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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
八章 冬期来訪
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「キミヤ君は彼らを戦力に数えるつもりなんだよね?」

「そう見たいね。実際戦闘風景を見る限りではあの人たちの強さからすれば無理とは言えないわ」


 ロムニルとリーリェが冬将軍や冬騎士の強さを見てその感想、彼らをアンデルク城に留めるうえで公也が考えていることに関しての話をしている。アンデルク城に冬姫たちをとどめているのはその立場、彼らが冬しか生きられない状況にあること、冬以外の季節を乗り越えるために必要な低温下の状況を必要とするなどいろいろ大変なためそれに気を使っているという点がある。しかし当然それだけが理由ではない。単純に冬姫たちの能力、冷気を必要とする環境、氷を操る能力、そういった点を利用するという点。冷蔵庫として、冷凍庫としての利用が一つの目的にあったりする。

 そしてそれ以外の点もある。冬将軍などが顕著であるが、冬騎士たちも決して弱くはなく、冬姫も相応に特殊な能力も含め強さを持つ。なんだかんだで彼らは魔物でありそれゆえに危険性、強さがある。冬従者たちは正直強さという点では微妙なところだが。いや、それでも彼らもまた魔物である。強さは微妙でも冷気の発生などの能力がないわけではない。決して侮っていい相手ではない。

 ともかく彼らを戦力、アンデルク城を守るための戦力として数えているというわけである。アンデルク城においてはヴィローサやメルシーネがいれば特段そこまで極端な戦力は必要ないと思われるところがある。ロムニル、リーリェも戦えるしずっと残ることになる雪奈みたいな存在もいる。決して弱くはない。だがやはり場合によっては公也が外に出る際についていく存在として最大戦力に数えられるヴィローサやメルシーネは比較的出ていきやすい。そういう点で強い存在を確保しておくのはいざというときの安全のためには重要である。


「でも問題もある」

「……そうね」

「彼らは温度の低い場所でなければ行動できない……冬でなければ自由に出歩くことはできない。彼らに許された移動範囲はこの城の城壁の内側に作られた彼らの居城とその周辺だけだ。それでは防衛手段として考えることは難しい」

「そうなるわね」


 冬姫たちの活動できる範囲は城壁内に存在する彼らの居城周辺。冷温を維持し続けることのできる範囲のみ。冬であれば外に自由に出回れるのだが春以降、冬の初めくらいまでは冬姫たちの行動は自由にならない。冬の気温が維持される環境でなければ彼らは活動できない。ゆえに防衛のために襲ってくる相手に向かっていくことができない。居城周辺から外へと出ることができない。それが彼らの最大の問題である。


「それだとどうしようもなくないかい?」

「確かにそうなんだけど……おそらくはキミヤ君はそこまで考えてはいないんでしょうね。元々は防衛戦力よりも彼らの能力、冷気、氷、低温、そちらを利用したい感じではあったわ。防衛戦力はついででおそらく可能である必要性はないのでしょう」


 実際戦力よりはその能力、氷のほうが重要視されている。だが防衛戦力としてみていないわけではない。いや、強さに関しては後から知ったので防衛戦力としてみたのは戦い相手の強さを把握してから、であるわけだが。ただどうやって戦力として駆り出すかまでは何も言っていない。何も考えていないか、すでに対応策を考えているか、あるいは……


「でも、おそらくは私たちにその手段を作ってもらうつもりなんじゃないかしら?」

「ああ、やっぱりそういうことなのかなあ……それはそれで面白そうではあるけどね」


 魔法による補助。冬姫たちは魔法は使えないが、魔力自体はおそらく結構な量を持っている可能性はある。そのあたりは本人は魔法を使えないが魔力を持つ城魔、ペティエットと似通った感じといえるかもしれない。これは別に冬姫たち、ペティエットに限らず魔物であれば比較的珍しいことではない場合がある。魔法は使えずとも特殊能力は持っているしそれらを使うために必要なエネルギーとして魔力を持っているかもしれない。または魔力ではなくとも何らかのエネルギーを持ち、それが魔法を使う力となる可能性もある。

 つまりはリーリェたちが魔法を冬姫、冬将軍、冬騎士にかけることで自身の周囲の冷温を維持し、冷温をまとったまま行動できる可能性を作るということである。実はこれに関して公也は似たような魔法を行使している。彼らを行動させる冷温の魔法とは逆で温暖な空気を纏うというものだ。それと同じような魔法で暖気ではなく寒気を纏わせることで冬将軍たちを外の環境で行動可能にする。そういう手立てをリーリェたちが作る、ということである。

 既に公也が使えるのであれば公也が教えれば済む話なのではないか、と思わなくもないがそこは二人が独自に開発する、あるいは公也の既に作った魔法とは別の魔法を作り出すことを期待しているか、この程度既に知っている、作っていると考えているか。別に教えなくともいいしそもそもそこまで期待していない、必要としていないというのもあるかもしれない。様々な理由が考えられるがともかくいざというときのためにリーリェたちは独自に冬将軍たち、冬の魔物を動かすことのできる手段の開発を行うことを決めた。






 そんな風にロムニルとリーリェは独自に動いているが別に公也が何かを言っているというわけではなかったりする。公也自身としては本当にいざというときの戦力として考えてはいるがそこまで期待しているというわけでもない。魔法に関しては別にそこまでこだわらずともいくらか冷気の確保さえできれば十分。そもそも城壁の魔法陣のような手段でもできできるのでわざわざ準備することは考えていない。

 ともかく公也は二人の行動に関わらず普段通りである。


「アンデール様。少し相談したいことがあるのですが」

「クラムベルトか。どうした?」


 普段通りの公也に対してクラムベルトが相談があると声をかけてきた。現状のアンデルク城において特にこれといってクラムベルトが必要とするような仕事はない。一応貴族関係の必要な行事の管理など、貴族にかかわることはクラムベルトが処理していることもあって全く仕事がないというわけではない。しかし実際にやるべき仕事というのは少ないためそれほどクラムベルトが相談を必要とするような事態はない……はずである。

 では今回話しかけてきたことは何か。公也にはわからないが相談である以上内容を訊ねればわかることである。


「…………とりあえずこちらへ」


 クラムベルトは周囲をきょろきょろと見まわし、だれもいないことを確認してから公也を近くの部屋へと連れ込む。今回の相談事が他者に聞かれないよう……特にアンデルク城にいるある人物に聞かれないように気を使ってのものだ。でなければ廊下で話したところで特に問題はない。そんな内容である。


「……いったい何の話だ?」

「ええ、実は次の春、とある国で内戦が起きるという話がありまして」

「内戦? 確かにそれは大きなことなのかもしれないが……別にこの国の話じゃないんだろう?」

「ええ。ですが……その内戦が起きる国は皇国なのです」

「…………」


 クラムベルトが公也へと相談を持ち掛ける話、それは皇国で起きる内戦の話。キアラートの国からはそれなりに距離のある、アンデルク城からはそれなりに近い国、しかし結局は他国の話である。それがどういう風に重要になるのか。


※冬の魔物たちは冬の間はともかく春から秋にかけては外に出られない。なので戦力として数えるのは少々難しいと考える所。

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