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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
一章 妖精憑き
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「とりあえずあっちに街があるのはわかった。食事はあの能力のおかげで必須ではない、か。魔法…………使い方、経験を知識として得たけど、使えるかどうかは別みたいか。でも、面白いな」


 公也は魔法の力を得た。魔法使いであっただろう先ほどであったばかりの女性を暴食にて食らい、己の物とした。その知識、力に、肉体、経験、様々な物を己の物としている。ゆえに彼は今なら魔法を使うことができる……ただ、可能であるという事実と、実際に行使できるるかどうかはまた別の話。できるようになったからと言って今までやったことないことをいきなりやろうとしたところで出来るはずがない。

 公也は彼女の経験も得ているが、しかし経験がそのまま公也の経験となるわけではない。経験は公也が彼女の経験したこととしての情報として獲得している状態である。言うなれば、自分の身に経験として身についたわけではなく、ある物事をこれこれこういう形で扱った、という経験の知識を得る形となっている。そのため魔法に関わることは知識として得ているものの、取り扱いに関しては公也自身の経験と慣れが必要になってくる。

 とはいえ、それでも今まで様々な形で慣れ、経験してきた人物の知識がある以上普通の人よりはかなり楽に扱えるわけであるが。


「魔法に関しては置いておくとして、この暴食……」


 公也が見ている先にあった木の幹が、下半分が消える。


「……流石に一度に全部丸ごとはできないのか。あの女性もそうだったけど、食べ方みたいなものがあるのか?」


 暴食の力、邪神に与えられた力を使い、彼はいろいろと試している。女性を食らった時は上半身が食われたが、その後下半身も食らうことができた。使用に関する限度はなく、対象に行える回数も恐らくはないだろう。一日の使用限度もなく、どこまで食せるかの限度も恐らくない。食す対象に関しても別に生物以外を食することができないというわけでもない。


「……謎が多いな」


 食した存在がどうなるか……それに関しては公也に還元されている。わかりやすい例が魔法の力や経験と知識。それらが女性から公也へと渡っている。一応肉体も彼に渡っているし、その命も彼の物となっているが、そこに関しては彼自身には直接認識できない部分となっている。はっきりとわかり実感を得られるのが魔法の力や知識や経験であるわけだ。

 今行った食により木の得てきた情報、それを得ることになるが、それもまたわかりやすい事例である。代わりに木の持っている生命やその肉体に関する物が自身に反映されているかはやはりわかりにくいことになるわけである。彼の暴食は食らった物のすべてを自分に還元し反映すること、ということだ。もっとも、本当の意味ですべてを還元できるわけではなく、いろいろと複雑な形になる。また、彼自身がそれらに関する取扱いができるかというとそれもまた別の話になる。魔法と同じで暴食の力も今得たばかりでそれを扱いきれるものではない。実際先ほど女性を食した時も、今木を食した時も、丸ごと一気に食せないみたいな形だったのもその一例だ。暴食の力での食べ方、それを工夫し一度に全域を飲み込める、あるいは丸ごと一体を更地に変える、そんなことができればかなり楽になることだろう……危険も多いが。


「とりあえず、どれだけ食べられるか試してみるか……?」


 能力の限界、限度、それを調査してみたい。それは興味心からでもあるし、これからのことを考えるうえでも重要な物事だからでもある。暴食の力は彼にとって最大最強の身に余るような力である。それこそあらゆる存在をそれ一つでどうにでもできるくらいには。しかし、それが何らかの要因で使えなくなると問題になる。使用回数の制限、許容量の問題、影響できる範囲や種類の限界、様々な要因が考えられる。

 今彼はその能力を得たばかり、良く知り得ず使っている状態にある。だからこそ、今すぐそれに関してどうなのかという情報を調べ先に学んでおきたい。そうすることが自分の安全にも繋がるのだから。




 近くの村にて、ある噂が広がる。それはある日山が突然消えたという話だ。それは特に兆候があって起きた出来事ではない。山がその痕跡一つ残さず、丸ごと消えたのである。禿山になった、とか山が実は竜か何かの背中でどこかに行って消えた、とかではない。そこに存在したものが影一つ、まるで存在しなかったのようにすべてが消え去った、という話である。

 その村ではその出来事を単なる噂だと最初は思った。しかし、実際にその場所に見に行くと本当に何も存在しなかった。木々はもちろん、そこにいた生命の全て、土砂を含めた山という場所を作り上げる土地の土台そのもの、鉱石の一つもそこから見つかることはない。まるでそこに山は初めから無かったかのように思えるほどだが、その村を含め近隣では誰もがそこに山があったことを知っている。それまでの間ずっと魔物か何かに化かされていたのではないかと思いたくなるほどだが、それもあり得ない。それならばそれでまだ何か情報があって然るべきだ。だが、まるで何もない。

 気味が悪い、それが近隣の村の思うところだろう。本当ならばこの何かを起こした存在を危険視し、彼らが伝え対処するべきなのかもしれないが、何が一体どうしてこのようなことになったのかがまるでわからない。そんな状態で何を伝えればいいのか。話したところで信じられることはないだろう。妄言、あるいは頭が狂ったと思われるのが関の山ではないだろうか。そこに山があったことを知っているのはその付近ならば当然だが、遠くにいる人はどうだろう。存在していたことを知らないのだから存在していた事実が残っていない場所を見て存在していたかもしれないとは思わないかもしれない。もちろん近辺の別の山がその山との関係性を有していれば存在していたたかもしれないと思える部分はあるかもしれないが、やはりそもそも確証を持てないだろうと思われる。

 そのため、彼らはこれは神隠しか何かの一種だと思うことにした。この世界においてあまり神は信奉されていないが、それでも一切のそういった存在への信心がないというわけではない。そういった信じられる神、あるいは神と言っても差し支えない魔物のような邪な者、またはもっと別の超常的な存在か。そういった異常な何かが戯れに行ったことであると思わなければ考えられないくらいにそこで起きた出来事はあまりにも信じられない物事だったわけである。


 ある意味、それは間違ってはいないのだが。


「過度な使用はやめておこう……」


 その山を食らった存在は、邪神と呼ばれる存在に力を与えられていたのだから。


※単純に力の使い方に慣れていないだけ。初めて箸を使った時今と同じ使い方ではないように。どんな力も使えば使うほど慣れ、応用力もついてくる。もっとも最終的には本人の慣れと意識に影響する。応用方法も、基本的な使い方も。そのせいで多様性のある応用ができない者も少なくはない。

※暴食の力はこの世界における全てを対象にして使えるチート。少なくとも対象を一切選ばず暴食の力を振るいこの世界のあらゆるすべてを食することのできる力。もっともそれを受け止める側は元々が人間であるため本人の意思という限界はある。また使う部分でも同じ。認識が力における最大の壁となる。もっとも限度がないので滅茶苦茶チート。

※暴食の力はこの世界の全てを食することができる。これは種類の意味合いではなく、世界そのもの全てを食らうことができるということ。もし一切の躊躇がなければ世界の全てを食らい滅ぼすこともできる。それを理解し流石に自重する様子。それを理解するまでに山一つが犠牲となったが。

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