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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
九章 皇国内戦
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「……ダメだった。それほど大した情報は得られなかったな」


 裏の組織に殴り込みをかけた公也はかつてアリルフィーラの暗殺を行った組織の構成員の生き残りの情報を得る。そしてその構成員を探し暴食の力で食らう。情報収集の手段として暴食はその存在の持つ知識を全て得ることができる、本人が覚えていなくとも記憶や知識に残る情報も得られるためきわめて強力な情報収集手段である。しかしその情報収集手段を用いても公也はアリルフィーラの暗殺に関してこれといって重要な事実につながる情報は得られていない。

 根本的な問題だ。そもそも組織の構成員で重要な情報を抱えている者は暗殺に向かっていたということがある。またそれに限らずアリルフィーラの暗殺を持ち掛けた人間に関してもそれほど彼らは知らなかった。まあ皇女暗殺を目論むという時点でその内容はかなりの秘事である。それを犯罪組織に持ち掛けるということ自体リスクは大きいのである。まずそれを持ち掛けようと考えた皇族本人が犯罪組織に来るわけではない。一人では来ないし護衛がいたとしても本人が来ることはない。来るとするのならばその関係者であるだろう。そして正体だって隠す。そんな人物が来たという情報があったとしても、その人物がだれであるか、どことつながりがあるかはわからない。


「根本的に立ち返って考えてみよう。そもそもアリルフィーラの暗殺を行う理由はなんだ? それにより何の得がある? 理由がなければアリルフィーラの暗殺を行おうとはしない」


 アリルフィーラの暗殺。そもそもこの時点であまり理解ができない。なぜ皇子が皇女を暗殺する必要があるのか? それもアリルフィーラは皇位継承権では最低位である。殺したところで皇位継承権には何ら影響がない。まあ彼女の立ち位置、民衆との接点において派閥の貴族ではなく民を味方にできる可能性もあるという点から相手の派閥に加えたくないという理由で殺すということはありえなくもない。しかしそれだけで殺すものか、という疑問もある。


「……今回の内戦、それがアリルフィーラの暗殺……まあ俺が連れて行った結果いなくなったことがきっかけ、いやそうでもないのか? そもそも……なぜ内戦がおこったか。継承権はどういう形で扱われている? 二人の皇子の争い、第一皇子、第二皇子……アリルフィーラが暗殺されていた場合、仮にそうなっていた場合、皇族関係で何が起きた? アリルフィーラが暗殺されたという事実がどう影響したか……ふむ……」


 内戦が起きたのはアリルフィーラがいなくなったことがきっかけ……そもそもこれが事実かどうかは曖昧だ。いや、そもそもなぜ継承権争いは起きるのか。継承権第一位は第一皇子であり、第二位が第二皇子である。通常継承権は高いほうが優先される。第一皇子が皇王になるものだろう。しかしそうはならず、継承権争いで誰が皇王になるかを争っている。それはなぜか? もともとそうして誰が皇王になるかを決めている……という可能性もあるが、特に異論がなければ順調に継承権が高い者が座る可能性もある。そういう決まりでもおかしくはない……可能性ばかりを論じても仕方のないことだが、そういう場合どうして内戦が起きたかと言えば、継承権が下の者の反発があったということになる。

 そもそもアリルフィーラの暗殺を目論んだは皇族の関係である、というのも明らかに情報を漏らし過ぎではないだろうか。裏の組織にそれとわかる情報を与えるものだろうか。隠しきれなかったという可能性はないでもないが、仮にそれがわざとだったとすれば? アリルフィーラを暗殺したのは皇族の誰かである、そういった事実を基に例えば継承権が下の人間が継承権が上の人間を追い落とすために罪を擦り付ける……そんな可能性もあり得るのではないか?


