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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
二章 魔法使い
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9


「はー……ようやく街についたっすね。とりあえず宿をとるっすよ……」

「そうだな」

「私はキイ様と同じ部屋、フズとフーマルは別の部屋よね?」

「……いつの間にか俺がフズと一緒の部屋になってるっすけど、いいんすかそれで!?」


 もともとフズは公也が捕まえてペット……と言えばいいのかは不明だがそんな扱いになっている立場である。そもそも公也は何も言っておらず、ヴィローサが勝手に言っていることだ。


「……フズが俺の部屋だとヴィラがな。だからフーマル、預かってもらえるか?」

「あー……そうっすね。確かにヴィローサさんと一緒だとちょっと扱いが厳しいっすかね。いや、今までずっと一緒だったからそこまで気にしなくてもいいかもしれないと思うっすけど……」

「まあ、そうだが。少しは羽を伸ばし自由に出来るほうがいいだろう?」

「確かにそうかもしれないっすけどねー……ま、そういうことならいいっすよ」

「カア!」

「…………食料とか、鳴き声とか、糞の処理とか、大丈夫っすよね?」

「フズは頭がいいからほとんど面倒はかからない。ちゃんと過ごす場所に準備さえしておけばな。その道具はあるから問題ない」


 そういうことでフズはフーマル預かりとなった。まあ、フズに関してはそちらの方が伸び伸びと過ごせることだろう……確実に出番は減るが。まあ、現状ヴィローサのせいで同じ部屋でも立場がないのでフーマルと一緒に過ごすほうがいいかもしれない。狭い部屋、自由に過ごせる広い空間がない限りはフズは活動しづらいことだろう。

 と、そんな宿に関する話があり、宿をとる。とはいえ、宿をとってすぐに休む眠るというわけではなく、荷物を置いて冒険者ギルドへと向かう。彼らは冒険者であり、仕事は冒険者ギルドで受けないといけない。宿をとるにもお金はかかる。放浪魔を倒したことで得られた金銭は結構な物であるが、やはりお金を稼ぐ機会に稼いでおくのが一番である。そもそも公也の場合金銭の問題よりも仕事の経験と知識の方が重要だ。そのあたりはむしろフーマルの方が一般的な冒険者っぽい部分はあるかもしれない。


「………………」

「……うう、視線が来るっすね。やっぱりこれはヴィローサさんがいるからっすかね?」

「恐らくはな」

「こんなの気にしてどうするの? もっと堂々としてなさいな」


 ヴィローサは妖精である。妖精を伴うような冒険者は存在せず、どうしても妖精が一緒というだけで公也とフーマルは目立つ。そのため冒険者ギルドに入った途端、二人に対し……厳密にはヴィローサに対してであるが、その視線がヴィローサを連れている二人の方に移り二人の方に視線が行くわけである。いったい何者なのか、実力はどうなのか、何故妖精を連れているのか。色々と疑問に思うことだろう。もっとも、無駄に公也たちに関わろうとする冒険者はそう多くないだろう。公也たちの強さを知らずともそもそも冒険者が他の冒険者に無意味にかかわることは少ない。まあ、妖精という存在の価値に目が眩んだ馬鹿な冒険者はともかく。

 公也もヴィローサも視線は気にせず、フーマルは少し気にしながらも公也について仕事の依頼を探す。


「ロップヘブンとあまり変わらない感じか」

「そりゃどこの街でもそこまで大きく仕事は変わらないっすよ。街としても此方の方がロップヘブンより大きめっすけど、目立つ何かがあるわけでもない感じっすし……」

「魔物や獣の分布は違うだろう」

「魔物は確かに違いはあるかもっすね。でも、獣はどこでもそこまで大きな差はないっすよ。外国なら話は違うかもしれないっすけど……」


 そもそもこの世界において獣の分類がそこまで細かくされている物とは思えない。多少特徴の違いがある程度では種が違う、という扱いは恐らくされないと思われる。それこそ目ではっきりとわかるほどの違い、毛皮の色が違うなどの特徴の違いがなければ種が違うとはされないだろう。ゆえに大雑把な分類であるためあまり近い地域での差はそれほどないとされることが多い。

 逆に魔物はそういった一般的な分類が適応されない生き物であるため、同じ国内でも、同じ地域ですらいきなり分布が違うということがある。そもそも魔物の場合縄張りが広かったり他の生物の縄張りに入り込んでいたりすることもあり、明確な分布がわかりづらい。そのため実に扱いづらい生き物だったりする。まあ、魔物はそういうものだと思われている。


「んー……増えた魔物の討伐でも受けるっすか?」

「いや、先にこの辺りのことを知ってからの方がいいだろう。探索系の依頼……採集などの依頼の方がいいな」

「それもそうっすね。どこにどんな獣がいるか、魔物がどこにいるかわからないと狩れないっすねえ」


 そもそも、指定されている魔物がどんな魔物かも知らなければ戦う際の危険もあるし、そもそも何を狩ればいいかもわからない。そういう意味ではいろいろと探索をして情報を得てからわかっている内容の仕事を受けていくべきである。それに何も危険な戦闘系の依頼ばかりではなく、街中にある依頼を受けてもいいわけである。彼らがずっとこの街にいるつもりはないだろうと思われるため、街の住人と仲良くなるような街中の依頼ばかり受けるのもどうかと思うが、冒険者ギルドにわざわざ依頼をしているのだから相応に助けは必要なのだろう。そういう依頼を受ける方が貢献としては大きいのかもしれない。まあ、何を受けるのも構わない話であるのだが。


「…………すぐにできそうな依頼はないな。時間も時間だ、今は依頼を受けるのはやめておくか」

「せっかく冒険者ギルドに来たのに依頼を受けないっすか……」

「金には困ってない。仕事も今からだと時間がかかるものをやると翌日になったりするだろう。無理に仕事を頑張る必要性はない」

「そうっすか……」

「なに? 文句あるの?」

「いや、ないっす……ないっすから……」


 結局その日は冒険者ギルドに来ただけで依頼を受けることはなかった。まあ、そういう日もあるだろう。公也たちにしてみれば無駄に視線を集めるだけに終わった、妙に注目を浴びることになっただけの行動であった。


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