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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
八章 冬期来訪
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 ヴィローサや冬姫に話を聞き、今度は雪奈に話を聞きに行くロムニルとリーリェ。雪奈はいつも通り宿にいるが宿に特に客が来ることもなく暇通し。そのため今では用意された毛皮や革などから服作りや加工してカバンなどを作ってみたりといろいろとやっている。暇つぶしの仕事があるだけいろいろな意味でマシかもしれない。まあ、だれも来ないとわかり切っていても宿の環境維持などもしなければいけないのでそればかりというわけにもいかないのだが。


「私の能力と、あとその力の源に関してですか…………よくわからないですねー、今まで考えたこともなかったです」

「そういうものかい?」

「私は人のお世話をすること、そのために宿を経営すること。なんで宿を経営することになったのかって聞かれると困るんですが、まあそういう風にすることに決めてしまったのでずっとそればっかりです。そのために力を使うだけであり、それ以外のことは特に気にかけたこともありませんでした。なのでー、はっきり言って自分でもよくわかってないところ多いですよー?」

「それでもいいわ……参考にできるだけでも大きく違うもの。全く知らないよりも、少しでも、わずかでも知ることができればそれが大きな成果よ」

「そうですかー。なら……そうですねー……ちょっといろいろ確認してみます」


 雪奈の能力は主に効果としてみられている物は変化。柱さえあればそれから小規模とはいえ建物を作り上げることができるほどの能力である。ただ、その内容は宿というものになるわけであるが。彼女のそれは彼女自身が宿を作る、というものに由来してか宿以外に変化しない。あるいは彼女の能力は宿に限定されているか。そもそも彼女は自分の種族というものも認識していない。敢えて言うなら狸系の魔物、妖魔、妖魔狸、変化狸、様々な種が考えられるものである……それでも彼女のように人型を採る存在は珍しいかもしれない。いや、彼女の場合魔物として動物の形態がベースなのではなく、人型のほうがベースである可能性が高い。そもそもメルシーネが竜でいるときのように、雪奈が狸でいるところは一度も見られたことがない。人型の狸の魔物、獣人ではない魔物であるそれはかなり特殊な事例、特異な魔物といえる可能性が高い。ゆえにこそ、発生が特異で特殊な存在だからこそ、その能力も特異で特殊、さらに言えば強力な能力である可能性は高い…………宿を作り出す以上のことはしていないが。


「えっと、そうですね。まず……こんな感じに見た目の変化ができたりしますね」

「……服装は変わったね」

「それ以外はできないの?」

「えーっと、そうですね。はい! 宿の内装が変わりました!」

「……それ以外には?」

「布団とかの色も変えられますよ?」

「えっと、そのあたりにある物の見た目とかを変えることとかはできないの?」

「宿に関わること以外はどうにも……あ、力を使いすぎると私の姿が変わったりします!」

「ふむ……力を使いすぎると変わる、か。どういった感じに?」

「この場所だとやりにくいですね……前は柱だけを建てたところに私の力で建物を作り出していました。だから私はかなり力を失ってだいぶ普通の女将になってしまったんですけど、今はだと特に力を失うでもなくスーパー女将のままでいられます。せいぜい内装を変化させるとかその程度にしか力を使わないおかげです」


 スーパー女将とは何ぞや、という話はともかく。彼女はその力によって建物を作り上げることができるくらいに驚異的な能力を有している。その代わりその力は彼女がその力を使えば使うほどほかに使う余裕がなく、彼女自身の力、強さにも関わってくる。


「……つまり、君の力は君自身の力を使うということかな?」

「その認識は……多分あってますね。いうなれば私の力を分け与える。私自身の力を形にして変化させる、そういったものでしょうか。なので私の能力は皆さんのように魔力を用いて扱うものではないと思いますー」


 雪奈の力はいうなれば彼女自身が持ち得る力そのものを力の源とし、その力を行使し変化させ形を与える。放出した力は彼女の下から失われ、その分だけ彼女の力は下がる。放出した力は与えた変化を解除することでその力を自身の元に戻すことができる……そういうものであり、ゆえに彼女の力は魔力を扱うものではない。


「ここまで三人話を聞いてきたけど、厳密な意味で魔力を使って特殊能力を使う子はいなかったね」

「そうね……魔物の力は魔力とは別、なのかしら?」

「それもまた少し違う気もするなあ……ある意味ここにいる三人が特殊すぎるんじゃないかな?」

「それはあり得るかもしれないわね。魔物の持つ特殊能力でも、人型の魔物はかなり魔物でも特殊、珍しいものね」


 そう考える二人であるが、かつて公也たちが出会ったことのある河童の魔物が亀になることに果たして魔力を必要とするか……と考えると特殊能力は魔力を使わないもののほうが多いかもしれないと考えることができたりする可能性が高い。実際のところかなり怪しいところである。もっとも、彼らにとってはこの次がどちらかというと本命の相手だったりするが。






