表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
十章 人造白魔
288/1638

3



 王国の上層部、いやジームント王は公也に対して罰を与えなければならない。勝手に他国の出来事に介入し大きな影響を与えたのはキアラートの貴族として問題である。もちろん公也は他国においては貴族ではないという扱いになっているし、その事柄に対し皇国から問題であるとの申し入れはなく報告もない。そもそもそのことに関しては皇国のほうが秘匿しているようなものだった。

 しかしだからといって公也に対し罰を与えなくていいという話にはならないだろう。罪に問われないとはいえ、その罪を知っている物にとっては、特にその罪を簡単に許すわけにいかない者にとっては相応に罰を与える必要性がある。公也の行ったことを罰して問題であると示さなければならない。

 だが同時に公也の行ったことは公になるべき事柄ではない。そもそも皇国がわざわざそのことをひた隠しにしているのである。それをキアラートがわざわざ大っぴらにするのは問題だ。そもそもそのことを知っているのはかなり限られた人間である。そのあたりの事情を考え公にせずに公也に罰を与えなければいけない……しかしそれは罰を与えるということ自体が厳しい問題となる。


「……罰を与えるという形にしなければいけないが、しかしそれを知られるわけにもいかないというのは面倒だな」


 罰を与えたという形が公に示されるとなるとそれは管理面倒なことになる。そもそもなぜ罰を与えるのか、という話だ。罰を与えられるのは罪を犯した者に対して、悪いことをしたから罰を与えられるのである。つまり公也は貴族として悪いことをしたということになるが、ならばいったい何をしたのかと問われることとなるだろう。つまり公に明確な形で罰を与えることができない。

 そもそも公也の場合罰を与えるとしても何が適切なものになるのか難しい。公也自身は貴族としての立場その者にはそこまでの興味はないだろう。アンデルク城の所持者であるがゆえに貴族としての立場が必要なだけであり、それ自体もそもそも公也よりもキアラート側にとって重要なものであるものだ。現状で公也に与えている貴族としての恩恵もそこまでのものでもない。治める土地も碌になく取り上げるものすらない。城を取り上げることはできない。城魔であるアンデルク城は取り上げる取り上げない以前にその魔物側の意志が重要なものになる。公也が死ななければ所有権は失われない。取り合えることは難しいしそもそも公也も手放す気はない者だ。

 一番簡単なのは金銭などの物による代償、しかしそれはそれで甘い。何を公也に対する罰とすればいいのか、そしてそれが公也の行った事柄に対する罰だとわからないように偽装できるようなものであるか。いろいろと複雑な事情が絡んで実に面倒な話、面倒な事態となっていた。


「まあこのことは一時的に保留として仕事をせんとな……」


 公也に対する罰は別にすぐにどうにかしなければならないことではない。それ自体は別に多少時間がたったところおで問題はなく、公也自身に対してこれは罰であるという形で明確に示すことができればそれで問題はない。公也もそういった行ったことに対する罰ということに関してはちゃんと受け入れる方である。王がそれを理解しているかは不明だが、ともかくちゃんとした形で後で罰を与える何かを行えば十分である、と考えられる。まあ罰を与えればそれで今後様々なことへの介入を控えるかといえば怪しいところだが。




 王のもとに届く物事は国内における様々な問題、各地の領地で起きた物事であったり貴族の関係での事情であったり様々なものがある。もちろん国外の事柄も多い。特に他国とのつながりのある事柄や他国に接する領地であったりと国における重要地や立場的に上位の者のところで行われていることに関してはかなりの大きな問題として取り上げられる。前に起きた悪霊の群体の事件は悪霊の方は首都につながる道を封鎖することから大きな事件として問題視された。一方でそのもととなったネクロマンシーの所属していた組織はそこまで大きな問題にはなっていない。あまり実態がわかっていないということも大きいが、以後その関連の事件は起きていないしその件におけるホムンクルスの方もそこまで大きな問題となるものでもないからだ。まあ生命体への実験は倫理的にはどうなのかという問題もあるがそれに関してはキアラートは魔法の研究をかなり熱心に行っている国でありそこまで倫理的な問題はない部分であったりするのだろう。

 そういった風に何がどういう形で問題になるかは結局のところ国にとって、国の上層部にとって問題であるかどうかが大きな事柄となる。


「む……これは……」


 その中の一つに他国に接する領地において発生した問題が挙げられていた。魔物の発生、それによる被害。通常ならばこういった事柄は冒険者に対して依頼されるようなことであり国の上層部に届くようなものではないだろう。しかしそれは実際にその地にいる貴族から出されたものだった。場所が場所だからかもしれない。国境付近での問題は場合によっては他国に波及する。できればその国内だけの問題ですむうちに解決するべきである。じゃないと何をやっていたのかと他国に文句を言われ、そのもごとを他国が解決した場合そのことに対する要求や請求などもあり得る。

 もちろんその地に住む貴族も冒険者に頼んだり領地の兵士に頼んだりもした。しかし上手くいかない。相手の強さの問題もあるし逃げ足の速さなどのそれらを探す側の問題もあった。数を増やすとまず戦うようなこともなく逃げるらしい。数を減らすと今度は個人の強さが重要となりまず勝ち目が薄いという話になる。単独で強い冒険者でなければ難しいということになるだろう。

 それこそ冒険者ギルドで依頼を出せばいいということになるのだが……強力な冒険者はある程度はどこかに所属しているものである。冒険者ギルドではなくそれ以外のどこかに、だ。なんだかんだで上位の冒険者はそれまでの経緯なども含めいろいろな形で多方面に柵を持つ。場所によっては皇位の冒険者がいないということもある。わかりやすい場所で言えばあまり目立った産業もない仕事もないロップヘブンみたいな街とか。

 その地では力ある冒険者とはそこまで多くない。他国と接する土地ではあるがその他国は別に敵対しているわけではない。もちろんその領地における独自の戦力はあるが冒険者はまた別の話。ともかくその地ではあまり強い冒険者がいないゆえにその魔物をどうにかする依頼が上手く進んでいないという話であるようだ。ゆえにこそ王のほうにまで話が届く形になったのである。ぶっちゃけて言えば自分でどうにかできる人間を探すのが面倒くさいので王様何とかできませんかと頼んできたという話だ。こういう話は王様とか偉い人のほうが手っ取り早く問題解決できる相手を見つけやすい。相応の実力を持つ冒険者に対する繋ぎも多いゆえに。


「まったく……これくらいのことは自分でどうにかしてもらいたいものだ」


 しかしその内容を見てふと思いつく。冒険者に依頼するのであればそれなりに高くつくだろう。移動する必要もあるし時間的拘束もある。必要な依頼料金は相応に高値のものとなる。まともに依頼するのであれば面倒くさいしお金もかかる。できれば安く、そして早く仕事ができる人間がいい。距離の移動も何のその、実力もありタダで働かせることのできる人間。そんな都合のいい存在はまずいない……しかしある条件がそろっていれば、不可能ではない。そう、今回みたいにそれを罰としての仕事として与えられるというのならば。


「よし。これを彼に対する罰としよう。竜を使うという話だ。実力もある……罰なのだから報酬も無しだ……少々こちらに都合がよすぎか?」


 さすがにちょっと都合よく使い過ぎなのではとジームントも思わなくもないところではあるが、毎度毎度こんな風にこき使うというわけでもない。あくまで皇国への介入に対する罰としての内容である。ゆえに今回だけのものでしかない。だが、だからこそ本当に報酬無しで容赦なくこき使うつもりであるようだ。


※主人公が送られた理由に関しての話。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