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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
一章 妖精憑き
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「……その昇格に関しては、もちろん俺だけ……なんだな?」

「そうだね。これは今回の戦功に対しての報酬だから。本来なら、君の現在の冒険者ギルドの功績ではランクアップに至るほどではない。決して低いとも言わないが、すぐにDランクに上がるほどではないよ。そもそも結構最近にEランクに上がったばかりだろう? そんなにすぐころころとランクは上がらない。君ほどの実力があったとしても、冒険者としての能力、評価はまた別の話だ。実力だけでランクが上がるほど冒険者も単純ではない」


 公也のランク上昇に関しては今回の放浪魔討伐の功績の大きさゆえのものである。通常の場合、冒険者がどんな魔物を倒したところでいきなりランクを上げる、という形にはならない。まずその証明の問題であったり、実力があるのと冒険者としてしっかりしているのは別の話であったり、あるいはそうしてランクを上げると魔物を倒してランクを上げようと依頼を受けずに無謀にも強い魔物に向かっていく冒険者が増えるという理由であったりと、理由としては様々な物だ。だが今回のように、本当に街のために貢献する戦果を残し、その上で実力を示し、報酬としても過分に支払う必要性がある場合など、場合によってはその冒険者がその時にいる冒険者ギルドのギルドマスターの裁量によってランクを上げることは許容されている。

 これに関しては場合によっては冒険者ギルドでもどうしようもない報酬支払いを要求される、今回の放浪魔のような特殊な事例の災害などへの対応のためである。それこそ放浪魔や特殊災害、戦争への対処など、様々な形で冒険者ギルドの依頼を受けるというだけで得られる功績とは別の形の功績を得る機会があり、その評価は単純に依頼で得られる功績とは別の判断が必要になるためそういう手段がいる、ということである。

 当然ながらこの報酬支払いに関しては公也のみに支払われるものだ。ほかにも手伝った冒険者や、毒を発生させたヴィローサなども活躍はあるが、やはりほぼ全てを受け持った公也には劣るし、ほぼないようなもの、特にヴィローサは目に見えての成果ではないゆえにそうならざるを得ない。これに関してはヴィローサも別に望んでいるものではないので構わないし、代わりに公也への報酬となるとそちらの方がよほどうれしいだろうということなので問題はない。


「……こういう形でランクを上げていいのか?」

「必要ならば昇格を報酬にしてもいい。強さだけでランクが決まるわけではないけど、あの放浪魔をほぼ単独で倒せる者を低ランクにおいておくわけにもいかない、という理由もある。流石に冒険者としてしっかりとした評価の必要になるCランクは無理だが、Dならそこまでは難しくもない。まあ、これに関しては君が受けた依頼の量に、内容としては然程難しくはないもののしっかりと依頼をこなし高評価で終えていることなども理由だけど。ただ、一応注意しておくが、Dランクと言っても冒険者ギルドへの貢献、功績でのDランク昇格ではないゆえに、未だに貢献度合はDランクには到達していない。つまり次のCランクに上がるにはまずDランクにあがるくらいの依頼の評価、冒険者ギルドへの貢献が必要だ。そして、Dランクにあがるくらいの過程を経て、更にCランクへあがるだけの仕事をしなければならない。Dランクに上がるのは早かったが、Cランクに上がるのが早まるわけではない。そこは理解しておいてもらいたい」


 あくまでランクを上げた、というだけで公也自身の功績や貢献が大きく変動したわけではない。まあ、放浪魔を倒した功績なども考慮するべきではあるのだが、これに関しては明確に通常の依頼を果たしたわけではないので同じ依頼を果たした功績とするには問題があるためである。そのためDランクに上がっても、まだEランクでしかないギルドへの貢献度合いであり、CランクにあがるにはEからD、DからCにあがるための依頼の評価、功績、貢献が必要となる。ちょっと面倒な話であるが、Dランクへの上昇は個々の冒険者ギルドの裁量によるものであり、冒険者ギルド全体での決定ではないゆえの扱いになる。まあ、対外的にはDランクであるということでいいだろう。


「だが、こういう形で上がると他の冒険者から文句が来たりはしないか?」

「君が放浪魔を倒して手に入れたものだ。それを否定することはここの冒険者にはできないだろう。よその冒険者ギルドでも、ギルド側には情報が共有されるし、冒険者はそんなことに関してまで知る手段はほとんどない。仮に文句を言ってきたところで雑音でしかないし、負け犬の言葉だよ。それでも気になるなら決闘でも何でもして実力を証明し黙らせてもいい……まあ、これは少し乱暴かな?」

