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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
九章 皇国内戦
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16



「皇王陛下」

「なんだ?」

「アンデール卿への対応はあれでよろしかったのでしょうか?」


 皇王に対し公也への対応があれでよかったのか、と共に付いてきている文官が訊ねる。今回の件において公也への追及は甘いと思わなくもないことである。アリルフィーラを他国へと連れて行った件は事と次第によっては大きな国際問題になることもあり得る。彼女は皇国の皇位継承権持ちである皇族の一人。その血筋の人間が外部へと流出するという事態大問題だ。それを他国の貴族が行ったというのだからさらに複雑な問題へと発展する可能性もある。


「確かにこちらが行う追及としては少々甘いと言わざるを得ぬな」

「では」

「しかし……彼の者、アンデール卿……いや、キミヤはこの国においては一冒険者という扱いだ。キアラートが新たに貴族として取り立てたアンデール卿は他国においては貴族としては扱わない、そういう取り決めとなっておる。そのことに関しては私も少々納得し辛いところではあるが……それがキアラートにおける正式な取り決めであるのだろう。実際彼の者はこちらに来る際貴族であると主張はしておらぬ」

「しかし、アリルフィーラ様と一緒に来ていますが」

「あくまであれはアリルフィーラの供としての扱いであろう。まあ本人に何らかの意図がないとも限らぬが……今はまだ何とも言えぬ。それ以上に彼の者の行いは確かにあまりよくないことではある。アリルフィーラを他国へと連れて行くことはな。だがアリルフィーラを助けたのもまた彼の者だ。私たちでは助けることができずアリルフィーラを死なせて終わった話である。そこを彼の者は救った。この点に関しては彼の者の功と言えるだろう。であれば、その功とアリルフィーラを連れ去った責、その二つを相殺するものと考えるべきであろう」

「…………等価の問題とは思えませんが」

「確かにそうかもしれぬ。しかし、今回のことはあまり追及しすぎても問題となろう。特に今は皇族の皇位継承権争いの真っ最中である。キアラートに連絡を取り問題追及する面倒もある。それにアリルフィーラのこともあるだろう。あの娘が今なぜ戻ってきたのか? それに関しても探らねばならぬ。少なくともあの者の判断で連れてきたわけではないだろう。アリルフィーラは己のわがままだと言ったのだ……つまり理由はアリルフィーラにある。それ次第では別の問題も生まれる」

「………………なんというか、大変な話になってきましたね」


 そもそも今までどこかへ行っていなくなっていたアリルフィーラが戻ってきた……その時点でかなり大きな問題のある話になるのである。その対処、今後の扱い、そのほか今回の継承権争いに関しても。途中参戦という形でアリルフィーラを参加させるべきか。様々な点において問題がある。


「そうだな。特にアリルフィーラに関しては……詳しく話を聞かねばならんな」

「……?」


 彼女が自らの娘である皇王はアリルフィーラの悪癖を知っている。それゆえに今回戻ってきたのはある意味では予想外でもあった。そして、そのアリルフィーラの行動に関しても。彼女の気持ちに関しても。皇王が推測ではあるが理解した彼女の内情、それを考えれば。確実に今後に響く、大きな問題となり得るものであった。






 公也が呼び出されたのは客室にとされて割とすぐ。まあアリルフィーラから話を聞くうえで公也が一緒にいない理由もないだろう。仮に公也に秘密にしたくとも今アリルフィーラにはヴィローサがつけられている。アリルフィーラの守りであり公也についていくように言われた彼女がどこまでもアリルフィーラに付きまとう。であれば秘密にしたくとも秘密にはできない。ならば最初から巻き込んだうえで話の内容を秘密にするようにしてもらうしかない。

 そういうことで皇王とアリルフィーラのいる場所に公也が呼ばれる。


「………………」

「………………」


 その二人がにらみ合っている、微妙に雰囲気の悪い状態であった。なお周囲にはいざというときの護衛の兵士や他の文官などもいる。ある程度秘密を守れるだけの忠義のある人物が選出されているわけだが、ヴィローサがいる状態なのでどれほど皇王を守れるかは怪しいところである。


