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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
二章 魔法使い
49/1638

7


 フズの鳴き声を合図にしたかは不明だが、フズが警戒の鳴き声を上げると同時に彼らは行動を開始する。


「よう。お前ら、俺たちの縄張りを通る気か?」

「へへっ、ここを通る気なら通行料支払ってもらわねえとな……!」


 彼らは公也たちの前に姿を現した。道の前後、公也たちが進むのも戻るのも塞ぐように彼らは森の中から出てきた。一応気配を探せば森の中にも数人残っている様子ではあるが、盗賊たちのほとんどは彼らの前に姿を見せている。


「………………一体何を考えているんだ」


 そんな盗賊たちの行動を理解できず頭が痛いと手を当てる公也。見つかっているか見つかっていないかに関わらず、不意打ちで公也たちを襲うほうが戦闘になった際の危険も少なく比較的楽に戦いが推移するはずである。それこそ一撃で頭部を弓矢で射貫ければ、あるいは数発でも構わないが腕や腹、背中などに矢を撃ちこむことができればそれなりに大きなダメージとなる。わざわざ公也たちの前に姿を見せて不意打ちの機会を無くす必要性はない。

 見つかっていることがばれているにしても、戦いやすい道の方に出てくる必要性はない、あるいは森の中にいる盗賊の仲間たちと連携をとるつもりなのかもしれないが……まあ、そうだとしてもやはりわざわざ出てくる必要性はないのではないかと思うところである。


「何も考えてないんじゃないっすか……?」

「そうかもな……」

「おい! 何呑気に話してやがんだ!」

「お!? そのちっこいの、女か!?」

「ほう、妖精? 妖精か! 金になるぜ!」

「いや、その前に味見を……」

「あの小さいのに入るわけねえだろ! てめえの棒きれのようなもんなら入るかもしれないがな!」


 公也の関与しないところで盛り上がる盗賊たち。そもそも公也たちのことを把握すらしていない様子で見えているヴィローサに関して出てきて相対してから気付いたようだ。一体何のために出てきたのか、色々な意味で疑問が大きい。


「ねえ、キイ様。あれ、殺していいわよね?」

「……フーマル。確か盗賊は全滅でいいんだったか?」

「そうっすね。基本的に殲滅、生き残りを連れて帰る必要はなし、っす。まあ、盗賊である証明ができない時が多いって言うのもあるっすけど……」


 盗賊は原則全滅が基本である。盗賊という存在はその証明が出来ないことが多い。よほど被害を出して有名になった盗賊ならば賞金首としてその似顔絵みたいなものを作り首で見分する、みたいなことはあるかもしれない。しかし、その辺にいる村人、冒険者などが盗賊となった場合、まずそのことを証明できるものがどれほどいるか、という問題になる。仮にだが、公也がフーマルを盗賊として活動していた、と言って突きだした場合誰が盗賊であることを証明できるか、誰が盗賊でないことを証明できるか、ということになる。結論を言えば誰も証明できない。つまりこの場合フーマルが盗賊になったかどうかの判断ができず、盗賊として捕まえておくことはできない。かといって逃がすのも本当に盗賊であった場合面倒になる。そういうこともあって、盗賊は捕まえて連れてくる必要はなく、原則全滅という形になっている。もちろん証明ができる場合、例えば盗賊に捕まった商人や女性など、そういった生き残りによる証明ができればある程度は捕まえて連れていくのもありだ。この場合の問題はそういった捕まった人間とされる者と結託して嘘をついている場合もあることだが、そこまで細かいことを言い出すともう何を信じればいいのか、ということになってくるのでそこまで細かくは気にしないことにしている。まあ、やはり原則全滅、殺して終わらせてしまうのが一番面倒がない、ということになる。もっとも殺して終わらせればいいことから冒険者仲間を盗賊として殺した……ということも。いや、さすがにそこまでの話は余程の事態、それこそそうする冒険者の人間性がおかしくないと無理な話で一般的な冒険者はそういったことを気にする必要性はないだろう。

 ともかく、そういったいろいろな理由もあり、盗賊のように冒険者が活動中に出会った知名度のない賊は全滅させて終わらせるのが基本となっている。ちなみに彼らの集めた財に関しては彼らを倒した冒険者の総取りとなる。そもそも盗賊が奪った財がだれの物かの証明も難しく、消費されている場合もあるし元の持ち主が死んでいれば還すこともできないのでそういうものとなっている。


