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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
一章 妖精憑き
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 冒険者の依頼をこなしつつ、修行する時間も交えながら公也とヴィローサ、そしてフーマルは依頼を順調にこなしていく。冒険者歴ではフーマルは公也たちよりも長いが、しかしそれもせいぜい長くて半年くらい、実働で考えればもっと少ないだろう。そして冒険者として受けた仕事、その内容や頻度、仕事の評価の違いもあり冒険者としてのランクにおける評価も変わってくる。総合的に見ればフーマルは公也よりも少し上にいるくらいであり、その程度ならばすぐに公也の方がフーマルを追い越していく可能性が高い。もっとも今はフーマルが公也のパーティーに入った形になっているため、それほど大きな差は出来ないかもしれない。

 ランク的な立場としては、フーマルが公也のパーティーに入っているため公也のランクを中心に考えることになる。とはいっても、全員の冒険者ランク自体にはほぼ差がない状況ということでそれほど大きな問題もないだろう。そもそも、パーティーとしてはランクよりも能力で総合的に見たほうがいいため、魔法使いとして高い能力を持つ公也と妖精であるヴィローサがいる公也のパーティーは結構な実力を持つと考えられる。むしろフーマルは明らかにその二人よりも下と考えられるだろう。そういった視点はランクからでは見えない。

 さて、そんな話はともかく、冒険者としての仕事を公也たちは今日もする。一応休み自体はとっている。公也やヴィローサと違い、フーマルはどうしても冒険者としての仕事をするうえで休みがいる。これは体力的な問題、精神的な疲労の問題になる。能力が高く自分の強みを理解する公也とヴィローサはそもそも体力的にも毎日冒険者としての仕事をしても問題はない。危険も公也はその能力の強さゆえに、ヴィローサは公也への絶対の信頼があるゆえにほぼないと考えているため精神的な疲れもない。しかし、そんなことはわからないフーマルは二人についていくだけでかなり苦労するくらいである。それゆえに二人に休みを申し出るときもある。これに関してはヴィローサも公也も認めている。ヴィローサは公也と休日に一緒に過ごせるから、公也は休みの日に街を見て回ることができるだろうという考えから、両者ともに利があるゆえに休日の導入を受け入れた。まあ、そこは本題ではない。いつも通りを仕事をしながら修行……ではなく、今回はフーマルが公也の使う魔法に疑問を持った。


「師匠の魔法ってなんか普通の魔法と違うっすね?」

「……普通の魔法と違うっていうのはどういうことだ?」

「いや、普通の魔法はこう、魔法の名前を呼んでいるじゃないっすか。師匠のは魔法の名前呼ばないっすよね? それに毎回言ってる言葉が違うような……」

「ああ……俺は普通の今の魔法使いが使うような教えられている魔法を使ってないからな」


 この世界において一般的な魔法使いが使う魔法は師匠に教えられた魔法というものが多い。そして師たる魔法使いが使う魔法もまた同じように師匠から教えられたもの、そして魔法使いという存在がある程度広まった結果、多くの魔法使いは同じような魔法を使っていくようになり、最終的には魔法が体系的なものとなった。それにより生まれたのが定型の詠唱である。


「普通の魔法が魔法名を使うのはそれも詠唱の一部だからだな。ファイアーボール、と言ったら球状の炎の球をイメージしやすい。その前の詠唱も含め、まとめて詠唱として覚え使うようになれば楽に使えるようになる。それに、魔法名がある魔法ならその魔法を聞くだけである程度形をイメージするからそれだけでも十分発動しやすくなる。他の人間もその魔法名の魔法に対するイメージが固定されるから集合意識のおかげで変換効率もよくなるだろうし……」

