くかどうか確認するためにもやはり毒が必要になる。そういう意味で求める場合もあるな」


 毒草の類も毒として用いるわけではなく、基本的には薬として使うために用いるのが基本である。そのため薬草と毒草の採集、収集に関しては同じ依頼主であったり同系統の依頼としてまとめられていることも多い。


「まあ、本当に毒として使うために毒草を集めている……ということもあるかもな」

「ええっ!?」

「そのあたりは依頼の内容や依頼主から類推するしかないな。薬屋が集める分にはいいだろうけど、毒草のみそれも毒素が強いとか毒としてバレにくい性質があるとかそういう毒草を集める場合は要注意……とまではいかないと思うが、念のためを考慮しておいた方がいいかもな。まあ、俺たちは冒険者だからそこまで気にしても仕方ないと思うが」

「……そうっすね。俺たちはそういうのわからないっすからね」


 依頼内容にどのような危険があるかに関しては冒険者側が考えることではなく冒険者ギルドが考えることだろう。そのことに関して冒険者に注意を促す意味ははっきり言ってない。冒険者はただ依頼を受けその依頼内容を遂行するだけだ。その結果どのようなことになろうとも、悪いのは冒険者ではなく依頼を出した側だろう。まあ、冒険者にその依頼を受けたことの責任がないとは言わないし、場合によっては冒険者側の依頼内容にかかわる事柄に対して過剰な行動をとったことによる結果ということもある。まあ、依頼を受ける際にはその内容を吟味してその依頼を成した後のことも少しは考えたほうがいい、という話である。


「あれ? それは採らないっすか?」

「採りすぎはよくない。ある程度ばらけてとったほうが後々のためにいい。群生地なら少しくらいまとめてとっても大丈夫だと思うが」


 生息分布は広い方がいい。下手に取りすぎると回復するまで時間がかかるか、あるいは完全に根絶してしまう可能性がある。取る必要のない若芽の場合もあるし、必要な分を必要なだけ取るのがいいだろう。と、そんな感じに公也は薬草を必要な分集めきった。


「よし。それじゃあヴィラ、毒の探知を頼む」

「ええ、わかったわ!」


 薬草に関しては頼れるのが知識がある公也だけだったが、毒草に関しては毒に関しての力を持つヴィローサがいたため極めて早く、的確に楽に集めることができた。途中少々のゴブリン退治を行いつつ、また出会った獣を倒し、公也たちは街に帰還。そしてその日受けた依頼を順当に終えその報告をした。


※魔法使いは魔法を使う以外に魔法の関わる道具を作ることもある。魔法薬とか魔道具とか。ただしそれは職業が魔法使いの人で魔法を使えると言う意味での魔法使いではない。魔法を使えるような冒険者は基本的に後者の意味合いで使われ、国において魔法使いとして認定されているのは前者である。

※本気でやばい依頼は恐らく冒険者ギルドが依頼を受け付けない、という形で弾いているものと思われる。逆に言えば直接冒険者に依頼を持ってくるタイプの依頼はやばいかもしれない。

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