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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
九章 皇国内戦
272/1638

27


「ルウーッ!」

「…………こ、これが竜……!?」

「さすがの威圧感です……」

「…………皇都に残っている兵で倒しきることは無理ではないでしょうか?」


 皇宮に下りてきた竜。巨大と言っても大きさとしてはそこまで極端に大きいわけではない。メルシーネの場合大きさはある程度は可変であるため特に何かを壊して無理に下りるということもなく普通に庭あたりに下りてきた。その姿を見てメイド三姉妹はその威に恐れを抱く……一番恐怖しているのは長女のフェリア、脅威と判断しているのはフィリアだろう。実際メルシーネが一体皇都を襲うだけで状況は一気に変わることだろう。まあそんなことはしない。


「メル」

「ル…………っと、ご主人様到着したのです」

「ひ、人になった!?」

「竜は人になれるんですか?」

「…………角があるので普通の人間でないのはすぐにわかりますね」


 そして人の姿になる。人の姿になっても竜の特徴はいくつか残る。特に角はほぼ隠しようのない感じだ。眼や鱗の類、羽辺りはまだ隠せても頭にある角はどうしても残る。まあ角だけが残ったところで飾りだと言い張ってあくまで頭に付けているだけだということにすることもできなくはない。そして竜の時は感じていた威圧感も今のメルシーネの状態ではほとんど感じないだろう。とはいえその驚異が消えたわけではない。できる攻撃手段、移動手段、戦闘手法が変わるだけで強さとしてはさほど変わらない。まあ戦闘手段、使える能力、性質が違うこともあって戦いにおける有用性は大きく違いそうであるが。


「お久しぶりですメルさん」

「久しぶりなのですリルフィ」

「……アリルフィーラ様を愛称で呼ぶなど!」

「こっちでは皆リルフィはリルフィと呼んでいたのですよ。別にリルフィも身内だけにそう呼ばせていたわけではないと聞いているのです。暗殺されるところだった襲われる機会の時リルフィは民に施す外回り中だったのです。その外回りで民に愛称で呼ばせているのは知っているのです。お前はその全てにリルフィのことをリルフィと呼ぶなんて許さない、とでもいうのです?」

「……っ」

「まあわたしには関係のないことなのです。わたしは別にリルフィのことはどうでもいいのです。ご主人様に呼ばれてきて仕事をするだけなのですよ」

「この服どうなっているんですか?」

「和ゴスに興味があるのです?」

「わごす……って言うんですか? いえ、見たこともない服装ですので」

「和服着ているのならうちに一人いるのです……本質的にはあちらを参考にするべきなのです。でも一応これ自体も参考になるのです? まあそういう話は後にするのです。本来の用件のほうが先なのですよ」


 基本的にアリルフィーラに関わる相手に噛みつくような反応をするフェリア、メルシーネの着ている服のほうに興味を見せているフェリエをさらっと相手しつつ、メルシーネは公也の方に話を振る。


