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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
八章 冬期来訪
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7


「寒くなってきたな」

「そうっすね……まだ雪が降ってはないっすけど、冬も本番に入ったってところっすか……」

「うー、さすがにちょっとつらい……キイ様あっためてー」


 外に出ていた公也、フーマル、ヴィローサがアンデルク城に戻ってきて城の中の暖かさに少しだけほっこりとする。外と比べれば城の中は遥かに暖かいといえる。もっともそれほど極端に暖かいといえるほどではないので比較的、だが。


「雪も降るのか」

「そりゃ降るっすよ……まあ、冬でもあまり降るってことはなかったと思うっすけど」

「普通の場所ならそれほどでもないんじゃないかしら? でもここだとどうなのかしら……」

「山だからな……そこまで天候的な変化、問題はないとも思うが……いや、どうだろう」


 公也達のいるアンデルク城は山の上。その環境は平野よりもはるかに厳しいものだ。温度、天候、様々な点で厳しいことになりうる。まあ、特に今は問題ないわけだが。これから先雪が降ればどうなるかもわからない。


「まあ、城の中にいる分には……雪かきとかする必要はあるかな」

「雪かきっすかー。魔法でどうにかならないっすか?」

「なる」

「なるっすか」


 何か問題があっても大抵のことは魔法でどうにかなる………………いや、魔法はそこまで万能というほどのものでもないはずなのだが。公也に関して言えば魔力豊富で魔法も自由に扱えるからこその便利さだろう。さすがに普通の魔法が使えるだけの人間だけだったならそこまで簡単に雪の除去をできるほどではなかったと思われる。まあ、仮に魔法がなくとも公也とメルシーネであればその身体能力で雪の除去は難しくはないと思われる。


「今のところ降ってないんだから気にしても仕方がないわよ。降ったらどうなるかなんてのはわからないけど」

「まあ、そうっすけどね……」

「でもキイ様。この後はどうするの? 外も寒いしあまり出られないと思うんだけど」

「特に予定もないからな……外でいろいろと鍛えるのも寒くてつらいし、中で過ごす以上に……そうだな、別に戦闘以外にやることがないというわけでもないんだ。中でできる仕事でもすればいい」

「仕事って……何するっすか」


 アンデルク城における仕事といえば基本的に家事全般以上のものがない。クラムベルトみたいに公也の貴族としての役目の管理のような例外でもなければ仕事場である城でやることといえば、外で農地の開墾でもするかあるいは森に出向いて魔物退治、冬の寒い中外に出向くものばかりで微妙である。外でではなく中でやる仕事がない。事務仕事は必要ないし城の中でしか仕事がなく、家事に関しても城の清掃みたいなものは必要なく。ぶっちゃけ仕事がない。


「…………ああ、そういえば雪奈に冬服を作ってもらいたいってことで任せていたが、その材料が足らないんだったな。買いに行ってそろえるっていうのもありだったが、せっかく魔物を狩っているんだしその毛皮の利用とかも考えたほうがいいと思う」

「あー。一応血抜きとかはしているんすよね……そのまま死体で持っていくっていうわけにもいかないっすし。まあ、そもそも素材で必要な部分以上のものはいらないわけっすからそこまで必要とも限らないっすけど……肉を食べるならいるっすもんね」


 魔物も倒すというだけで終わりではない。そもそも倒すのには肉とか毛皮とか爪とか牙とか、そういった素材を利用する、売却のために回収する目的がある。流石にこの近辺の魔物を対峙する依頼は出ていないということもあって以来遂行のためというわけにはいかない。公也が依頼を出すというのも手の一つかもしれないが、それは公也自身がするつもりがないので除外される。基本的には冒険者ギルドでの売却が基本だろう。

 しかしそのうちの毛皮に関しては加工すれば雪奈の作る服作りに利用できる。今回は冬用ということで冬服づくりになるが、別に冬服に限らず雪奈に頼めば平時用の服も作ってくれる。別に彼女の来ているような和服に限らず普通の服も作れるので問題ない。なぜ服屋とかやらずに宿などやっているのか……無駄に能力があると言っていい。いや、宿をやるうえで仕事用の服が必要だから自分で作る必要があったからという理由とかいろいろあるわけであるが。


「魔物の加工っすか。まあ、どうせやることもないしやってもいいっすけど……」

「生物の構造を学べば弱点とかも付きやすくなるかもしれないぞ。どこを狙えばいいとか、動きの予想もできるようになるかもしれない」

「そういうもんすか?」

「可能性はあるかも、って話だな」


 生物の構造を生物を解体する過程で理解する。弱点となる部分、弱い部分、急所の把握、そういったことができれば実際の戦いのときに役に立てるかもしれない。あくまでかもしれない、という話だ。実際の戦闘時に得た知識がどれほど利用できるかもわからないし、どれほど上手く扱えるかもわからない。動かない状態の死体を相手に得た知識が生きて動く相手にも有効化はまた別の話ゆえに。


「まあ、やることもないから別にいいっすけどね」

「……そうだな」

「キイ様もするの?」

「いや、俺は穴掘りかな」

「穴掘り?」

「ああ……地下室作りだ。外で建物づくりはできないから中でな」


 特にすることのない面々とは違い公也は仕事がある……というより自分で仕事を作っている。別にやらなければ暇でやることがないという状況なのでやる分には別に問題ないわけであるが。それにほかのだれかを参加させることができないわけでもないが、ただ本当の意味で掘って部屋作りするというのも大変だろう。そういう意味で公也だけの仕事としてやっているわけである。別に秘密というわけでもないので参加自体は問題ない。


「ふーん……わたしはどういう仕事でも参加が難しいからできないけど」

「ヴィローサは元々妖精だし、仕事をするようなものでもなさそうだよな」

「ええ、妖精にはそういうお仕事とかそういうものはなかったわ。気ままに生きるだけだったわね……あれで何が楽しかったのかしら? 人間に関わって面白おかしく生きる妖精もいたけど、今なら少しは気持ちがわかるところね」

「その結果妖精に悪戯される人間が増えるっすね……」

「そうね。ま、そういう妖精は別に好きにしていいと思うわ」


 ヴィローサは別に仕事がないのが普通なので気にする必要がない。まあ、彼女は彼女で公也に仕事を頼まれたいという気持ちはないわけでもない……もっとも妖精のできる仕事というものは基本的にない。せいぜい彼女の毒の能力を利用する何かがあれば、といった感じだろう。


「ともかく、仕事がなくても別に無理にしなくてもいいがやりたいならいろいろ探してやるといいぞ……流石にこの時期外は辛いからな」

「辛いっすね……」

「辛かったわ……」


 外に出ない面々はそれはそれで仕事があったり、あるいは別に仕事をしなくて良かったり色々だったりする。まあ、そんな感じで各自いろいろ冬を越すうえでやる様子である。城でするべき仕事が少ないのはいかがなものか。そもそも領地として正しく成立していない場所なので致し方ないことなのかもしれない。



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