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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
九章 皇国内戦
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6



 皇国内の移動は馬車で。その予定である。予定であった。近くの街で馬車を買いその馬車で移動する、そのつもりだった。


「……お金がないとはな。城の方から持ってくるべきだった」


 現時点で公也は所有するお金が少ない。一切ないというわけではない。そもそも公也の持っている財産は結構なものである。なんだかんだでキアラートの貴族の一員、貴族ゆえにもらえる国からの賃金もあるし、アンデルク城を治め守る役割りを担うゆえにもらえる額は結構なものだ。代わりに領民が一切いないアンデール領であるため領地からの税収というのものは一切ない。一応城にいる人間から徴収ということもできなくはない…………がする意味もないだろう。そもそも城にいる人間に払う給料みたいなものは公也から出ているし生活に使うお金も公也が出している。まあ大金持ちというほどではないが小金持ちではあるだろう。貴族としてはそこまででもないと思われるが。

 しかしそんな公也も現在持っているお金は少ない。別に生活するだけならばそこまでの問題はない。宿で数日何もせずに過ごしても問題ないくらいだ。元々公也自身が消費するお金が少ないのもあるだろう。だがそれは馬車を買うお金には足りていないということである。この世界における馬車はかなりの高額商品だ。まあ公也の元居た世界における車と同じ価値、バイクと同じ価値と考えれば安くないのは当然だろう。この世界において馬は優秀な移動手段であり場合によっては農耕にも扱える。そんな高額なものを買うお金を公也が持ち歩いているということはない。基本的に公也がお金を使うのは物資に対してのみで余計なものは基本的に買わないことが多い。必要な物資も一部は近くの森などから自力で稼いでいることもある。

 つまりは馬車を買うようなお金を公也は持っていないということだ。だがそれならばこの後どうすればいいのか。馬車に乗らずに移動する。その場合公也の魔法が移動手段としてはメインになるだろう。しかしこれは消耗、手間、負担、様々な点から面倒が多く、望ましいことではない。公也やヴィローサはともかくアリルフィーラに剥き身での空の旅はなかなか過酷である。それに歩いて皇都の皇族の住まう城……皇宮とでも言うべきか、そんな場所にアリルフィーラを伴っていくのは格好がつかない。別に公也がそんなことを気にする必要はないわけであるが、相手が皇族なので多少ポーズは見せたほうがいいだろう。なので馬車は必要である……だがお金がない。どうするべきか。


「持っているお金が使えるのはありがたかった。別にお金はどこでも使える……とまではいかなくとも、比較的共通ではあるみたいだな」


 国が違えば場合によっては通貨が違う危険性がある。しかし、一応ある程度の一定規格が大陸には存在するらしく他国の通貨でも問題なく使えるようだ。ただ若干この国の通貨よりも割高になるらしい。とはいえ公也としては大して気になることでもない。もともとそれほどお金を使うようなタイプでもないの。まあだからといってお金が足りないことには変わりはない。お金を稼ぐ必要性がある。皇国内でお金を稼げば当然通貨は皇国の物になるだろう。念のため通貨は国別に分けておいた方がいい。さらに別の国の通貨を使うかはちょっとわからないが。


「とりあえず冒険者ギルドでお金を稼ぐ……依頼はあまりやってられないな。何か金になる魔物を退治してそれでお金を稼ぐ……馬車を得られるほどのお金は稼げるか? 正直怪しいな。最悪馬車、乗り物自体はどうにか用意してもらって動かすのは自分で確保する。ヴィローサがいれば問題ないし俺でも従えることはまあできなくもないだろう」


 馬車というほど立派なものになるかはわからないが公也であれば自分で賄うことは不可能ではない。馬車の馬となる部分は何か魔物なり獣なりを無理やり従える、公也が脅かしてもいいしヴィローサが恐怖させて従えるのもありだ。車の部分とて最終手段として公也が作るのもありだ。素材さえ用意すれば魔法でちょちょいのちょいである……そこまで魔法は万能ではないが細かい作業、動作を魔法で指示できるので作れなくはないといったところである。安全性など多くの面で不安はあるが。

