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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
九章 皇国内戦
265/1638

20



「て、てめえっ! なんのよおぼおっ!?」

「おい! お前ら来い! カチコミだっ!」

「うおおおおおおおっ!!」


 皇都に存在する裏の組織の一つ……公也の知識にある限りでも最も驚異的である最大級の組織の一つ、その本拠に公也が殴り込みをかける。正直言えば公也の場合そういった騒動にせずとも暴食を使うなり何かの手段でお金を稼ぎ金で情報を買う、取引を行うということもできなくはない。ただ今回は前者は一応相手が裏組織のトップクラス、結構重要な立ち位置であったということや時間が足りないためお金を稼ぐのに手間暇かけるわけにもいかないという理由もあって殴り込みをかけて無理やり話を聞きだすという手法になったわけである。

 本心としては多少もう少し穏便に済ませてもいいのではと公也自身思っているが、やはり結局そんな余裕がないため早急に事を済ませるということで殴り込みなのである。実力を見せつけ敵対しない、抵抗しないようにする意味合いもある。最悪の場合暴食を使うことも考慮しているというのも理由だろう。相手が教えてくれる情報が正しいとは限らないし、そもそも隠したり嘘をつく可能性もないわけではないのだから。


「ぐべっ!」

「くそっ、なんだこいつ!」

「……大人しくしてくれるとありがたいんだが?」

「何言ってやがる! カチコミ掛けてきたのてめーの方じゃねえか!?」

「まあ、特に断りもなくアポイントメントもなく入ってきたのは俺なんだけどさ。強引だし力に任せて要求をのませようとしているのは事実だしな。だが、別に俺としてはそっちに被害を出したいわけでもない」

「なら何しに来たっていうんだ!?」

「情報収集。ここの偉いさんと話をしたい」

「………………」

「それで殴り込みだと? ふざけてんじゃねえぞ!」

「別にふざけてはいない。裏との繋がりもないしお金もない、だから無理やり聞き出すしかないかな、とそういうことで力押しということだ」

「それをふざけてるっていうんだよ!!」


 このことに関しての言い分は相手のほうが正しいと言わざるを得ない。お金もないし相手とのコネもない、そんな状況でいきなり相手組織のトップと話したいといったとして普通は受け入れられない。ましてや相手は裏の組織。取引をしたいならば基本的にはお金によるものだ。さらに言えば端金ではなく結構な高額での取引。それを踏み倒して情報だけもらっていこうというのは納得する方がおかしい。

 しかしそんな乱暴なやり方で情報収集しようと侵入してきた公也に組織の構成員たちは一殴りで吹き飛ばされダウンする。殺さないように手加減はしているが運が悪ければ死んでいるだろうくらいの吹っ飛び方である。さらに言えばこのまま戦闘が続けば騒動も広まりかねない。場合によっては組織の権威も下がる。たった一人に殴り込みにはいられ一方的にやられるというのは人聞きが悪いと言わざるを得ない。

 構成員たちは何人か倒され迂闊に攻めることのできないと気づき公也相手にどうすればいいかとまごついた様子になる。人数差で押そうにもあっさりやられている。簡単に倒せる相手ではないのがわかるし、その見た目、細腕にどれほどの力があるのかあっさり吹き飛ばされている。その力もまた恐ろしい。見た目通りではないし、彼らにはわからないがそれで手加減されているのだ。暴食というか隠し玉もあるし状況は確実に劣勢である。


「……おい。てめえ、うちの頭に用事があるんだって?」

「班長!?」


 そんな風に構成員たちが戸惑っている間に、彼らの中におけるリーダー格、幹部とまで行くかはわからないが一つか二つは上の人間が公也と話し合いをしようとでてくる。いや、話し合いをすると言うよりは彼は伝言役、連絡役といっていいだろう。


「そうだ。話を聞きたい……というよりは情報が欲しい、そんなところだ」

「チッ。そんな理由でカチコんでくるとかこっちにゃ迷惑だ。だがこのまま続けても埒が明かねえ。お前さんに落とし前をつけさせることができるとも限らん。だから頭はお前と話をするとおっしゃっている。おい、お前らもこれ以上手を出すんじゃねえぞ」

