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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
九章 皇国内戦
248/1638

3



「と、言うことで皇国に行くことになった」


 公也が現在アンデルク城にいる住人に対して説明している。もっとも基本的に関係のない冬姫たちはこの場にいない。ロムニルやリーリェ、クラムベルトなどのキアラートの住人、国側の人間。ヴィローサやフーマルのように公也についてきているタイプの人間。雪奈やペティエットなど、この城に施設や役目を持つ人間。理由もなくこの場にいるウィタとフェイのような人間。多種多様である。とはいえ、その多くは公也がどこに行くか、というよりはアリルフィーラの正体の方に興味が言っている。知っていたリーリェとクラムベルトはともかく、フーマルあたりはアリルフィーラが皇国の皇女であるという点には驚きである。まあキアラート以外の国に関して詳しいという人間はこの場にほとんどおらず、そもそも魔物である雪奈たちあたりは人間側の事情に興味はないしえらい立場、王族や皇族であるという点に意味はない。ヴィローサなんかは公也に関係すること以外には興味がない。意外とアリルフィーラがどうであるか、などとはあまり気にされていない。


「……お姫様だったっすか」

「皇女……まあお姫様で間違ってはいないと思うが」

「宿に箔が付きますねー」

「つかないと思うのです。そもそもリルフィが皇女であるのは外には秘密なのです」

「今回皇国に向かうからその所在に関して知られることになるわ。だから箔が付くということは……どうなのかしら?」

「どうでもいいわ、そんなの。キイ様、あの女のために皇国に向かうの?」

「……まあ、そうなるな。拾った以上は助ける。それが誰であれ、どのような人間であれ」

「………………不満。ふまーん! でもキイ様がそういうなら仕方ないと思うのー!」

「……ヴィローサさん、その……ごめ」

「別に謝らなくていいから。キイ様が助けたいって言うのなら私は全力で手助けするわ。容赦しないものねー! ふーんだ!」

「………………。うぃた は きょうみ なさそう」

「フェイは?」

「べつ に ない」

「……基本的に興味がない人のほうが多そうね」

「僕も別に興味はないからねえ。多少国の事情に関わりそうだから面倒だなあ、とは思うけど」

「…………私もこういうことには関わるのはちょっと」

「オーガンは当てにはしてないから」

「それは少し扱いがひどいと思いますが」

「竜の世話をしてくれていればそれでいい……それで、今回皇国に向かうわけだが」


 改めて集まった人間に対してまとめるように公也が話す。


「当然だが、俺はしばらくここを出る。皇国で起きた内戦が終わるまではおそらく戻ってこないことになる。その間の守りだが、頼んでもいいな?」

「私たちは元々そういう役割があるから別にいいわね」

「研究メインにしたいんだけどね。まあどうせ誰も来ないだろうからいいよ。問題ない」

「そういうこと言ったら来ることになる、とかあるけどな……」


 ロムニルとリーリェはいつも通り留守番である。この二人はそもそもフィールドワーク以外ではほぼ出ることがないので別にいつも通りで問題はないだろう。むしろこの二人が動くような事態はかなり面倒なことだろう。キアラート側の事情が大きく関わる物事で動くことになりそうだ。


「私は宿から梃子でも動きませんからね?」

「雪奈は弱いわけじゃないけど宿以外は一切期待してない」

「ならいいんです! 私は他のことでは役に立ちませんから」

「絶対嘘なのです……それなりに強いのは確定なのですよ」

「クラムベルトやオーガンはそもそも戦闘向きではないしここに残るな」

「ええ、もちろんです……私の場合今回のことの後処理もあるでしょう。遠話のことを考えれば新たに得た情報を伝えることもできると思われますし」

「私は特に出向いても役には立ちませんね。戦争とか全然です。トルメリリンのであれば多少は何かできるかもしれませんが……その場合は故郷のことですから少々微妙ですが」


 城で仕事をしていて動くことのない雪奈。戦闘できないわけではないし、その強さはかなり役に立つ可能性はあるのだが。彼女は宿以外のことに一切関与するつもりはないらしい。どこまでも宿のために一生懸命である。クラムベルトやオーガンは己の職務以上のことは厳しい。クラムベルトあたりは国との情報伝達で何か役に立つことはあるかもしれない。城からならば遠話での情報伝達もできそうだ。