 ちなみに現時点でヴィローサは公也についてきていない。不満をぶちぶち言っているものの、アリルフィーラの守りとして宿に残っている。さすがにアリルフィーラを連れたまま冒険者業はできない。連れて行ったとしても守るので手一杯になりかねない。さすがにそれは危ないので連れてはいかない。バレることに関してはそこまで心配はしていない。今のところアリルフィーラの存在は見られているがバレてはいない。隠してはいないのだが。






「……やっぱりお金になる仕事は無しか。まあ簡単にあってもらっては困るが」


 公也が冒険者ギルドで依頼を探しているが、当然ながらお金になる仕事はそう簡単にはない。そもそも公也が依頼を受けている余裕はあまりないだろう。時間が必要な依頼はそう簡単に受けられないし、労力がいる依頼も厳しい。できなくもないが……皇国の内戦を止めるのにかかる時間、手間を考えるとあまり時間を使いたくない。


「直接聞こう」


 冒険者ギルドは依頼の受領、終了の報告の処理などが基本的に冒険者相手に行うことである。それ以外にもいろいろとあるが、基本的に事務的仕事が主体である。しかしギルドの職員相手に話を聞いたりできないわけでもない。情報収集はもちろん冒険者以外にも可能である。まあ公也はそれを苦手としており基本的にフーマル任せだが。今回はそこは公也が頑張るしかない。


「すまない。少しいいか?」

「はい。なんでしょうか?」

「このあたりで素材が高価な魔物を知っているか? 強さは気にしない。どんな相手でもいい」

「……………………」


 いきなりどこの誰とも知れない冒険者にどんな強さでもいいが金になる魔物がいないか、と聞かれてはっきり言って職員は答えづらいところだろう。そもそも公也がどういう人物かも知らないのに簡単には話せないだろう。


「えっと……」

「そういった情報を知っている人間はいないか?」

「…………」


 困っている。やはり公也はこういう点ではかなり情報収集が苦手であるようだ。


「あ、情報屋に話を聞くのはどうでしょう?」

「情報屋はどこに?」

「………………」

「よう、兄ちゃん。ちょっとそういう話はギルドの受付相手にするのはよろしくないぜ?」

「……そうなのか?」


 受付が困っているところにギルド内にいた冒険者が話しかけてきた。別に公也も迷惑をかけたいわけではないし、冒険者の言うとおりあまりよくないのであれば別の手段を考えるつもりである。


「わかった。仕事の邪魔をして悪かったな」

「いえ……」

「…………しかしどうしたものか。適当に魔物を根こそぎ刈って来るか?」


 ぽそりと呟く公也。公也ならば魔法なり暴食を使うなりできると思われるが、それをやられると冒険者のほうが困るだろう。


「兄ちゃん。お金が欲しいんだって?」

「ああ。馬車を購入したいから即金でそれなりのお金が欲しい」

「…………そりゃなんとも」

「……闇組織をつぶすのもありか」

「おいおい、物騒すぎんぞ? 実はな、いい話があるんだ」

「それどう考えても怪しすぎるだろう?」


 いきなり話しかけてきて実はいい話がある…………普通に考えれば即金がいると語る公也以上に男のほうが怪しい。


「まあ、確かに怪しいだろうけどよ。でも兄ちゃん、お金いるんだろう?」

「そうだな。ああ、確かに」

「なら話くらいは聞いてもいいんじゃないか?」

「いいだろう。何かしてくるようなら潰せばいいだけだし」

「……おっかねえ」


 とんでもない危険な存在であると男の方も若干理解するところである。大言壮語の可能性はあるが、仮に言っていることが実現可能であるならば公也はそれほどまでに兄弟な戦力であるということになる。それならそれで男としては期待できると思わなくもない点であったが。



※財産面で言えば主人公の持つ財産は結構な物。ただし常に持ち歩いているわけじゃない。馬車とか馬とか高い買い物を急遽しようと考えたとき、お金は城の方にあるので買えない状態に。

※主人公は色々考えているようで割と脳筋気質。知識はあるけど特別頭がいいというわけではない。魔法とか<暴食>とか強い力があるのだからとごり押しする方が手っ取り早いと考えている。

※どう考えても怪しい話。美味い話には裏がある……というのだが今回はない。ただ、面倒くさくて手間もかかって時間もかかるしかも上手くいくかもわからない話。

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