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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
九章 皇国内戦
263/1638

18



「キミヤ様」

「……さっきは勝手に話を進めて悪かったな」

「…………いいえ。あの場で私がお父様を説得するのはおそらくできなかったと思います。私の意思を考慮したうえでお父様相手に通用する案を通してくれたことを私は感謝したいと思っています」


 アリルフィーラは皇王相手に自分の意思を通した意見を通用させられるとは思えなかった。実際アリルフィーラでは皇王が納得できるような対案は思い浮かばず自分の感情を優先した内容になっただろう。そういう意味では公也が自分の意思を汲んで意見を通してくれたのは嬉しく思っている。しかし、それとこれとでは話が違う。彼女の意思は通しても彼女の望み通りではない。そういう点では不満がある。また先ほどの場における話し合いは完全に皇王と公也の話し合いとなっていた。アリルフィーラははかなり無視された形になっている。そこに納得がいかない、不満があるという話になる。


「ですが、完全に私の意見は考慮されていません……結局今すぐに争いを止められるわけではありません」

「そうだな」

「……そこが私は不満です」

「わかってる。だからできる限り手伝うさ」

「…………ごめんなさい。キミヤ様は私の代わりに発言し、そのうえで意見を通してくれたのです。それに対して文句を言うなんて……」

「そうよ。アリルフィーラ? キイ様に文句を言うなんてもっと頭がよくなってから出直してきてくれないかしら?」

「ヴィラ」


 割って入ったヴィローサ。まあ公也に対して文句を言っていれば側にいる彼女が出張らない理由もない。公也も一応ヴィローサを窘めるものの、そこまで強い言い方ではない。多少アリルフィーラの文句は公也もちょっと納得いかない点もある。アリルフィーラが言い返せない、あれ以上の意見が出なかったからこその公也の手助けである。そして今後、公也が代案として挙げた内容に関しても公也はアリルフィーラの手伝いをする形で行動する。そこまで頑張っているのにそのうえで文句を言われるのは少々公也の方にも不満が出るだろう。まあ公也が納得したうえでの行動ではあるのだが。


「………………」

「………………」

「………………」

「まあ、終わった話だ。とりあえず今後の方針を決めよう」

「はい……といっても、私は何をすればいいでしょう?」

「アリルフィーラは……特にこれといって何もしなくていい。できれば内戦中の場所に出向く準備をしてほしいところではあるが」

「何もしなくていい……ですか?」

「ああ。その代わりヴィローサ」

「はい、キイ様」

「アリルフィーラの守りにつけ。そして……暗殺の兆候があればそちらの確保のために動くこと」

「暗殺……?」

「ええ、わかったわ。何か危ない感じのする相手がいたら毒で麻痺させればいいのね? 殺したらダメかしら?」

「話を聞きたいからな。殺さないように」

「わかりました。頑張るわね」

「え、あの、キミヤ様?」


 すんなり話を受け入れたヴィローサに戸惑うアリルフィーラ。まさかここでいきなりアリルフィーラの暗殺に話が飛ぶとは彼女は思っていなかった。いや、彼女が暗殺されかけたことについての話なら納得がいく。だが皇都、皇宮で暗殺となると話は違うだろう。


「あくまで可能性の問題だ。今アリルフィーラを暗殺する意味はないがもしかしたらそのように行動する可能性がないとは限らない。まあ、これに関して言えば起きた時どうにか対処する、みたいなものだ。だからヴィローサに任せるんだが……」

「…………そう、なんですか」

「アリルフィーラを殺そうとした奴が今も狙っている可能性はないとは言えないでしょ。まあアリルフィーラを殺す理由次第だろうけど? あ、でも今から変にアリルフィーラに干渉されると面倒くさいからそっちが理由っていうのもあるのかしら」

「………………」


 アリルフィーラの干渉により内戦の結果に変動が出る、有利な方が不利になる可能性もあるし、現時点で勝敗の行方が不明でもどちらかの皇子の勢力が削れる可能性もある。そうでなくともアリルフィーラ、それに伴う公也の参戦は選挙区に大きな変化をもたらす。もしかしたらアリルフィーラが独自で参戦し二人の皇子を滅する、そんなこともあり得ないとは言えない。特に公也という戦力がいれば。そこまでわからずともアリルフィーラが参戦するという事態をそもそも阻止するために動くという可能性は決してあり得ないとは言えない。まあ皇都、皇宮で戻ってきた皇女相手にそのような行動をとることができるかは難しい話になってくるが。


「わかりました……私は大人しくしていた方がいいんですね」

「ああ。ヴィローサと一緒にこの先のための準備だな」

「……キミヤ様は?」

「俺はアリルフィーラの暗殺のために動いていた組織を探る……まあ、残っているかは不明だ。アジトももうない可能性もあるしな」


 アリルフィーラを襲っていた裏の組織は依頼元が原因で仕事の後滅される危険性があると逃げる算段もつけていた。実際には組織の仕事は失敗したわけであり、当時現場にいた人間も裏の組織側は全員殺されアリルフィーラ側も死体が残っていない。成否は不明、そんな状態でおとなしく組織のアジトで待っている物だろうか。元々仕事の後に逃げるつもりだったのにそこまで律義に待つこともしない可能性が高い。であればアジトからもう逃げており何も残っていない、構成員が残っていたとしても既に雲隠れしたか別の組織についたかしているだろう。そういう意味では公也の持っている組織のアジトに関しての知識はそこまで高い価値はないといえる……しかし、それはそれでいくらでもやりようがある。アジトから通じ裏の組織を探る、暴食の力で知識を食らい取り込みその中から洗う。ついでに皇都における裏の組織を全部潰したとしてもいい。まあそれはそれで別の問題が勃発しかねないので多少手心は加えるだろうが。


「まあ、とりあえず皇都で色々と活動するつもりだ……表沙汰にはならないだろうけど」

「それは……危険ではありませんか?」

「キイ様にそんなこと説いても無駄よ? そもそもアリルフィーラが心配する意味すらないわ。キイ様だもの」

「ヴィローサさん、理由になってません」

「なってるわよ。キイ様はキイ様だもの」

「……それは理由とは言い難いと思いますよ?」

「アリルフィーラはキイ様の凄さを知らないからそんなことが言えるのよ。まあ、キイ様についていくことができるのなんて私…………やメルくらいだものね。知らなくても仕方ないわね。ふふん」

「………………っ」


 ヴィローサのドヤッとした顔にカチン、とイラついた雰囲気を発するアリルフィーラ。アリルフィーラはここ最近ヴィローサに散々言われっぱなしなうえにさらにこのように調子に乗った対応をされ流石にちょっと頭に来るところがあるらしい。しかしアリルフィーラは言い返せない。アリルフィーラには言い返せるだけの言葉がない。語彙ではない。言い返せるだけの事実である。アリルフィーラが自分だけできることは少なく、またできていることも少ない。それゆえに、アリルフィーラは実質的な立場が低い。発言権がない。ゆえに何も言い返せない。


「ヴィラ」

「……ええ、わかってます。キイ様に感謝することね」

「キミヤ様。いずれヴィローサさんには私からお返しをしますので、別にかまいません」

「あら。言うじゃない? ふふっ、なら頑張ることね」

「…………っ!」


 そこまで大げさものではないが、これもまた女の戦いという奴だろうか。


「……何をやっているんだか」


 それを見守る公也としては、何とも言えないところであった。


※なんか二人で妙なやり取りしてる……

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