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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
十章 人造白魔
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「ふむ………………」


 キアラートの王、ジームントは自分に届いた報告や連絡の内容をまとめ考えこんでいる。ここしばらくはどうにも騒動ばかりである。大きな発端は悪霊の群体の存在が発生したことによるものだろう。いや、それも一つの要因ではあるがやはり隣国トルメリリンとの争いになったことが大きいか。あるいはその結果増えた貴族が問題だったりするのだろうか。いろいろとここ最近キアラートでは騒動が起きている。そういえばどこかの街では放浪魔に襲われたという話もあるし、ある小さな魔法使いのある都市でも何か起きているという話もある。

 実はどれにも公也が関係しているのだがそれは基本的に偶然である。公也がいることに原因があるのではなく、単純にこの世界にはそういった様々な騒動の原因が多いのである。はっきり言って公也の関わった案件はここ最近でキアラートで起きた件であるが、それ以外にも各地でそれなりに騒動はある。身内だけで対処できていたりして特に知られていないようなことも多しい、そもそも騒動と認識されていない事態も多い。それこそ魔物による大きな被害でもなければどこかに突発的に発生した魔物としてひっそりと話が進んだり終わったりしていることもある。一例をあげるなら雪奈のような存在だろう。ワイバーンの谷に起きた異変もあそこにオーガンが住んでいて公也と知り合ったがゆえに話が来たというだけでもしオーガンがいなければ、公也がオーガンに会わなければ。あそこでの異変はただの異変として誰も解決することなく話が進み終わっただろう。ある意味ではあの件に公也が首を突っ込んだのはトルメリリンにとってはありがたいことかもしれない。最悪ワイバーンの谷のワイバーンたちが全滅しトルメリリンのワイバーン部隊が事実上壊滅する危険すらあったのだから。

 ともかくそういった数々の大きい小さい異変はいろいろな場所で起きている。キアラートに限らず世界のあちこちで、まるで誰も管理して世界を安定させていないように様々な問題ごとが起きるのがこの世界の常である。魔物の発生もある意味ではその一つでもあるわけであるし。

 だがそんな異変の話もあるが頭を悩ませるような話は人間が原因の者もある。具体的にいえば公也の存在、公也の手による干渉によって起きた事案だろう。具体的にいえば皇国での公也の干渉である。


「他国のことに首を突っ込むとは……しかしまあ、向こうは特に問題視はしていないようだ」


 皇国での継承権争いに公也は首を突っ込んだ。しかし皇国からそのことに対してキアラートへの抗議は来ていない。直接的なものも、また含ませる言葉でも届いてはいない。皇国では公也が絡んだこと自体は問題視していない、そもそもあれはアリルフィーラの関与が直接的な影響であり公也はその手伝いとして駆り出されたというだけの話になる。結局のところあれはアリルフィーラの干渉であり皇国の内側の問題である。もちろん公也が手を貸していることにキアラートの関与を疑おうと思えばできるわけだが。

 しかしそれに関しての話は一切出ていない。皇国からは定期的な連絡として届く内容と主に次の皇位継承者、現在のメルキセド・ハーティアからディーレスト・フォルナート・アルハーティア皇位を継承させる予定であるというものであった。まあこれは皇位継承権争いが勃発しそれに決着がついたからこそ明確になりそれを各国へと決定事項として通達したという話だ。皇位継承者が決まったのは他国としても誰と手を結ぶのかはっきりして都合がいい。将来的な繋ぎの問題もあってかなり重要な話である。またフォルグレイス・ルハーティン・アルハーティアへの処罰に関しての話もまた同時に通達されていた。


「…………皇王の娘に関しての話は出ていない。アンデルク城からの連絡では確かに彼の娘がキアラートに来ているという話ではあるのだが。秘匿する事情があるのか……? いや、こちらとしては下手に我が国の貴族が関与したということを言われないのだからありがたくはあるのだが……」