「………………いや、流石にこれは思い込みが激しいと思うべきか。可能性はあるかも、と言ったところかもしれない。だがそうだと思い込んで考えるのはよくないな」


 公也の考えていることはあくまで推測にすぎない。


「……暗殺云々も重要かもしれないが今回の内戦の事情も詳しく聞いた方がいいだろう。最初のきっかけはいったい何なのか、という点から。そういえば暗殺も何を証拠としてあげればいいのか……犯罪者側の証言? 信じられないしもう生き残りもいない……暴食を使って全部食ったのはちょっと早計だったか? 彼らの証言が信じられるものであるとは思えないが……」


 仮にアリルフィーラの暗殺を行おうとした犯罪組織の一員が残っていたとして、彼らの暗殺を持ち掛けた人物に関する証言があったとしても。それを素直に信じると限らないし仮に信じるに値する情報だとしてもそれを受け入れられるかは怪しい。人間の記憶である以上勘違いはあるし魔法による幻影の可能性もないとは言わない。そもそも彼らに与えられた情報が真実であるとも限らない。果たして彼らに暗殺を持ち掛けたのは本当に皇族の関係者だったのか。そう見せかけた誰かの手によるものだったのではないか?

 あらゆる可能性がある。まああらゆる可能性を考えたら正直言ってきりがない。


「…………一番いいのは本人に自白させることか」


 皇子本人がアリルフィーラの暗殺を目論んだ、その事実を言い放つことが一番公也には都合がいい。もちろんそれは嘘であってはならない。それは明確に真実である必要がある。そのための証拠集めを今やっているのだが、それはあまりうまくいっていない。証拠無しでも自白で力を削ぐことはできそうな気もするが、少々それはどうなのかとも思うところでもある。


「高い魔法技能、高威力の魔法使用が可能、特殊な能力を持ち情報収集もかなり容易にできる、そんな人間でも何でもできるわけではない……割と調子に乗ってたかな。まあだからなんだって話か。アリルフィーラの助けをするって決めている以上俺はそのために動くだけだ」


 公也はどういう形であってもアリルフィーラの助けをする。今回はそのつもりで動いている。


「………………とりあえず皇宮へ戻るか」


 話を聞くという目的のためもあって皇宮に戻ろうとする公也。特にやることもないがゆったり急がず周りのことも気にする様子もなく、油断しているかのように歩く。今回の内戦において公也の存在、アリルフィーラの存在はかなり特殊。そもそも二人の参戦に関しては今回の内戦を起こした側からすると予想外である。仮にアリルフィーラの暗殺を目論んだ人間がいたとするなら、その人間がいざというときのためにアリルフィーラが戻ってきた時暗殺するように言っていたとするならば。それに伴ってついてきた公也もまた同様に考えてもおかしくない。そもそも今更証拠を上げてそれを突き付け力を削ごうと考えている公也を疎ましいと思わない理由がない。


「………………!」

「ぐっ!?」


 皇宮という暗殺者の動きにくい場所ではなく、裏路地、裏組織のアジトのある周辺地域、そんな誰が殺されてもおかしくない場所、そんな場所を歩いている公也は明らかに恰好の暗殺の標的となる。そんな公也に暗殺者が襲い掛かる。的確に背中から心臓を突き刺す、そんな一撃を叩き込む。


「…………!?」

「痛いな」


 もっとも背中から心臓に短刀を突き刺された公也であるが……その突き刺された状態で後ろにいた公也を暗殺したと完全に油断していた暗殺者を掴む。当然その状態になった時点で暗殺者に逃げ道はない。公也の力は人間離れしており通常の人間では掴まれた状態から離れることは不可能。つまり完全に捕まった状態なのである。


「さて、いいところにちょうどいい情報源が来たな」

「お、お前いったい……!」


 心臓を貫かれているのに死ぬことなく自分を掴み拘束している公也に少し怯えた様子をする暗殺者。まあある意味仕方がない。本当ならば死んでいるはずなのに死んでいない公也は異常である。しかし少なくとも何かの情報を持っているだろう暗殺者を掴まえることができた。その暗殺者相手に公也は情報を得るつもりである。


※残っていたのはあまり真実を知らない末端寄りの人員だろうし昔の話だからどこまで覚えているか。

※こういう世界において証拠はどこまで証拠として機能するだろう。でっち上げと言われて果たして否定できるだろうか。証言も無理やり言わせた、でっちあげ、信用ができないなどと言われた場合どう対処したものだろう。少なくとも社会的信頼は皇子とかの方が上だし。秘書が勝手にやったことだとか言われるとそれはそれで困るかもしれない……

※溶岩に落とされても死なない主人公。心臓を刺された程度じゃ死なない。刺した本人は死ぬほど驚いたんじゃなかろうか。

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