「その面倒はこちらに任せると」

「それくらいできずして冒険者になるつもりかい?」

「そちらの判断だろう?」

「………………はあ。まあ、何かあればここのギルドに関してはこちらに話してくれればある程度は対処するよ。でも、冒険者は自由であり、自分の行い、行動に対して自分自身が責任を持つものだ。こちらは君たちが活動しやすいように活動しているが、結局のところ冒険者は自己責任で行動するしかない。たとえいいことであっても、悪いことであっても、その結果返ってきたものが悪いことであっても、いいことであってもね」


 冒険者の行動は結局のところ冒険者の裁量、選択次第である。その結果冒険者がどのようなことになろうとも、冒険者の責任である。もちろん冒険者も人間であり、守るべき法律や法律の守りもあるが、それでも冒険者は他の人間と違い比較的自由な形で仕事を行う。その弊害もあるが、それに関して全て冒険者ギルドやそのほかの法律などで保護や縛りつけたりはできない。ゆえに冒険者のことは冒険者の自己責任として任せざるを得ない。

 今回のことでも、ドラゴケンタウロスに突貫した冒険者の生死はその冒険者の判断によるもので、他の人間が関与するものではない。他の冒険者の行動に関してもそうだ。もっと早くに行動していれば冒険者の死者を減らすことができただろう、と公也に対して攻めるようなことはできない。そう思い罵詈雑言を浴びせることはできても、多少周りの感情を動かすくらいで多くの冒険者は何を言っているんだ、思うだろう。冒険者の行動は冒険者の判断、意思によって決められるもの。ドラゴケンタウロスに挑んだ結果死んだ冒険者も別にそうする必要はなかったし、公也が急いでドラゴケンタウロスに挑む必要性もない。

 まあ、既に終わったことに言っても不毛な話である。ともかく、冒険者のことは冒険者自身が解決しなければならない。冒険者ギルドは一般人側と冒険者側の間にある組織という側面が強く、依頼の受付や冒険者とのやり取りを受け持ったりするのが主の仕事である。


「……わかった。面倒はあるかもしれないが、ランクの上昇は損ではない。ありがたく受け取るとしよう」

「うん、そう言ってくれるとありがたい。そこの二人のランクを上げずとも、リーダーである君のランクさえしっかりしていれば受けられる依頼の上限もあがるから問題はないはずだよ」

「そういうものとは少し違うんだが……」


 どうせだから仲間と一緒にランクを上がりたい、という思いがある、という感じである。まあ、それも絶対にやらなければいけないことでもない。公也としてはランクが上がることに伴う面倒の増加の方がよほど厄介だ、と思うくらいである。




 と、冒険者ギルドのギルドマスターの部屋にて、公也とその仲間の二人が入りそんな感じの話し合いが成された。かなりの短期間で一気にDランクに上がった男、放浪魔をほぼ単独で倒した男。そもそもランクの上昇に関しては何処で情報を手に入れたか不明だが、噂の広まりは速く、また人の口には戸を立てられない。そういう感じで公也についての情報は広まり、その在りよう、冒険者としての姿から彼は"妖精憑き"の二つ名で呼ばれることとなる。そこに魔法使いと付けられるか、剣士と付けられるか、あるいは他の何かが付けられるかは不明だが、大きく広まったのは"妖精憑き"の名前。

 そうして、後に公也の二つ名は"妖精憑きの魔法使い"として全世界に広まることになる…………かもしれない。

※冒険者のランクはギルドへの貢献で決定する。ただし今回みたいに強さを示し、また戦功をあげることでもランクが上げられることがある。実力だけでランクは決まるものではないが実力を大衆に示したうえで戦果もだしているのにランクが低いまま、というのは流石に変に思われる。上げる、というよりは上げざるを得ない、といった具合である。Cランクは一人前、実力があれば冒険者として一人前というわけではない。冒険者としてきちんとまともに仕事ができると示さなければ一人前と認めることはできないのである。

※Dランク(貢献度上はE相当) 例としては F:10/100 E:100/1000 D:1000/5000 でランク上昇値が決まっているところをEの段階にあるものを上げたので D:593/5000になった感じ。ランクは上げられたが次のランクになるまでの総合貢献度は変わっていないと言うこと。

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