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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
十章 人造白魔
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2



「っと……メルシーネ、もういいぞ」

「わっ、まだ戻らないで欲しいっすよ!?」

「ルル…………フーマルも降りたしもういいのですね?」

「あ、ありがとうっすメルさん」

「このあたりわたしは気の利く方なのです。ヴィローサとは違うのですよヴィローサとは」

「何? 文句ある? 毒すわよ?」

「……ここはアンデルク城じゃないんだから喧嘩は無しな?」


 公也、ヴィローサ、メルシーネ、フーマルの四人は現在アンデルク城からかなり離れた場所にまで来ている。場所で言えば公也の住むアンデルク城からロップヘブンを超えた先、かなりの遠方となる。まあロップヘブン自体結構キアラートにおいては端の方ともいえる場所だがそれよりもさらに端、遠い場所だ。それこそ本当にキアラートの国境付近と言ってもいいくらいの遠方である。

 しかしいったい公也達はなぜこんなところへとくることになったのか。


「……しかし俺が付いてきても良かったっすか?」

「別に問題はない……って言うかフーマルの方こそよかったのか? 冒険者の仕事じゃないぞ?」

「まあ、俺としては……ここ最近ずーっと城の中だったっすからねえ……」

「フーマルは基本的に外には連れていかれないで城近くの森の魔物を退治するだけのお仕事しかしていないのです。これで冒険者だっていうのだから困りものなのです。ランクが全然上がらないのです。そのうち実力詐欺になるのですよ」


 フーマルは基本的に城でずっと修行している感じである。一応冒険者として魔物を退治しその素材を持って行ったりもしているがここ最近はずっと城付近にこもりっきり。そもそも冒険者としてはギルドで依頼を受けて仕事をしなければ素材をいくら持って行って納品しお金を得たところであまりランクには影響しない。一応依頼内容に合致する納品であればまだ意味はあるがやはりランクを上げるには仕事の量としては微妙なところだろう。そうして仕事をしないまま城で修業、冬将軍やメルシーネなどを相手にしながら魔物退治などもしつつ実欲を上げている。まあ将来的にランク詐欺な実力をつける可能性はあるが現状ではCランクに上がれるかどうか、といったくらいである。なおフーマルのランク自体は現在のところはDランク。単独Cランクにまであがれるくらいになれば十分以上に一人前の冒険者といえる。

 まあそういったフーマルの事情に関する話は別に今することでもないだろう。今公也達のいる場所はかなりの遠方。公也がわざわざそういったアンデルク城から離れてどこかに行くということ自体はまあないわけではないが珍しい。それこそ何か目的、意味があってのものである。一応は個人的な理由、事情で移動する例もあると言えばある。地理的な情報を入手するとか、あちこちで色々なものを見てみたいとか理由はいろいろだ。しかしそういった個人的な事情での旅ではない。仮にそういったものならばヴィローサやメルシーネはともかくフーマルをわざわざ連れてはこないだろう。

 そもそも公也はフーマルに冒険者の仕事ではない、とわざわざ言っている。これは冒険者の仕事ではないという意味はそのままわかるがそれとは別に、冒険者の仕事ではない別の仕事であるという意味合いになる。つまり公也がわざわざ遠方まで来ているのは仕事で来ているということになるのである。


「しかしこの国の王様もわざわざ師匠に頼むって一体何事っすかね?」

「……まあ別に変な話じゃない。俺はこの国の貴族だが同時に冒険者だ。先の戦争でその実力は認められている。ランクもCランクで冒険者としては一人前だしな」

「でも冒険者に頼むことをわざわざ師匠に頼むっすか?」

「……頼みやすい事情があるんだろう。下手に冒険者に頼むよりも情報漏洩はしにくいし、貴族である以上は王様としては上の立場から命令ができる。冒険者相手でも命令はできるかもしれないがあくまで依頼という形を通してだ。最悪断ることも不可能ではないし……お金もかかるからな」

「師匠ならお金はかからないっすか」

「請求してもいいのよねキイ様?」

「いや、今回のことに関しては請求しないぞ?」


 仕事の依頼……正確には貴族として王からの指示、貴族の仕事して頼まれた実際には命令であるものである。

 基本的に貴族が他領に入りその他領における問題事に関与するということは少ない。例えば他領に用事がありそちらに行く最中にその問題事に出くわしたということで関与することはあってもその問題ごとを知りその問題ごとをその領地の主に変わり解決するということは基本的にはない。あってもそれ自体が問題ごととなる。他領に自分の持つ戦力を入れてその地の問題に介入するということは領地の侵犯と言ってもいいだろう。

 ただやはりそういった関与自体はあり得ないわけではない。領軍は流石に無理だが子飼いの冒険者を冒険者として仕事をする過程で向かわせたり、あるいは他領に用事があって移動する際に側付きの騎士を備えさせ問題ごとに遭遇しその解決を任せたり。そういった小競り合いのような小賢しい事柄はそれなりにある。それこそ情報戦として他領に自分の持つ諜報員を送ったりスパイを作ったりといろいろとやっていることは珍しくもないのである。

 しかし今回みたいに公也みたいな貴族本人が直接赴くというのはやはり珍しい。まあこれは王からの指示であるからこそなのだが。

 だがその指示でも、普通はまずありえない。本来なら貴族は戦力とはなりえないような戦闘能力の低い者である。公也のような冒険者としても活動できるような貴族はそう多くないだろう。まあそれでもいないとは言わない。場所柄魔物の被害が大きく貴族もそれをどうにかするために動かなければいけなかったり、他国との国境線付近でどうしても小競り合いの戦いが多く直接出向き支持しなければいけなかったりといろいろと事情があって戦える実力を持つこともあるだろう。まあそういったことはそれぞれの事情だが、ともかく普通は貴族が直接戦闘力として出向くことはまずない。

 いや、まあそういった細かい事情はいいのである。結局のところ今回のこれは、公也が遠方で仕事をすると言うのは王の意向、この国の上の人間による決定なのだから。


「え? お金請求できないの?」

「……貴族の給金だけでこういうことをするっすか?」

「いや、まあそういうわけじゃないんだが……今回はちょっとした事情があってな。だからこちらもタダ働きに近い。フーマルには俺からちゃんと仕事の分は払うよ」

「え……あー、なんか師匠に気使ってもらったみたいで申し訳ないっす」


 今回の公也の仕事に関してはタダ働き……王国にこき使われている、というわけではない。今回のこれ、公也がわざわざ遠方に出向いてその地の問題解決をするのは公也に対する罰という形になるのである。少々複雑……かどうかは個人の感覚によるものと思われるが、まあいろいろな事情があって遠方での問題解決を罰として与えられたのである。


※主人公への罰は上がってきた問題の解決。ほかにもっといい手段があるのでは、と思わなくもない。将来的に何かあった時力と使ってもらうとかでもよかったかも……まあ何かあった時主人公は国の貴族なわけだから動いてもらうことはできるはず。

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