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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
九章 皇国内戦
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38




 夜。なぜかアリルフィーラの部屋を訪れるということでフィリアからの呼び出しがあったのは夜である。別に何か特別意味があるわけではなくいろいろとやっている間に時間がたった結果だろう恐らく。


「……来たが、こんな遅めの時間でよかったのか? さすがに外も暗いし」

「別にいつでもよかったのですけど、色々とやることもあったので……私はこの時間でも問題はないのですが、キミヤ様はやはり何かお仕事とかあったりしますか?」

「いや、特に問題はないよ……それで内密の話とは?」


 そもそも公也を部屋に呼んだというのは内密の話があるからということだったわけである。そのためにフィリアに呼ばれ来たわけであるがいったい何の用事なのか……皆目見当がつかないと言うものでもないが可能性だけで見れば結構いろいろとあり得るということもあって聞くまでは何を話したいのかはわからない。

 さて、そんな公也の言葉にアリルフィーラは若干緊張した様子を見せる。話すこと自体は問題がない……彼女にとっては話すのはなかなかに勇気がいることであるが、ここに至った時点でそれなりに覚悟は決めている。


「…………すう、はあ」


 息を吸い、吐く。深呼吸を行い気持ちを落ち着かせる。


「その…………キミヤ様……………………」

「………………」


 互いに相手に向き合う。


「私はキミヤ様を……お慕いしています」

「………………」


 無言。公也としてはアリルフィーラのその言葉にどう返せばいいかはわからない。公也自身の心としてはまあまあアリルフィーラに対してのものは決まっている。ただ、立場上の問題とか国柄の問題とか色々複雑な事情がある上に公也自身がそういった方面の事柄が苦手なこともある。少なくともまず公也自身からそういった方面で攻めの方針で事を起こすことがない。仮に行うのであればそれは己の暴食の本分に従い貪るように飲み込む、そういうものである。ただその手の方面は暴食ともまた違う性質であり公也の嫌悪する方面のものでもあり、結局のところ手が出ない。極めて奥手と言える……精神方面では。


「…………その、キミヤ様は……」

「…………はっきり言うと、俺はリルフィのことは…………………………その、好きだと思う。恋愛的な意味合いで」


 その言葉でアリルフィーラの表情はぱあっと明るくなる。まあ想っている相手に自分のことを想っていると言われるのは嬉しいだろう。


「ただ、リルフィは自国での立場もあるだろう? 俺もキアラートの貴族だし立場的に……ちょっと単純には話ができないというか」

「……そうですね。確かに立場的な問題はありますけど…………今の私にはあまり関係はありません」


 アリルフィーラの立場は皇族の娘。末娘であるとはいえ立場上は国の王族、最高位の人間の一族である。普通はまず手を出せないわけであるが……今現在のアリルフィーラの立場においてはただの一般人に等しい立場であると言える。まあそれでもあくまで一時的な立場の取り上げであり安易に手を出せるわけではない。


「でも流石に手は出せないぞ……?」

「……………………そう、ですね」


 アリルフィーラもそのあたりの事情は分かる。自分の立場の取り上げはあくまで一時的なものにすぎないということは理解している。もしかしたら将来的に本当に皇族から外れる可能性はあるし、仮に皇族に戻るとしても公也相手ならば婚姻は不可能ではない。立場を取り上げられた傷物の皇族の娘として他所の国の貴族……末席と言ってもいい低い立場にある公也の所にキアラートとの友好の形として嫁ぐということも…………何か筋は違うが不可能とは言えないかもしれない。まあそのあたりのことに関しては皇王あたりが何かを考えている可能性はあるだろう。


「私もいきなり本気でキミヤ様と、ということは考えていません。私の立場がどうなるかはわかりませんが、想いだけは伝えておきたい、そう思って来ていただきました」

「そうか…………」

「ダメそうならその時はその時でこちらでも手段を考えます。キミヤ様なら……頼れば何とかしてくれそうですし」

「………………まあ、何かあればな。無理にそうするつもりはないから」

「はい」


 いざというときはアリルフィーラは公也に頼むだろう。以前のように自分を匿ってくれ、と言った感じに。公也は基本的に身内に甘い。自分の主義、目的、理由、何か理由さえあれば倫理的常識的にダメなことでも気にすることなく行う。アリルフィーラを守るために必要なら他のすべてを敵に回す可能性もありえなくはない。とはいえ基本的には無理はしない。必要ならするが別に必要がないのならばしない。それこそ本気でそれ以外に手段がないというのならばともかく、現状、そして将来的に解決策が他にもあるかもしれないのなら無理なことはしないのである。


「それで……それだけか?」

「それだけ、と言うのは少しひどくありません?」

「……まあ、確かにそれだけって言うのはちょっと悪いとは思うけど」


 女の子の精一杯の告白をそれだけ、で済ませるのはどうなのか。しかしそれを行うのにわざわざ二人きりの機会を作り、自分のメイドを使い呼び出した。それもわざわざ夜に。もしこれでアリルフィーラが公也が手を出しても全く問題のない相手だったのならそのままヴィローサやペティエットとの間にあったような展開になってもおかしくはない。流石にアリルフィーラはそこまであっさり公也と関係を持つことはないだろうが……それでも本人としてはそれくらいの深い仲を望むところだろう。


「実は……頼みたいことがあったんです。私の想いを伝えることとはまた別に」

「…………なんだ?」


 今回のアリルフィーラの呼び出しは告白も目的ではあったがそれとは別の目的もあった。


「…………キミヤ様」


 アリルフィーラは真剣な表情で公也を見つめる。先ほどの告白以上にそれは真剣なものに見える。


「私を殴ってください」

「………………………………………………はい?」


 とても真剣な表情の彼女の口から出たのは、明らかにその表情とは不釣り合いな、この場においてなぜそんな言葉が出てくるのかと思わざるを得ない言葉であった。


※告白。アリルフィーラと主人公は一応両思いと言う感じ。

※突然自分を殴れと言われても困る。っていうか場面的にもうちょっと……何か言うべきことは別だと思うが、いや、そもそもなぜに自分を殴れと言うのか。

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