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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
二章 魔法使い
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「えっと、街を出ていくって……え? 何か問題でもあったっすか? 最近の冒険者たちからの誘いとかそういうのが嫌いだからっすか?」

「いや、そういうのが原因というわけじゃない。確かに面倒ごとでうざったいと思わなくもないことではあったけど」


 放浪魔を倒してからの公也は勧誘やパーティーへの参入要求など、色々と冒険者からの接触が多く実に面倒な話だった。仕事に関しても頼みたい任せたいという話がないわけでもない。まあ、ロップヘブンは大きな街ではないため、その時話題になったから色々頼みたいというだけであり、別に公也でなければならないというわけではない。公也もその時受けたことのない依頼であったのならば積極的に受ける方向性だった。別に公也はそれほど特別な冒険者でないとそのうち解っていったため、すぐに元の形に戻っていった。

 そんなこともあったが、別にそれが理由でロップヘブンから去る、というつもりはない。確かにそういったことじゃ面倒ごとではあったがそもそもヴィローサが側にいる時点で面業事が寄ってくる可能性は高い。つまりそういったことを忌避するのならばヴィローサをどうにかするか、あるいは人里そのものから離れて活動していることだろう。つまりそういったことが原因でロップヘブンから出ていくつもりではないということだ。


「じゃあ理由は何なんすか?」

「仕事の種類がないことだ」

「あー、それは確かにそうっすね。ロップヘブンは街としては小さくはないっすけど大きくもないっすからね。特別に何かがあるってわけでもないっすし、仕事に関してはほどほどにある、って感じっすからね」


 冒険者の仕事というものは特別多いというわけでもなく、あまりにも多種多様というわけではない。基本的には未開拓の地域の調査、あるいはあまり人の手の入っていない場所への採取や狩猟、周辺の魔物の分布の調査、別に冒険者でなくともできる者も多いが、冒険者に任せておこうという依頼が主だろう。そもそも冒険者はその道の専門家に比べれば格段に劣るため、多くの場合は急に必要になった人員を求めるような依頼が主体だろう。そうでないのはやはり荒事がメインだったり、街と街を移動するような場所を選ばない仕事だったり。

 まあ、冒険者と言ってもいろいろとあるのでこういうものであると断定できるものではない。ロップヘブンではそれなりに依頼はあったが、その依頼の内容が大きく変わることはほとんどないという感じである。まあ、時々珍しい依頼がないわけでもないが。


「でも、師匠って色々やってたっすよね」

「これ以上やるものがないんだ」

「……? どういうことっすか?」

「まったく、フーマルは解ってないわね。ええ、キイ様のことがわかるのは私だけですものね。とうぜんですものね?」

「……えっと、どういうことっすか?」

「キイ様は同じ依頼をほとんど受けないことくらいわかってる? それともわかってないのかしら?」

「え? そうだったっすか?」


 公也は同じ依頼をあまり受けることはない。フーマルは今まで受けた依頼のことを思い浮かべる。確かに公也が同じ依頼を受ける機会は少なかったように思える。


「……えっと、どういうことっすか?」

「俺が依頼を受けているのは仕事の内容を知ること、経験することが目的だからな。一度受けてその内容を知ってしまったら新しい内容がないなら依頼を受ける意味がない。まあ、普通の冒険者はお金が欲しい、仕事が楽だとかそういった理由で依頼を受けるものだと思うが、俺は未知を経験することを主眼に置いているからな」

「おお……それはなんとも冒険者らしい理由……っすかね?」

「それは個人の感覚次第じゃないか?」


 冒険者。名前だけで見れば冒険をする者である。つまり未知への挑戦というのは冒険であることから冒険者らしい、と言えるかもしれない。金を稼ぐため、一攫千金を目指してという理由や楽にお金を稼げるから、仕事内容を選んで好きにできる、仕事の形態の関係で冒険者をやっているなどの理由よりはどちらかというと公也の方が冒険者としては正しいのかもしれない。もっとも、そういった冒険を行う冒険者はこの世界にそれほど多くないと思われるが。そもそも冒険者はその仕事の依頼体制からか、定職に就けないもの、あるいは毎日仕事をするような精神性ではないもの、何らかの理由で普通に仕事ができないものなど、色々と訳ありの人間も少なくはない。もちろん物語や御伽噺などから冒険者という存在に憧れ目指す者ややはり一攫千金などの夢のある未来を求めてなる者もいる。中には実力があるが礼儀作法などが苦手でこちらに来る者もいるだろう。まあ、そんな感じで冒険者は多種多様だ。公也のような人間がいてもおかしくはない。