「…………?」

「キイ様、フーマルに言ってもわからないと思う」

「……まあ、要は魔法名がある魔法は使いやすくて覚えやすいからみんな使ってる、ってことだな」

「そうなんですか」


 フーマルは納得する。フーマルは魔法に関する知識があるわけでもないのであまりその手のことはよくわからない。なお、ヴィローサも詳しく理解しているわけではないが、ある程度魔法に関する見分はある。これはヴィローサが妖精としてその手の知識に触れているというわけではなく、単純に公也の発言を全て聞いているから自然と魔法に関しての知識が流入しているからというだけである。ただ、公也はあまりヴィローサに魔法関連のことを話すわけではないため、確認のように独り言で話している内容を聞いたりして覚えるくらいなのだが。


「あれ? でもならなんで師匠は使わないっすか?」

「詠唱が同じ魔法なら魔法は基本的に同じ内容になる。変換効率は変わらないわけだし……まあ、普通に魔法を使う分に毎回同じ魔法なのは逆に都合がいいかもしれない。魔法の威力とか、どういう魔法なのかがわかっているわけだからな。代わりに使える時と使えない時がはっきりして、使えないときは全く使えないわけだ。だが、詠唱を自由にすれば魔法の効果も変えられる。威力も変わるからその時その時で好きに魔法を使える。ただし自由な魔法が使える分詠唱を考えなければいけなかったり、そもそも使う魔法自体をしっかりイメージできなければいけないだろうけど……魔力の消費量の問題も出てくるだろうし」

「はあ…………」

「……俺は自分の使いたい魔法を好きに作って使えるから皆の使うような魔法を使わずオリジナルの魔法を使えるんだ」

「そうなんですか」


 フーマルにもわかりやすく言う公也。まあ、フーマルは魔法使いではないので知ったところであまり意味はないだろう。公也が優秀な魔法使いで、自由に魔法を使うことができると思っていればそれでいいだろう。


「まあ、フーマルはあまり魔法のことを考えなくてもいいと思うが」

「そうっすね……っていうか、魔法以前に剣でも勝てない状況なんですけど」

「キイ様に勝てるわけないじゃない。年季の差なんてキイ様ならすぐに埋められるわ」

「……覚えることに貪欲なだけだ」


 正確には、知識を得ることに貪欲、だ。結局のところそれを覚え活用しているという点では同じようなものだが。


「さ、そろそろ仕事も終わらせるぞ」

「あ、休憩終わりっすか」

「はあ……仕事をしているキイ様もいいけど、こうしてゆっくりしているほうが私は好きだわ。でもわざわざフーマルのために休憩時間を作らなくてもいいんじゃないかしら?」

「ええ!? 酷くないっすか!?」

「別についてこなくてもいいが、置いてったら死にそうだし。流石に死なれると気分悪いからな」

「それも酷くないっすか!?」


 公也のパーティーにおいて、フーマルは弄られ役のようだ。

 と、そんな感じで公也たちは依頼を終えてロップヘブンへと戻っていった。彼らの仕事は休みを挟んだからか、終わってから戻って来て、街に着くころには少し暗くなった時間となった。普段も街へ戻ってくる時間はその時々で変わるが、基本は早めにしている。彼らにはいろいろと抱えている問題……主に、妖精のヴィローサという存在がいるから早めに帰ったほうが騒動に巻き込まれにくい。

 もっともこの日はそうはいかず……そして騒動は向こうからやってくるものとなっているため、回避することもできない。


※ヴィローサは体力的には一般妖精と変わらない。飛行、安心、信頼など多くの要因もありフーマルのような獣人よりも体力を使わないでいられるため休息を必要とする体力消費奈ならない。戦闘にも参加しないし参加するにしても特殊能力がメインであるのも一因である。

※一般的によく使われるのは詠唱+呪文の組み合わせ。杖、魔法陣を使用することもある。魔法は体系化した物があり効率的にもそちらが使われている。それ以外を使わなくなっているところも多い。

※呪文一つで魔法は発動できる。ただしそれは一般的に広まっているものであれば。オリジナルの魔法は呪文より詠唱の方が重要。

※フーマルは別にそこまで馬鹿ではないが文字数が多いので許容限界に達して理解しきれない。

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