「ご主人様。結局呼ばれてきたはいいですけどわたしは何をするのです?」

「メルの仕事はアリルフィーラと俺とヴィローサの戦場への運搬、そして戦場で俺の代わりにアリルフィーラの護衛、示威戦力として見せつける、そんな感じだな」

「わかったのです。とりあえず戦場に行って竜の咆哮を浴びせるくらいでいいのですね。戦った方がいいのです?」

「死者は減らすのがアリルフィーラの意向だから基本的には自己以外での殺しは無しの方向で」

「了解なのです」


 さすがに全く殺すなというのは可能性として難しい面があるのでそこまでは言わない。


「なら今すぐ行くのです?」

「さすがに今すぐは…………行けるのか?」

「えっと……」

「時間を考慮してください。今から内戦が行われている場に出向くのは時間が問題になります」

「…………確かに今から行くとなると夜になるか? 少なくとも早くても夕方くらいか」


 メルシーネの移動速度をもってしてもアンデルク城から皇国の皇都までは結構な距離があるため時間がかかる。空で障害物がないにしてもメルシーネも出せる航行速度は限度があるだろう。まあそれでも僅か数時間程度でアンデルク城から皇都まで来られるという時点でその移動速度は極めて脅威と言えるのだが。そしてメルシーネが来るまでの時間もあり、またメルシーネに乗って内戦中の現場に出向くにしてもやはり移動時間は結構かかるだろう。現在の時間から移動するとしたら恐らくは早くて夕方である。流石に夜中に皇子二人が戦っているとも思えない。一応の小規模な争いは兵士同士の争いなどではなく斥候を送ったり破壊工作などあったりもすると思われるが大々的に皇子二人が出向いての戦いではないだろう。そんな状態のところにわざわざ言ってもあまり得はない。

 そもそもアリルフィーラがすべきことは自身の暗殺に関しての事柄を明確に知らしめてそれを行った皇子の人望を落とすこと。皇子、皇王になるの相応しくないことを示し継承権争いの場から引きずり落とす。そして継承権争いの場に残る者が一人になることで自然と継承権争いは終了する、そういう形である。そのために目にわかる戦力としてメルシーネがいる。また今回証拠の提示はできない。相手の自白で自爆させるつもりであることからヴィローサの存在が重要になる。いくらヴィローサでも夜は動きにくい。隠れて移動するにしても昼間の明るい時間でなければ指定された用事を達成できないかもしれない。そういうことで動くならば昼間……できれば全員が集まっているような時間がいい。それも戦闘中ではない、できれば戦闘開始直前辺りに乱入できるのが一番か。戦闘中では止まってくれるかもわからないゆえに。


「出向くのであれば戦闘が始まる前がいいでしょう。それも戦闘前のお互いに相対している状態の時が」

「……そこまで都合よくはいかないかもしれないが、考慮する。だがまあ乱入するなら確かにその時がいいんだろう」

「でも出向いたところで止まってくれますか? 兵士たちが向かい合っている状態と言っても全体に声を届けるのは大変じゃないですか?」

「ああ、そこは俺が魔法でアリルフィーラの声を届けるつもりだ」

「ところで……その竜に乗って戦場に出向くようですが他に誰もいないのですか?」

「俺とメル、ヴィラもいる以上はそこまで兵員はいらない。そもそもいないんだろう? 連れて行くのも難しいしいないほうが楽だけど」

「あ……」

「ちょっと待ってください。アリルフィーラ様を連れてキミヤ様とヴィローサ様、それとこの竜……で行くのですか?」

「メルシーネなのです。メルと気軽に呼べばいいのです。まあ話を聞く限りだとそうなるのではにないのです? そこらの有象無象を連れて行っても邪魔になるだけなのです。ご主人様さえいれば守りは元々十分なのですよ」

「……不安ですね」


 一応いろいろと話は居ているがやはりアリルフィーラをこの少人数で戦場に向かわせるというのは不安が残るだろう。公也の強さもヴィローサの能力もメルシーネの迫力もわかっているにしても、それでもやはり数の不安は残るだろう。とはいえそんなことを言っても兵士がいない以上はこういう形になるしかないわけである。


「まあ、細かい話は内でしよう。あまりここにいても目立つだけだし」

「メルがこんな場所に下りてきたらそうなるわね」

「……まあ仕方ないのです。一般人の反応なんてそんなものなのです」


 メルシーネが皇宮に下りてきた、というのはかなり目立つことだろう。そのせいで若干皇宮にいる人間の視線がメルシーネに向けられている。さすがにちょっと居心地が悪い感じなので建物の内、アリルフィーラの部屋で打ち合わせや予定のすり合わせと言ったところだ。準備はある程度できているがやはりそれでも実際に行く時に準備するもの、用意するものも持っておかなければいけない。まあほとんど公也に持たせる形になるだろう。空間魔法は便利なのである。


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