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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
八章 冬期来訪
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 いくら公也が特に王都でやることがないからといっても新年のあれこれといろいろある行事に出ずにすぐに帰る、ということはできない。どうしてもいろいろと参加せざるを得ない。公也個人としては情報取集としての果たすべき務め貴族として参加するべき勤めなどがあり、それなりに充実した生活、知の収集が行えるといっても、基本的にはアウェイ、味方のいない敵陣といってもいい空間である。集まっているのは貴族、そこにいるすべての人員は貴族なわけであり、ずっとそこにいるのは流石に公也にとってもなかなか厳しく大変なことである。できれば用事がなければすぐに帰りたいところだが、公也の立場がそれを許しはくれず、新年の少しの間は王都に滞在せざるを得なかった。

 しかしなんとかそれらの刑期を終え、公也はクラムベルトを引き連れて王都からアンデルク城へと帰還したのである。行き来自体はワイバーンに乗って一っ飛びで済むので実に楽でいい。冬だが雪が降っていないこともあり移動は実にスムーズに済んだ。まあ雪が降っていても公也ならば無理やり魔法を使い安全を確保して帰ったか、暴食で雲を削って帰ったことだろう。


「ふう。久々だ…………」

「別に急いで帰る必要もなかったと思いますが……こちらとしてはもう少し残っていたかったです」

「悪いな。クラムベルトだけ残ってもらってもよかったが」

「それはできません。自力で戻る手段もありませんしまともに連絡できる可能性も低い。何よりお目付け役がいないと何をなさるかわからないでしょうあなたも」

「結構言うなお前も。まあ、立場上お前のような奴がいないと困るのも事実だが」


 いろいろな意味でクラムベルトの存在は必要だ。貴族としての役目を管理するとか。基本的にアンデルク城における様々な事柄の管理はクラムベルトが行っている。まあ貴族関連のことは完璧に丸投げしているし立場的に公也が受け持つことでもない。というよりほかにアンデルク城でそういうことをやる人材もいない。今まではまだいないというほどではなかったが今回からはクラムベルト以外がマジでいない状態になっている。まあ今までもクラムベルトが担当していたわけであるが、ともかくいろいろ管理してくれる人間がいないと手間がかかるので面倒くさい。決してダメというわけでもないが。

 またそういう点ばかりだけでなく、お目付け役、公也を叱るとかそういう方面もないわけではないが王国側の監視という点でクラムベルトの存在は必要である。本来そう言うものは隠すべき事柄であるが、クラムベルトはもう大体公也にバレているというのはわかっている……というか状況的にバレざるを得ないのですでにバレているなら多少きつめに言ってもいいだろうということではっきりとびしっと言っている感じである。まあクラムベルトが監視しているといってもそこまで厳しいものでもない。ただあまり勝手なことはしてほしくないと指摘する感じだ。アリルフィーラの存在もあって。

 とまあそういうこともあって二人は一緒に同時に帰還である。情報収集に関して公也以上にクラムベルトは王都方面で色々とやりたいこともあったが、基本的には向こうに任せることで早々に切り上げて帰還である。多少不満もあるが公也もここしばらく王都に缶詰めだったのでそちらの不満もあり堂々巡りになるから特に何も言わずに置く。こういう時お互いに触れないほうが面倒がなくていい。


「キイ様! おかえりなさいー!」

「ただいまヴィラ…………一番だな」

「当然よ! あの使えない竜娘とは違うわ!」

「使えないとは実にひどい言葉だと思うのですよヴィローサ。おかえりなさいなのですご主人様」

「ああ、ただいまメル」

「出遅れ小娘の癖に生意気よ」

「本物の小娘に言われたくはないのです。大きくなれるようになってから出直してくるのです」

「何よ!」

「何なのです」

「…………人が戻ってきて早々に喧嘩か? 仲がいいのはわかるけど自重してほしいところだな」

「ごめんなさい」

「ごめんなさいなのです」


 いつものやり取り……最近はフーマルをいじるようなことは少なくなったが代わりに矛先がメルシーネに向いている感じのヴィローサである。まあ決して仲が悪いわけではない…………と思いたい。立場上何か気軽に言い合いができる相手としてヴィローサにとってはメルシーネが適任な立ち位置なのだろう。公也も特に起こっているというわけではないが、言い合いがヒートアップすると周囲に被害がまき散らされそうなのでさすがに止める。下手をすれば自分もまきこまれそうだし。まあ二人が公也を巻き込むということはおそらくないと思われるが。

 ちなみに出迎えに来たがっているが外には出れないペティエットは中で待っている。ほかの面々は基本的に出迎えまではしない。帰ってきたところに挨拶くらいはしに来るが。


「あ、そういえば新年おめでとう!」

「……ああ、おめでとう」

「おめでとうなのです。何がおめでたいのかはわからないのですがお約束なのです」

「キイ様と新年を迎えられる幸せがおめでたいのよ」

「ヴィローサの頭もおめでたいのですね」

「嫌味なのはわかってるから。後で毒を盛るわよ?」

「二人とも、そういうのは後でな。外で誰もいないところでやってもらえるか?」

「ごめんなさい」

「ごめんなさいなのです」

「…………なんでちょっとした会話がいきなり喧嘩になるんだ」


 公也も戸惑うくらいに喧嘩っ早い二人である。悪い意味で相性がいいのだろうか。


「アンデール様。私は戻っているので用事があればお申しつけ下さい」

「ああ。新年から早々仕事は別にしなくてもいい……と言いたいところだが、そうもいかないか」

「今更なので気にしません。王都でもいろいろとやっていましたので」

「……そうだな」


 この世界では新年だから仕事をしない……というのは特別何かあるほどでもない。そもそも初詣とかそういうものもない。冬なので別に仕事としてやれることがないからやらないということはあるものの、新年だから特別に何かをするとかはない。行事的なものはないでもないがそれ自体はそこまで重要でもないしやる余裕がないところもあるだろう。そして一部の人間は普通に仕事をやる。というより貴族の場合行事への参加とかは普通に仕事になるだろう。割と忙しい。

 そしてクラムベルトみたいな存在は基本的に新年だろうといつだろうと仕事である。まあアンデルク城では普通に雪奈が宿をやっていたりもするが。彼女の場合は最早宿をやることが生きがいというか人生というか息をするように宿をやっているのでまた話は違うか。

 クラムベルトはそんな感じで自分の仕事があると去っていったが、公也のほうは新年だからと歓迎するということでヴィローサとメルシーネが連れていく。みんなで新年を祝うということはできないが、その代わり公也が戻ってきたらみんな集まって祝う、そんな感じで話がまとまっている。いつ戻ってくるのかはわからないので軽く残っている全員で新年の祝いはやっているが、盛大にやるのは公也が戻ってきてから、ということである。公也が戻ってきたのでそれがようやく始まるのであった。


※クラムベルトというお目付け役がいたところで主人公は割と気にせずいろいろやっているからあまりいてもいなくても変わらないような……一応何をやったかの報告の関連では必要かも。

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