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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
十章 人造白魔
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 白い魔物がフーマルを突破しようと突進する。フーマルもそういった魔物の動きに対応するのは慣れている。普段の修行は対人相手の修行ではあるが、外で魔物を狩ることもある。山の魔物や獣は強く狂暴で時にフーマルよりも強い相手が出てくることもあるし、強さでは劣っても逃げが上手い相手や突破力の高い相手など多様な相手と戦うことがある。

 とはいえフーマルでは対応できても今回の相手には力負けする。流石に完全に受け止められるほどではない。


「師匠、頼むっす!」

「ああ」


 しかし公也もいる状態であればフーマルも無理して相手をする必要はない。多少の面倒は一緒に戦っている師に任せればいい。白い魔物の突進を受けつつも、その攻撃をいなし公也の方へと流す。公也もそれに合わせ白い魔物に攻撃を仕掛ける。いくら白い魔物が高い能力を持っていても簡単に回避はできない。行動の矛先を変えられたものだ。公也の存在を把握したからといって即逃げに行動を移し替えることはできない。そのまま公也の攻撃を受ける……受けながらも無理やりに体を動かし回避している。


「強引な!」


 己の体が切り裂かれることを気にせず白い魔物は行動する。白い魔物がどのような思考をしているかは不明だ。しかし造られてその行動を指示、命令、埋め込まれてそれを基に行動するのであれば……自身が怪我をすることくらいは許容範囲なのだろう。もちろん好んでけがをすると言うわけではない。行動阻害の原因となる負傷、あるいはその生命を脅かす致命的な負傷は別の怪我を負ってでも回避する、という感じだ。人間なら心臓を貫かれそうだったから肩を貫くように誘導した、みたいなものだろう。要はそれで死なずに済めば問題ない、そういうものだ。

 もちろんそれは普通の生物が簡単に即決で判断できるものでもない。人間でも戦闘に慣れていたりすればそういう判断はできるかもしれないが野生生物ならば簡単ではないだろう。命を優先する代わりに他の怪我を容認するというのは。結果的にそうなることはあるとしても。そのあたりやはり判断は機械的というべきか。


「……間を開けたな」

「どうするっす? こっちから行くっすか?」

「それが一番なんだが……フーマル行けるか?」

「……そうっすね…………厳しいかもしれないっす」


 フーマルは相手と戦う分には十分だが迎撃が主である。自分から攻撃する、襲い掛かるというのは少々難しい。攻撃時と防衛時の必要な能力は違う。フーマルの場合自分から攻撃するよりも相手の攻撃を受ける方が得意……というと少し語弊があるが、相手が強者の場合は受ける方がやりやすい。これは戦いに対する慣れ方の問題もあるだろう。強者に自分から挑み叩きのめされるよりも強者から襲い掛かってくるのを防ぐことが多かったゆえに。


「よし、なら同時にやるか」

「……わかったっす」

「多少の怪我なら治せるから気にせずがんばれ」

「いや、怪我したくないっすからね!?」


 公也の魔法による治療であれば怪我をしたところで問題はない。なので死なない限りであれば白い魔物の攻撃を受け大けがをしたとしても問題はない……というのはわかってはいる。しかしフーマルも怪我をしたいとは思っていないだろう。出来れば怪我をせずに済ませたい。誰だって痛いのは基本的に嫌なわけだし。


「行くぞ!」

「了解っす!」


 公也とフーマルが白い魔物に襲い掛かる。基本的には公也が攻め手、白い魔物はその攻撃から逃げるがその逃げの動きにフーマルが対応する。本気で逃げるつもりの場合は空からメルシーネが逃げ道を断つ。白い魔物は公也相手にはどうすることもできないのでフーマルをどうにかしようと行動する。だがそこに公也がフーマルを相手しようとする白い魔物の隙に攻撃を入れる。

 白い魔物は自分の致命的な負傷を回避しようとする。公也相手ではそれは自分の体の一部、他の部分を犠牲にするものとなる。一度や二度ならばまだ大きな問題はない。だが何度も続いていくのであればそれは致命的な負傷ほどではないにしても、致命的な結果につながる負傷となる。


「そこだ!」


 公也が魔物の足を斬り飛ばす。四足の魔物はその身体能力を出すうえで必要な前足の一つを失う。これにより白い魔物の機動力が落ちる。また白い魔物の行動パターン、刻まれている行動内容は四足で動くものが前提にある。白い魔物を作り上げた存在、それに情報を刻み行動パターンを設定した存在は白い魔物が四足でなくなること……もっと言えば敗北するパターンは想定していなかったと考えられる。

 ゆえに四足の魔物は一つ足を失った状態にありながらもその行動は四足のときと同じ行動をしようとした。これが通常の生物ならば足一つを失ったことを理解しそれを考慮した行動をするだろう。しかしそういった思考ができない、そういう思考能力を持ち得ない白い魔物は行動を変えない。変えられない。そしてそれは依然と同じ身体能力を出すことができない、以前と同じ行動結果があり得ない、そういう状況になる。それは致命的な隙となった。


「おおおおおおっ!」


 公也から逃亡しようとする白い魔物の動き、鈍り四足の行動をしようとした結果大きく失敗した動きとなった白い魔物にフーマルが致命的な一撃を叩き込む。しかし致命傷ではあるが即死ではない。それゆえにフーマルが白い魔物からの一撃を受けるものの、ダメージ自体は大きなものではなく……白い魔物が倒れる。



※炎を突っ切って逃げたほうが結果的に損耗は減る。しかし戦闘の場合、確実に損耗を受けるとは限らない。確実に十のダメージを受けるか、それとも十五か零かなら後者の方が、という思考……というよりは行動の条件付け。

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