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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
十章 人造白魔
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11



「しかし……こっちに行くのか」

「森から外れるような場所になってきたっすね……」

「あの魔物って森に隠れているって話じゃないの?」

「別にそんなことは一切言ってなかったと想うのです。森の近辺で出会う、森の中で出会う、どこで出会うかは別に明確ではなかったのです。そもそも相手の生態すらわかっていないじょうたいだったのです……ご主人様が見る限り怪しいところはあったようなのですけど?」

「……普通の魔物ではない、作られた魔物の類である可能性……まあ生物を作るのは魔法の技術の中ではありえないことじゃない。ある意味ではアンデッドを作る魔法は魔物を作る魔法……生物じゃないがそういう作る魔法だ。前に悪霊の群体の騒動のときに見つけた組織も生物を作っていたしな。っていうか実例が城にいるだろ」

「ウィタね」


 アンデルク城にいるウィタ。彼女はとある組織に作られたホムンクルスである。まあホムンクルスと言うのはその存在を示す名称ではあるが本来の意味での錬金術で作り上げるホムンクルスとは少々別物だろう。そもそもその組織の情報を入手できなかったこともありどういった形で作っているかまでは厳密には不明である。一応公也はその組織に所属していたネクロマンシーの持っていた情報は持つが全てを把握しているわけではない。


「……あんまりよくは知らないっすけど、何か問題があったりするっすか?」

「基本的に魔法で生物を作るという事柄に対しては……まあ問題がないとは言わないが……一応大丈夫といえば大丈夫だな。ただその作り出した生物がどういう扱いになるかはわからないし、その生物の行動次第では責任問題も起きる。そもそも生物を作るってこと自体普通はあまりよくは見られないからな……アンデッドよりはまだマシな扱いだが生き物を作るか死体を利用するかの違いなだけで根本的には似たようなものだし」

「ウィタの扱いとかはどうなってるっす?」

「そもそもウィタはヴィラが拾ってきたわけだし、そもそも届け出たり調べたりしなければウィタの場合わからないだろうからな。ヴィラがいなければただの人間にしか見えずに気にしない可能性のほうが高い。見た目じゃ全然わからないだろう?」

「そうっすね。普通の女の子にしか見えないっす」

「見た目だけならそうですけど、気配を探れば普通とは違うのはなんとなくわかるですよ。まあ、ウィタの場合はフェイの存在があるですからそちらのせいでウィタ自身はあまり気にならないかもしれないのです」


 ウィタも作られた生物であるが見た目のうえではほぼ普通の人間と変わらない見た目をしている。ウィタが生物として人間とは別の存在、作られた生物であることを調べるにはその生体組織を調べたり体の中を見たりしなければなかなかわからないだろう。ヴィローサのような見た目ではなく内部の毒素で判別できるという特殊な能力を持っていなければ簡単にその存在を把握したりはできなかった。今回のような魔物ならば見た目でも普通とは違うとわかりやすいので区別しやすいがそうでなければ普通は判断できない。ゆえに届け出なければその把握は難しいだろう。少なくとも現在アンデルク城にいるウィタの存在は外にはあまり知られていない。クラムベルトがもらしていなければおそらく誰も知らないだろう。その可能性は低いが。


「……ウィタかあ」

「ヴィラ?」

「んー、なんか似てる? うーん、でもウィタのほうが…………うーん?」

「……似てる、か」

「似てるですか。ウィタと似ているということに意味はあるかもしれないのです?」

「……ウィタと同じ人造生物を作った組織はどこかへと逃げ出している。その組織が新たにあんな感じの生き物を作り出した可能性はあるかもしれない……ってところか」


 悪霊の群体が出てきた騒動の時にその拠点を見つけることはできたがその拠点を使っていた組織は逃げ出した後だった。組織の持つ機械や道具を破壊し、作り出した生物も大体は始末したうえでの逃走である。一から始めるのは厳しいかもしれないが逃げ出した先でまた新たに同じようなことをしている可能性はあるだろう。今回は人間に近い生物を作り出すのではなく魔物のような単純に強い生き物を作り出したということになる。


「……目的は何だろうな」

「そんなことは俺たちにわかることでもないっすよ」

「そうだな……捕まえて聞いてみないとわからないか。まあそもそもあくまで現状ではこれは推察でしかないわけなんだが」

「そうなのです。あの生き物が自然発生した魔物なのか、それとも作られた人造生物なのかは現状では不明なのです。なのでさっさと捕まえるか倒して死体を持ち帰るのです」

「死体を持ち帰らないと倒した証明はできなさそうだからな……」

「ねえキイ様。作られた可能性があるなら……あれって一匹なのかしら?」

「………………」

「………………」

「………………」

「………………あの、キイ様? それに二人とも? ちょっとー?」

「どう思う?」

「ありえなくもないのです。そもそも一匹である前提がおかしいのです。作られた生物である可能性が高いならむしろ一体しかいないのはおかしいのです」

「あれが複数いるとかだとやばくないっすか?」


 今回の白い魔物は複数いる可能性がある……ただ異常発生しただけの魔物ならばそんなことにはならないだろう。しかし作られた魔物であるならばそもそも一体しか作られていないという可能性のほうが低いだろう。そもそもなぜこんなところに現れ人間を襲っているのか? 作られた魔物であるならば、それが放棄されたからという可能性もあるが……それ以上に運用している可能性が一番高い。人間相手にどの程度作った生物が使えるのか。

 そしてそれを一体だけで試すものか、という疑問もある。もちろん一体しか作れなかったという可能性はなくはないのだが、いったい作れるのならば何体も作れる可能性はあるだろう。ただ相手の強さがフーマル、Dランクの冒険者よりも強いということを考えると簡単に作れるとも考えにくい。もっともウィタ基準のホムンクルスを量産できているという実績があるので実際のところは不明だ。まあウィタはフーマルよりも弱いという時点でDランクの冒険者よりも下の強さでしかない。量産することによる強みはあれども今回みたいにフーマルを圧倒できるDランク冒険者以上の強さを持つ生物を作り出してくるものとはまた別物だろう。強い生物を作る方がよりコストは嵩む、


「最悪複数いると仮定したほうがいいな。メルはフーマルとヴィラの守りを優先すること」

「了解なのです」

「さっきキイ様に戦わせるのが屈辱とか言ってなかった?」

「ご主人様の命令優先なのです。それくらいヴィローサならわかると思うのですけど?」

「喧嘩は無しな。行くぞ」


 風の行く先に向かう。森の外、山側、崖側。結構広い場所だ。ただ森を抜けていかなければならずその分危険度は高い。白い魔物が襲ってくるということは知られており、またその魔物を追うこと自体実力がなければ難しい。もしかしたら領軍はここの調査もしている可能性はあるが相手は近づいてくることを察知し逃げるのであれば基本的にその身を主に置く場所であったとしてもすぐに退避できただろう。痕跡に関しては不明だが、もしかしたら普段は別の場所で隠れて過ごすのかもしれない。そもそも出現自体定期的にとかそういうわけでもないだろう。ともかくある意味ではこの広い場所が決戦場みたいなものとして考えているのか、いや誘導しているわけでもないだろう。追われていることは感じた可能性はあり得るが公也の魔法を察知するのは難しいかもしれない。

 ともかく、公也たちは追いかけ白い魔物がいる地点にまで来た。


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