 しかし二人の皇子に関しての話は伝達されているのにもう一人の関与の大きい娘の方、つまりはアリルフィーラのことだがそちらに関しての言及は一切なかった。皇国に伝手がありそちらでの情報を収集できる人間であればその情報も手に入れられるだろうというのにそのことに関しての一切の言及がないのはどういったことか。まあアリルフィーラが戻ってきたこと、アリルフィーラの皇位継承権争いへの関与はかなり限定的なものであり極めて短期間での間に行われたこと。アリルフィーラが見つかり皇国に戻ってきたということ自体は他の多くの者も知るところであるがその後のアリルフィーラへの扱い、処罰などの細かい話は実はあまり大きくは広まっていない。皇位継承権争いに参加したこともその場にいる者や皇宮にいるものくらいしか知らないだろう。竜の存在に関しては皇都にいる者なら見たかもしれないがそれに関しても知っている者はおそらく少ない。そもそも戦場に竜が来たことや公也が魔法使いとして戦場全体に関与したことなど、まともな考えの人間であればまずそれはあり得るようなことではないと判断する事柄である。

 仮にその情報が伝えられたとしてもどこからどこまでが真実なのか、仮にそれがすべて真実だと言ってどこまで信じられるか。自らの判断で情報の真偽を選んでしまう。だからこそアリルフィーラに関することは一切伝えない。そのほうが正確な情報が伝わりにくくなる。ある意味で皇国は伝えないことでアリルフィーラに関しての扱いを曖昧にしている。まあ現時点でも決まっていないところが多く、どう扱うべきかを考え話し合ってるからこそそのようなことにしているのだが。

 だがそれは何も知らない人間ならばの話。キアラートの国王ジームントはその件に関してある程度詳しい事情を知っている。なぜならジームントが情報を得たのはその件に関する詳しい内容を公也やアリルフィーラ、その出来事に直接参加した本人から話を聞いたクラムベルトからなのだから。クラムベルトは情報を伝える際に真偽の検証をせずに一切何を省くこともせずに情報の伝達を行っている。彼は公也がかなり出鱈目なものであることを知っているからこそだ。それに一応なんだかんだでクラムベルトは信用されている。情報を国の上の方に伝えるスパイ的な役目を持つが仕事にはまじめでしっかり取り組んでいるし元々公也の貴族としての様々な重要な仕事を担っている。ぶっちゃけ公也はかなり押し付けている立場だ。情報を伝えるといっても別に公也を貶めるためのものではなく、公也が何をしてどのようなことを行ったか、それによるキアラートへの影響はどうなるか、国を心配するという理由があってのものであり決して公也と敵対するためではない。公也もそれを理解しているからこそクラムベルトを通じての国への情報伝達を利用する。

 そもそも公也もクラムベルトを信用してはいるが本当に危険な情報に関しては伝えていない。公也もアリルフィーラと共謀しできるだけこれは伝えてはいけないだろうと考える情報は伝えないようにしている。わかりやすいものであればヴィローサの真実を話させる毒とかは伝えない。あれを知っているのは公也たちとアリルフィーラたちと皇国の上層部の一部の人間のみ。その情報は秘匿するべきものであるから。

 まあそんな感じにクラムベルトから情報を受け取っているキアラートの王はいったいどうするべきかと悩んでいる。


「……なんらかの罰は与えるべきだ。しかし公にできることではない」


 一応キアラートの貴族として存在する公也がよその国の出来事に関与した。それは大きな問題である。ゆえにその罰は与えるべきだ。しかしそれをどうやってやったらいいのか。流石にすぐにいい案は出ない様子である。



※主人公がかかわっている面が作中ではよく見えているだけで各国で色々な諸問題が起きている。この大陸に限った話ではなく別の大陸でもいろいろと問題があったりする。それが知られているか、解決されているか、現状も続いているか。あるいはそれが日常になっていて異常、問題とは思えない……ということもあるかもしれない。

※自国の貴族となっている人間が他国の問題に首を突っ込んだのだから王様としては心配になるだろう。公にはなっていないようで安心。

※ただし公にはなっていないがゆえに、主人公の勝手な行動を公に罰することで咎める、これ以降の勝手な行動の制限を課すなどが難しい。

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