「呼ばれてきました。公也です」

「うむ。そこに座ってもらおう」


 そう言って示された場所はアリルフィーラの隣。なんだかんだで供としては認められているのだろう……まあ公也が供と言う立場でいいのかはキアラートにおいて貴族であるという事実から少々疑問に思うところではあるが。


「さて。アンデール卿も来たところであるし話を戻そう」

「皇王陛下。私のことは公也で構いません。この地においては私はただの冒険者です」

「…………ならキミヤと呼ばせてもらおう。其方と話したいこともある。アリルフィーラ、改めてこの地に戻ってきた理由を訊ねさせてもらおう」


 鋭い視線で皇王はアリルフィーラを見つめる。少し震えてぷるぷるしつつもアリルフィーラは口を開く。


「先ほども言いました。私は皇位継承権、この国で起きている家族同士の争いを止めに来たのです」


 アリルフィーラの皇国への帰還の目的は皇位継承権争いの中止……いや、停止、終結というところだろう。無駄に家族で殺しあう、そんな状態を止めたい。それがアリルフィーラがここに来た理由である。しかしそのアリルフィーラの言葉への皇王の返答は厳しい。


「ならぬ」

「何故ですか!」

「問われるほど物がわからぬわけでもあるまい。この皇位継承権の争いはこれまでずっと皇王になる者が果たしてきた伝統である。意味がないわけでもない。貴族を自分の味方につけその者たちと戦う。カリスマ、求心力、そういうものを図ることでもあり、また自分の派閥を従えそれを的確に運用できるか。皇王の座に着きこの国の運営をできるのか、その能力を図る目的でもある。ただ徒に殺し合いをしているというわけではない。それにお互い本気で殺しあうというわけでもない。それこそ自国の者同士での戦い、また皇族同士での争いである。禍根を大きく残せばそれが内憂となろう。ゆえに過剰に傷つける、殺しを望む、そういうことはせぬ……まあ一切の犠牲が出ぬというわけでもない」

「それでも犠牲は出ます。場合によってはお兄様やお姉さまの中から犠牲が出ることも」

「それこそ承知の上であろう。承知したうえでの皇位継承権争いである。もっとも一番上に立つ者以外が犠牲になることは少ないがな」

「…………ですが」

「くどい。そもそも既に皇位継承権争いは始まっている。今更止めようなどということはできぬ。既に犠牲も出ていよう。犠牲になった者がいるのにお前のわがままで止められるはずもない。それこそ犠牲が本当の意味で無駄、無意味、無価値となる。皇位継承権争いに立つ、出るというのならばともかく、途中で参加することもせずただ止めたいなどという話が叶うはずもあるまい」

「………………」


 アリルフィーラが皇国に戻ってきた理由は皇位継承権争いを止めること。しかしそれはそう簡単に叶うことでもないだろう。伝統であり、また既に犠牲の出ているだろう戦い、そもそも皇位を巡っての争いを行っている二人の皇子も止めてくださいと頼んでも納得はいかない。どちらが皇王になるか、そのための戦いだ。それを止めてじゃあどうやって皇王の座を得るのか。そういう話にもなる。代案すら今のアリルフィーラにはないだろう。


「参加するのであれば話も違うだろう。もっともアリルフィーラ、お前の場合は皇位継承権があまりにも低い。上に立つ立場にはなれぬだろう。なったとしてもついてくるものはそういまい。お前が関与するのであればどちらかの皇子の手伝いをする、そういうことになる」

「………………」

「それならばやりようはあるだろう。犠牲を少なく決着をつける。兵も皇族もな」

「………………」


 通常であれば、おそらくはアリルフィーラの望みは叶わない。通常であれば。


「……少し俺の方から意見を言ってもよろしいでしょうか?」

「キミヤ様?」

「む……其方か」


 しかし、今のアリルフィーラには頼りになる仲間がいる……公也の存在がある。それによって、少し話の行く末は変わるだろう。


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