「ウィタ……にフェイは特に何かしたいということは?」

「…………ない」「ぼく も ない」

「まあ、そうなるな」

「師匠。俺はどうするっすか?」

「居残り。戦争参加は一応したとはいえ、今回はちょっとな」

「えー……まあいいっすけど。今回は事情が事情っすし……ここならともかく皇国とかだとあまり関係はなさそうっすからね」


 ウィタ、フェイ、フーマルは基本的に居残りである。前者二人はそもそもどこか出向くようなつもりもないだろうし。またフーマルもまた今回は特に参加する意味がない物事であるので特に参加はしない。そもそも戦争に積極的に参加したいというほど戦い好きでもない。強くなりたい目標はあるが戦争でそうするのもどうか。


「ペティエット……は問うまでもないな」

「帰りを待ってる。私にできることはそれくらい。一応城の機能を使っての連絡とかはできる。必要なら行う」

「そうだな」

「私はついてくからね! あの女と二人きりなんて! 絶対にさせないから!」

「……ヴィローサは今回色々な意味で役に立ちそうだし、かなり頼りにしそうだからな」

「そう? そう! 頼ってくれてもいいんだからね! むしろ頼ってほしいな!」

「アリルフィーラのことに関して、であるのにです?」

「…………キイ様のためだもの。私の感情なんてなんのそのよ!」

「あ、メルシーネは今回ここに残ってもらうからな。戦力は充実しているとはいえ、メルシーネがいるといないでは結構違うからな」

「なんですー!?」

「何その叫び……」


 外に出れないペティエットはともかく。今回ついていくのはヴィローサである。メルシーネは居残りになるらしい。メルシーネは竜になれるので移動ではかなり役に立ちそうなところではあるのだが。


「わたしはダメなのです!?」

「今回は皇国に出向くからな。メルシーネは目立つだろう? いろいろと。見た目的に。竜の姿でも半人の姿でも」

「…………それを言われると否定できないのです」


 メルシーネが今回ついていけないのはメルシーネの姿は目立つ、という点が大きい。一応は騎竜扱いで使えるとはいえ、そもそも他国に騎竜に乗って移動する時点で目立つ。そもそもからして竜という時点で目立つ。亜竜ならばまだ多少は目立つのが抑えられるとしても、メルシーネの場合は本物の竜だ。さすがに目立ちすぎる。また人の姿をとったときも完全な人の姿にはならず、竜の特徴を持った状態での人型だ。キアラートでも目立つがキアラートではまだ何も起きていないので問題はない。しかし皇国では内戦が起きている。目立つ怪しい竜の特徴を持つ人間。さすがにそれは何も問題なく行ける、ということはないだろう。


「今回は残念ねメル?」

「……そうなのですね。ヴィローサ、ご主人様のことを頼むのですよ」

「……殊勝ね。言われなくてもわかってるわ。キイ様のために私は全力を尽くすだけよ」

「そういうことで今回ついてくるのはヴィローサのみ、だな。ちょっと人数が少ないが……まあ、別に問題もない、な」


 公也とヴィローサがいれば対軍隊だとしても全く問題ないくらいの強さを発揮できる……単純に数が多い、というだけならばこの二人だけで十分なほどだ。本気で殲滅していいのであればなおさら。まあ今回は内戦を止めることが目的にある。なのでさすがに殺害まで行くと過剰な攻撃になるのでそこは自重するべきである。


「その、よろしくお願いします、ヴィローサさん」

「………………つーん」

「あの」

「言っておくけどね!」

「は、はい」

「キイ様があなたのために動くから私も参加するってだけだから! ぜーんぶキイ様のためであなたのためじゃないから! キイ様に感謝するのよ! わかった!」

「え、あ、はい…………」


 ヴィローサのアリルフィーラに対しての感情はかなり独特で複雑なものである。女の勘、あるいはこれまでのアリルフィーラの行動、公也への対応、そしてその逆で公也へのアリルフィーラへの対応、行動を見ていたりして、様々な要素で考えた結果、のものもあるかもしれない。ヴィローサは自分の判断によるものであるが、ある確信していることがある。それに納得がいかない、理解できるが不満はある、その点で彼女はアリルフィーラに対して、絶対に素直に認めるつもりはないと敵対的なのである。もっとも公也のことがあるのでそちらから頼まれれば素直に受けるし、まじめにやるし、ちゃんと活動する。もっとも絶対にヴィローサはアリルフィーラのためには行動しない。すべては公也のためであり、アリルフィーラがヴィローサに抱く感謝は公也に向けさせなければならない……よくわからない主義主張、ポリシー。まあそれもまた彼女らしい独特な性質、性格、感情というべきか。

 ともかく皇国へと向かうのはヴィローサとアリルフィーラと公也の三人である。そう決まったのであった。


※ヴィローサはアリルフィーラが嫌い。だいっきらい。協力することはできるとしても仲良くなることはたぶんほぼないと思う。

※メルシーネは居残り……ただし後々出番はある。竜だからいろいろな意味で使いやすいというか。

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