「ヴィラ。殺さないように一人か二人ほどは生かして置け」

「後で地獄の責め苦を味合わせていいのね? わかったわ」

「フーマルは前にいる奴らを。俺は森の方に行く。数人は行きがけの駄賃でもらっていくけどな」

「了解っす」


 瞬間、前にいた盗賊数人の首が消えた。


「え?」

「な」


 後ろにいた盗賊たちはヴィローサが近づき毒を発生させ、昏倒させる。公也に言われた通り、二人適当に選びそちらは麻痺毒を、他の盗賊は全て致死性の毒……それもその毒素によってとても苦しむ毒を発生させ殺した。先ほどのヴィローサを見ての盗賊の発言に彼女は激おこであるらしい。別にその手の発言に関しては耐性はあるが、彼女のすべては公也に捧げる物であり、自分を使ってのそういった想像ですら許容したくないくらいのものである。ゆえに、彼らは彼女の怒りを買い、少なくとも彼女が殺すつもりの盗賊は地獄の責め苦を味わせてから殺すつもりである。

 そう考えると、フーマルが戦う前を塞ぐ相手、公也が殺した相手と森の中に公也が殺しに行った盗賊たちはまだあまり苦しまずに済むあたり、まだましな死に方と言える。


「さて。どこに誰がいるか、気配ではわかっているが目に見えないのは厄介だな」


 目に見えれば暴食の力で一瞬で殺せる。まあ、近づきその姿を眼におさめて殺せばいい話であるが、一人一人を相手にするとそれはそれで手間もかかるし下手をすれば逃げられる。


「土よ命の鼓動を受け息吹を探れ。命の火、命の息吹、体に巡る水を探りて触れし大地より刺し穿ち貫け。アースニードル」


 少し長めの詠唱を伴った魔法。効果範囲を高め、威力を高め、より正確に相手を狙い打つ。見えずとも、その体温、その呼吸、生命の持ち得る水分を元に足をつけている大地から土の針を伸ばしその身体を貫く魔法の攻撃。彼らもそういった攻撃は予想外か、一瞬で貫かれ命を失う。まだ逃げていれば数人生き残れたかもしれないが、得体の知れない公也の能力、その行動を危険に思いその場に留まり様子を見たことが彼らの敗北の要因だろう。まあ、敗北そのものはどれだけ頑張っても変えられない。ただの盗賊である彼らと異常な存在で膨大な力を有する公也にはそれほどの差がある。


「……七。出てきた奴らとも合わせて、十八。まだアジトにもっといるみたいだな。こんな場所でご苦労なことだ」


 意外と彼らは大きな盗賊であるらしい。もっとも、数だけは多いが実力的にはさほど。時折この道を通る数の少ない旅人を数の暴力で対応する程度の盗賊。ここを通るような馬車、商人とその護衛は襲わないような、本当に弱く数の少ない者のみを襲う力のない盗賊。


「さて、一応尋問はしておくかな。情報は十分だから別に殺しても問題はないが……」


 公也の暴食により食らった盗賊たちから既にある程度の情報はある。もっとも、全ての情報が得られているわけではない。ある程度生き残っている盗賊から情報を吐かせ整合性を調べる。また、先ほど魔法で殺した盗賊たちからも情報収集のため暴食でその死体を食らっておくことにした。情報に関しては殺した死体からでもある程度は得られる。重要なのは情報を蓄積した頭部、その脳。生きていなくとも構わないが、生きているほうが持っている情報は多い感じである。



※なぜ盗賊はわざわざ姿を見せるのか。数の優位があるから脅せばそれで済むと思ったのだろうか。あるいは容易に殺せると見たのか。

※盗賊を捕まえて奴隷として売り払う、あるいは捕まえて賞金首として提出するなどする必要はない。首だけあれば十分。そもそも捕まえて連れていくの手間で扱いに困るし受け取る側も扱いに困る。デストロイするのが基本一般的。

※可能性を言うと何でもありになってしまうのでは?

※目で見ずとも認識していれば暴食は届く。ただ気配だけでは認識が完全ではないのでうまく届かない可能性もある。やはり目で見えるというのが一番認識としては大きい。

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