「力……それと力の源?」

「ある意味一番話を聞きたい相手だったからね」

「城魔、魔法陣として魔力の利用を行う上で一番の情報源だもの」

「力の行使、特殊能力の確認。そしてそれを使うための力の源の調査。何を聞きたい?」


 ペティエット。ある意味彼らの調査の上で厳密に魔力の存在を確認できる存在……それが魔力であるかは真実定かではないが、魔法陣を起動できる力であることには間違いなく、つまりは魔力である可能性が高いものである。


「まず、その特殊能力に関してかな」

「……といっても、普段見ている限りでは城に関わる物、かしら?」

「基本的にはそう。城の掃除、水の清浄化……城魔の運営に関わるもので城の範囲にある物の操作や処理が主。ただ人など生きた存在を対象にして操作することはできない。人を追い出したりはできないし、ゴミ掃除として掃除することもできない。入った相手に干渉することができない。追い出すこともできない。基本的に城の運営以上のことはできないと思ってくれればいい」

「あまり便利な能力ではないんだね」

「そう。城に住む人には役立つけど、それ以上ではない」


 ペティエット自身の能力はそれほど多くない。城に住む人間にとっては住みよい環境ができるという点では多少利点ではあるが、例えば城に侵入しようとする相手を害することができるとか、城に入り込んだ相手を追い出すことができるとか、そもそも侵入を拒めるとかそういった便利な能力はない。それは城魔の意思であるペティエットもそうだが城魔自身も特にこれといって特殊な力を行使したりすることもない。ただ、ゴミ掃除と掃除した物を元にした肥料づくりみたいなものや、雨水など水をため込みきれいな水として城で利用できるとかそういった特殊な能力はある。そしてペティエットはこれに関してもある程度は作用できる。


「なら、君の能力の力の源に関してだけど」

「あなたのそれはあなた自身の力というよりは城の力よね? 力の源は城にある、そう思えばいいのかしら?」

「それでいい。城に存在する力、この場合魔力であると仮定してもいいと思う。その力が特殊能力の源……と、言えるのかもしれない」

「かもしれない? そうではない……かもしれない、と?」

「特殊能力をいくら行使してもそれほど力を消耗するとは思えない。城の持つ力に対し、特殊能力の消費する力は明らかに見合ったものではない。むしろ魔法陣に使う力のほうが明らかに大きい」

「……確かにそうね。でもそれは使う魔法陣の効果の大きさがあるからこそでもあるのだけど……」

「そして、魔法陣を複数行使してもまだ魔力には余裕がある。城の持つ魔力は明らかに特殊能力のためのものとは思えない。何らかの形で利用するための貯蓄のようなもの、あるいは貯蔵している力のようなものかもしれないと考えられる」


 自身が使う力よりも魔法陣のほうに使われる力のほうが圧倒的に多い……つまりそれだけ無駄に力が残っているということである。普通はそうないだろう。自分が使う力が小さい力であるのにそれに見合わない大量の力を有しているということは。ならばその力はいったい何のために存在しているのか? 城魔は城自体が自分自身だけで生き残ることが想定されていない。城魔の意思は城に拘束されているし、城が強くなるというのには増築されることが必要になる。城魔の意思に触れることで主従関係を結ぶことになっている。そういった様々な点を考えると、城魔が莫大な力を有するのは主に使われることが想定されている可能性がある。


「…………ふむ、そういうこともあるのか」

「…………魔物だからかなりいろいろと特殊なのよね、そういうの」


 城魔という魔物自体がかなり独特なもの、それゆえにといったものであるかもしれない……が、しかしそれでも魔物というのは斯様に理不尽な内容を容認できるものか。人間はかなり魔力量という要素に苦しみながら頑張っているのに。まあ、代わりに自分では一切使えないし城魔自体は自意識がなく、城魔の意思はペティエットのように自由にできることは本来ないしある意味仕方がないというか、そういう独特すぎるゆえの特殊性なのかもしれない。



※宿屋じゃなくて裁縫メインになっている雪奈さん。お客が来ないので仕方がない。

※明確に魔力という表現でその力の源が扱われているペティエット。城魔としての特殊能力とは別に魔法陣などでもそのエネルギーが使われている。

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