「ええっ!?」

「で、でも班長」

「そこにいるやつらも死んじゃいねえだろ? とっとと片付けろ。てめえもこれ以上何かやらかすんじゃねえぞ」

「かまわない。だが一方的にやられるつもりもない。さらに手加減はするが、場合によっては同じようにする」

「俺が言ってきかねえ奴にはしかたねえ。じゃあ来やがれ。こっちだ」


 そうして班長と呼ばれた人間に案内され公也は組織のトップである人間と面会することになった。







「よう。人の家にカチコんでくるとか度胸あんじゃねえか? お? 死ぬか?」

「そういう挨拶はいい。俺が欲しいのは情報だ。それともヤるきか? それならそれでもいいが」


 最上位の裏組織のトップ……話が早い、というのはいいことだが結構結果っ早い所もあるようである。まあ彼らのような立場の人間は舐められるということ自体が致命傷になりかねないため対応としてそのように相手に出なければいけない、強気で話にはいらなければいけないということもあるのかもしれない。もっともそういった事情は公也にとってはどうでもいい。公也も相手のことを考えることができないわけではないが今回は社会の裏側、悪の道にある相手。その悪行、罪の存在を考えれば別に容赦なく叩き潰してもいいと思っている。裏社会の秩序の問題もあってそこまで過剰な攻撃はできないとも考えてはいる。最悪そういったことになっても仕方ないとも思っているが。


「…………チッ。ああ、くそ、なんでてめえみたいなヤバイやつに目をつけられたんだか」

「俺の知識にある一番の裏の組織があんたの所だったからだ」

「はっ。それは嬉しいねえ」


 欠片も嬉しそうには見えない表情でそう言う男性。まあ目を付けられ殴り込みをかけられたとはいえ、それが最大の組織だからという理由なら多少は嬉しい気持ちがないわけでもない。そのかわりに公也のような化け物が自分のところが来たというのならば迷惑でしかないが。


「それで。てめえは俺のところに何の用できた?」

「情報が欲しい」

「それなら下の奴に金で交渉するのが筋ってもんだ。情報収集だってタダじゃねえし時間もかかる。俺らみてえなやつ相手に面倒ごとを起こすよりも金で解決するのが手っ取り早いってもんだぜ?」

「時間に余裕があればそれでもいいさ。金も稼いで叩きつけるくらいは何でもないしな。急ぎなんで知っているだろう人間を求めてあんたに会いに来た。そういうことだ」

「…………はっ。ふざけた話だぜ。これが通常時なら大金稼げるチャンスだったかもと思うともったいねえ。まあしかたねえ。で、欲しい情報っていうのはなんだ? 内容を言え。そして聞いたならとっとと出ていきな。てめえみたいなやつがいると迷惑ってもんだ」


 彼としては公也相手に対処しようにも、明らかに油断ならない、直勘的に勝ち目のない相手だと判断してしまっている。そもそも一人で裏の組織に殴り込みをかけるような人間がまともであるわけがない。そんな人間相手に交渉やら何やらをするよりも、必要なものだけを与えとっととどこかに行ってもらうのが一番。ある意味では災害のようなものだ。耐え凌ぎ過ぎ去るのを待つ、そういう相手である。


「アリルフィーラ・ラメンティア・エルハーティアの暗殺」

「………………」

「それに関わった組織はほぼ潰れている。構成員の大半は戻ってきていないからな」

「……それで?」

「だがまだ生き残りは少しながらいた。そいつらの行方を知っているのなら教えてほしい」

「…………………………」


 彼はそのことに関して厳密に知っているわけではない。ただアリルフィーラがいなくなったという事実、それとほぼ同時期に解散した裏の組織の存在、そして今の公也の話からそれらの関係性に関して結びつき、公也の求める答えについて思い当たるところがある。


「………………」


 問題はそのことに関して目の前の相手に教えるべきか? 黙っていればそのネタを別のことに利用できる。そう思わなくもないものである。しかし公也はそのように考える彼の行動を許すようなことはしない。


「知っているんだな?」

「………………」

「それなら別に話さなくてもいい。お前が話さずともお前から情報を得る手段はある。組織ごと潰して、お前から情報を得るという形でも俺は構わないが」

「…………っ」


 目の前の相手はそれを本気で言っている。それを理解できない彼ではなかった。ゆえに、彼は公也に情報を話す。彼の知る限りの彼の組織の生き残りに関してを。




 その情報を公也は得て、公也はその組織を去るのであった。


※ちょっと主人公のやり口は強引すぎるのでは? でもお金も時間もないから仕方ないかも?

※<暴食>を使ってないし人死にを可能な限り出さないようにしているあたり穏便と言えば穏便な方なのかもしれない。

※主人公の考えとして裏組織、犯罪者と言ってもいい相手だから別に組織ごと全部ぶっ潰してもいいよね、程度に思っている。一応裏組織は闇社会の秩序を担うこともあるのであまりやりすぎるのはどうかなあ、ついでに他国でのことなので穏便にやろうとした結果がこれ。穏便……?

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