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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
一章 妖精憑き
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 公也たちがいつもどおり依頼を終え、冒険者ギルドへと戻ってきた。しかし、普段の冒険者ギルドの賑やかさとは別で、ざわざわと何やら騒がしい様子になっている。困惑あるいは戸惑い、怯えや恐怖、迷い、さまざまな普段は見られない冒険者たちの表情が見える。


「今日は何か変だな」

「そうね……でも、別にそんなことは私たちには関係ないんじゃないかしら? 早くお仕事を終えたことを報告しましょう」

「いやいや……」

「フーマル、ちょっと事情を聞いておいてくれ。その間に仕事が終わった報告をする」

「あ、そっすか……はい、了解っす」


 いつも通り、雑な扱いや雑用を押し付けられるとか、基本的にそんな立ち位置のフーマル。公也が相手でもヴィローサが相手でも、基本的にはそんな扱いである。まあ、公也とヴィローサでは公也の方が扱いとしては比較的まともだったりするわけだが。

 そんな彼の立ち位置、取り扱いに関してはともかく。実際の所公也やヴィローサがその辺の冒険者に聞き込みをするよりはフーマルが聞き込みをする方がはるかに話がスムーズで楽に済むという事実がある。そういう点に関しては二人とも自覚があるため、基本的にはフーマルに押し付ける……もとい、任せている感じである。自覚があるのならば直せばいいと思うところかもしれないが、公也の性格は生来のもの、その暴食の性ゆえの変えることのできない歪んだものであるため無理で、ヴィローサはそもそもその精神性が理解できないような毒によって壊れた狂った精神性であるがゆえに修復ができない。つまり二人の性格を直すことは無理であるため、極々一般的な冒険者と言ってもいいフーマルが聞き込みをするしかない、というわけである。

 そうして聞き込みをした結果、フーマルは放浪魔の出現の情報を得る。


「放浪魔?」

「そうっす。普通の魔物とは違って、あちこち旅してまわってる魔物っすね。その辺にいる魔物よりもはるかに強くて、街とか都市とかにとんでもない被害を出すことの多い魔物っす。有名なのは破壊のカイドランっていう竜っす。御伽噺でもその名前は残ってるんで知ってると思うっすけど」

「…………知らないな」

「そうね」

「ええっ!? ヴィローサ……さんはともかく、師匠も知らないっすか!?」

「まあ、色々と事情があってな」


 詳しいことを公也は言わないためその事情に関してフーマルが知ることはできなかった。まあ、異世界出身であるということに関してはそう簡単に教えることはできないだろう。そもそも公也自身あまり積極的に言いふらすような性格でもない。


「まあ、その危険な放浪魔がこの街の傍に出た、ってことか……」

「出た、ってだけならばそこまででもないっすけどね……放浪魔はその強さがとんでもない魔物で、街とか都市とかに来ると確実に大被害をもたらすものっす。この街はあんまり大きくない街っすから、放浪魔が寄ってきてちょっと暴れるだけでも……ほとんど壊滅状態になるんじゃないっすかね。冒険者もそこまで強いってわけでもないところっすから」


 フーマルの会話に関しては周囲の冒険者も聞いており、その会話に対してどうにも睨むような眼で見てくる。しかし、それ自体に関しては事実であるため、その言葉を咎めるようなことは言わない……が、やはり心情的にはっきりとそう言われることには腹が立つ、という感じだ。そんな目で見てきたのでフーマルも流石にそういった部分は口を噤む。


「まあ、そういうことっすから、冒険者ギルドから冒険者に対して放浪魔に対抗するための依頼が出る感じっすね……まあ、冒険者は基本的に皆受けなければいけない依頼、って感じっすけど」

「強制依頼か……そんな危険なやつ相手なら受けたくないってやつもいるだろうな」

「そういうのは逃げるっすね……師匠はどうするっすか?」

「興味があるからな。それに、街を破壊するような魔物を放置してもいいのか?」

「いいわけじゃないっすけどね……」


 基本的に相手の強さが強さである。冒険者が何人いたところで簡単に勝てるような相手ではないことが多い。それこそ、上位の冒険者……ランクでいえばCくらいはいなければ話にならない、と言ってもいいだろう。ロップヘブンのようなあまり大きな街ではない、特に特産があるわけでもな、周囲に重要な何かがあるわけでもない普通の街にいる冒険者にそんな強さの冒険者がいるわけがない。だから何とかなることを期待できない、と言った感じである。むしろ街を捨てて逃げたほうがよほど賢明だが、それができる者はそうはいないだろう。


「キイ様、最悪私が何とかしましょうか?」

「……それは流石に最終手段だな。それにヴィラの毒は強いが、どんな相手にも無条件で絶対に効くわけでもないだろう。最初から頼みにするのはよくないな」

「……そうね」


 ヴィローサの毒を操る能力はとても優秀で強いものであるが、どんな相手にも有効というわけではない。基本的に生物のほとんどすべてに対して有効ではあるものの、無機物系の魔物やアンデッドにはほぼ通用しないだろう。生物でもそもそも相手が妖精の力に対する抵抗力があったり、ヴィローサが相手に力を行使する前に一瞬で近づかれたりすればヴィローサの力も届かず、近接戦、攻防力という点においてはヴィローサは人間よりも弱いわけで。それゆえにヴィローサを頼りにするのは難しい。特に今回は相手が強い魔物であるから余計に。公也は簡単に死ぬことはないが、ヴィローサは死ぬときはあっさりと死ぬのだから。


「まあ、あんまり難しく考えても仕方がないな。宿に戻るか」

「そうね」

「了解っす」


 そうして公也たちは宿に戻る。戻った宿にて、明日冒険者ギルドに来たらそのまま留まるように連絡がきた、という話がされる。これは冒険者ギルドから冒険者のいる全ての宿に対して連絡されたことで、別に公也たちが特別扱いされているとかそういう物ではない。公也たちとしても冒険者ギルドに行ったらそのまま仕事を受けて出ていく感じであり、その仕事が放浪魔のこともあって受けられないだろうからそれ自体は構わない、と言った感じではある。

 翌日。冒険者ギルドに集まった冒険者たちに放浪魔のことが話され、それが正式に強制的な依頼として、ロップヘブンの守りのために冒険者に仕事が割り振られる。ロップヘブンに留まる理由がない冒険者、放浪魔について詳しい冒険者は前日に既に逃げ出しており、この場に集まった時点で逃げることはできない。依頼を受けざるを得ない状況となった。


「それなりにいるな」

「そうね。この街にこれほどの人間がいるなんて思わなかったわ」


 集まった冒険者は初心者中級者結構な数だ。一部の冒険者でDランクはいるが、残念ながらCランクはいない。大半はEやFといったところだ。まあ、上位の冒険者は小さな街に残らないのでしかたのないはなしであるが。全体で人数的には百人を超えたくらい、百五十には届かないと言ったくらいだろう。具体的な数字を出すには人数が多くて面倒な感じだ。


「それで、これで待っているだけか?」

「一応斥候として冒険者を何人か出してるみたいっすね。そっちからどれくらい近づいたか連絡が入れば、って感じっす」

「そうか」


 斥候と言っても、本当に相手がどこにいるかをおおよそ調べるくらいのもの。流石に近づくわけにもいかないのでしかたがない。そうして彼らは待ち、情報が入り相手の居場所が分かり、ロップヘブンへと近づいてきているという話が広まり……その姿を、街で待機していた冒険者たちが見据える。


※特に書くことが思いつかないこともある。

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