「はー、まあ理由はわかったっす。でも、そんなに大仰に言わなければいけないことっすか?」

「いや、ヴィラはともかくフーマルはこの街にいる冒険者だろう? パーティーを組んでいる以上この街を離れるなら、そのことを伝えて相手の意思を確認するべきだ。フーマルはここに残りこの街で仕事をしたいのか、あるいは俺についてきて余所で仕事をするのか」


 冒険者と言ってもその内実は様々。住んでいるところで冒険者になる者、冒険者になり各地を巡る者、場合によっては今いるところに彼女や彼氏がいる者もいるかもしれない。フットワークの軽さ、自由性は冒険者の売りであるが、かといって誰もがどこにでも行くような冒険者ばかりではない。個人個人の事情があるため活動場所を移すのであればそれなりに相談してからの方がいいだろう。


「ああ、確かにそういう点は問題っすね……」

「別についてこなくてもいいのよ? 私とキイ様の二人旅の方が私にとっては嬉しいし」

「いやいやいや!? 別についていかないとはいってないっすからね!?」

「じゃあついてくるのかしら?」

「……そうっすね、まあ今すぐ答えを出せってわけじゃないとおもうっすけど、俺としては師匠についていくつもりっす」

「この街に残らなくていいのか?」

「チッ。邪魔者が入るわね……」


 フーマルの扱いに関してヴィローサの態度は実に酷い物である。それはともかく、公也の方はフーマルがこの街にいるのはこの街がフーマルの拠点だからと考えている。実際今は拠点としているのは事実だろう。だがフーマルとしては、別にこの街に骨を埋めるつもりがあるというわけではない。


「別に俺はこの街出身というわけでもないっすし、ここに残り続ける理由もないっすからね。仕事としては……面白いとかお金とか慣れるとかそういう理由でやっているものでもないっすし、基本的には師匠と一緒に仕事しているっすから、それほど気になる者でもないっすし……まあ、なによりやっぱり師匠と一緒に冒険者していくのがいいっすよ」

「そうか…………なら、明日この街を出ていく準備をしてから、明後日出ていくか」

「早っ!」

「三人か。まあ、別に仲間がいる必要性は……」

「カアッ!!」

「……ああ、フズか。鳴かないし普段つれていかないからお前は影が薄いな」

「カアッ!? カアカアッ!」

「うるさい。一生鳴けなくするわよ?」

「……………………」


 扱いの悪さ、という点では極めて出番が少なく宿の一室にずっと残されている、必要とされない限りは連れていかれないフズが一番扱い悪いのかもしれない。フーマル以上にヴィローサからの扱いは悪いし。一応フズの仕事は鳴いて危険を知らせることなのだが……普段鳴くことをヴィローサに許されていない。畜生は黙れと言わんばかりの苛烈さである。


「扱い酷くないっすか?」

「フーマル? 同じくらいに扱ってほしい? なら本気で黙らせるけど」

「いや、いいっす!」

「……………………」


 鳴いてフーマルに抗議をしたいフズであったが、鳴けば確実にヴィローサに容赦のない扱いをされるため鳴けないフズであった。まあ、完全に忘れられ置いていかれるよりはましであるし、安全はしっかり確保されており食料にも困らないのはいいのかもしれないが、少し現在の自分の状況と周囲の環境についてもっといい所にいけないかと考えるフズであった。


※冒険とは未知への挑戦……と言うことなら実に主人公は冒険者らしいと言えるのかもしれない。

※作者的に扱いの困るフズ。便利は便利だがいちいち鳴かせるのが面倒くさい。現時点ではヴィローサに黙らされている。ただでさえ出番が少ないのにそのせいで余計に影が薄い。

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