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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
八章 冬期来訪
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6



「城の拡張は横、左右に伸ばす……後ろ、ペティが出られる側はどうするか……余裕はあるんだが、ペティのことがあるから下手につなげるわけにはいかないか? 一応壁からつなげる点においては問題ないかもしれないが、周りからの侵入を考えると……って、それに関しては今も同じか。ペティに対して害意があればフズが反応してくれるだろうし、そこまで注意せずつなげる点には問題ないか……できれば壁は厚くして穴をあけて入り込んだりできないようにはするべきかもしれない……いや、そこまで気にしても仕方ないか。どちらにしても今すぐやるわけでもないし……左右につなげるとすれば、作った森側と宿側、宿側にはワイバーンの厩舎を……城壁の外に作る、城壁の外に通じる扉をつけてその側にオーガンの住める厩舎の世話役の家、と。まあ今のところこれは予定にしておくしかないな。冬の間建築は難しいだろうし、少なくとも春になってからだな……」


 城の屋上から外を見まわしつつ公也は今後の城の増築について考える。元々城の増築はペティエットに頼まれたことであるが、城魔を育てる以外にもその意味、役割はある。領地として、また城自体を使う側として城を大きくする価値はある。ただ問題は城を大きくするといってもどうやって大きくするかだ。建物を大ききくするうえで一番わかりやすいのは横につなげる方法になるが、今彼らのいるここは山の上である。横につなげることは不可能ではないがどこまで続けられるか、場合によっては途中から層構造のような形になって城自体は横へ広がる限度ができるかもしれない。 そしてそういった城の建築に関する変化はいったい城魔はどこまで許容するのか。建物としての城認識の限度はそこまで気にしなくとも、城魔の城認識は結構重要だ。その範囲次第では城魔の特殊能力を受けられない部分ができる。その差ができる場合少し面倒なことになる。

 逆に横でなく上に伸ばすということもできるだろう。ただこの場合も問題はある。上に伸ばす、というのは限界が存在する。それも横に伸ばす以上の限界が。上空は山の上とはいえどこまでも高く、空高くまで空いているわけであるが、この世界には重力がある。この世界で正確にどういった形でその法則が働いているか厳密には知らないが、公也のいた世界とほぼ同様の力、法則が存在しているわけである。それは建物の上にさらに巨大建築をすることを許容できない。積めば積むほど重量を増して下にあるものを押しつぶす。つまりある程度大きくはできても過剰に大きくしようとすると先に建物のほうが限界を迎えてしまう。またそこまで大きくすると今度はアンデルク城自体が発見されやすくなる。目立ってしまう。別にアンデルク城を秘匿したいわけではないが、変に喧伝するような無駄に巨大な建築をするのはいかがなものか。またこちらも城魔はどこまでを城として許容してくれるのか。そう思うところである。

 まあ、この二つは結局どちらも限度さえ考えればある程度はできる。ただどちらにしても冬の間はできないことではある。結局建物の外にでて作業をやらなければならないことだからだ。


「…………」


 公也はじっと外、フーマルのいる森のほうを見つめる。


「地下………………地下室………………下に掘り抜いていくのはどうだろう? 地下建築を広め、地下都市、地下城塞のようにしていく…………まあ山の中を掘り抜いていくのはそれはそれで危険だな。ある程度は限度を考えないといかない。まあ、これはどこでも同じか。ただ、ペティ……城魔がどう認識するかもわからないしな。でも地下なら中から掘れる。場合によってはそもそもからして建物認識で外側でない可能性もできる……地下を通じればペティの移動もやりやすくなる可能性はあるか? それはそれで利点ができそうだな」


 地下建築、地下構造。公也の考える建物の増築するうえでのもう一つの方法。横に、上に伸ばすことができるのならば下にも伸ばすことができる。土台である地面の下に建物を伸ばすという発想は決して不可能ではないだろう。ただこちらもやはり城魔がどう認識するかの問題はある。しかし公也は元々地下に墓を作るつもりがあり、その考えゆえに地面を掘る予定があった。それから発想をつなげ地下都市、地下城塞を作る、地下室づくりを考えに入れた。ただ外につながる場所とつなげることによるペティの移動の弊害や、そもそも城魔がどう認識するかの問題がある。城魔の肥料の問題もある。城魔が土に排泄物を処理した肥料を送り込んでいることもあり、地下を掘るということが城魔側にとって問題となる行動になりかねないのでは、そう公也は考える。


「……聞いてみるのが一番か。ただペティも応えられるかはわからないが」


 城魔の石であるペティエットにそれが可能かどうかを尋ねる。一番堅実な疑問の解消手段だが、彼女でもすべてがわかるとは限らないので若干不安が残る手段である。






「地下に掘る……確かに地下室みたいな形ならおそらく可能だと思う」

「単純に地下を掘った通路は建物としては認識されないか?」

「おそらくは。土壁の状態では建物として認識されないかもしれない。木材、あるいは石材できちんとした壁、部屋を作る。そうして初めて城の一部として認識してくれるかもしれない。試み自体が初めてなので断言はできない」

「まあ、そうだな」


 ペティエットが言う限りでは地下の構造の作り次第では建物として認識してくれる、という話だ。単純に土を掘ってその掘った空間を建物として認識するというのはさすがに無理だが、地下に資材を使ってきちんとした部屋、空間、建築構造を作る場合は城の一部として認識してくれる……可能性は低くはない、といった感じだろう。ただ、これに関してはペティも言っているが確実にそれが正しいとは限らない、そうなると断言できることではない。こればかりは試して実際に確認してみないとわからないことである。


「土壌に関しての問題はないか? 城で……排泄物とかゴミとか肥料化されているみたいだが」

「おそらくは問題ない。城と直接通じる地面に排出する、というわけではなく周囲の地面である場所に送り込むような形になる。地面じゃなくなったら多分そこに出現するというようなことはない……と思う」

「やっぱり断言できることではないと」

「私も城魔の意思でいろいろ知っている。でも全部を知っているわけではないから……」

「そうか……まあ、おそらく大丈夫だというのなら、とりあえず一度作ってみるのはありだろう。空間だけ作って様子を確認してから問題なさそうなら増やしてくという形にする。どうせ一度に全部をやるのはさすがに無理だ。地下はまだ掘ってちゃんと部屋を作るだけ住むとはいえ、上との安全もあるしな」


 地下に掘り進むということはその分だけ土台が減る、上を支える地面が減ることになる。下手な掘方をしていくと地面が城を支えきれず崩壊ということになりかねない。掘るにしてもある程度全体の安全を考えて彫らなければならない。極端に広げることはできないだろう。まあ、逆にいえば安全でさえあればかなり力に構造を広げられる。もっともこれもまた城魔はどこまで城の一部として認識してくれるかは怪しいが。


「地下室を作るつもり?」

「ああ。冬の間でも城の中から掘るなら外に出ずに作業できるからな」

「……外で作業はできなくても中でならできる」

「雪が降っていても、外が寒くても、中は変わらないからな……まあ、地面を掘ることで何らかの影響が出ないとも限らないが」

「おそらく大丈夫……だとは思う。確約できるものではないけど」


 どこまで行っても何ができてどのような影響があるかはペティエットの感覚からの推測である。結局試さなければ何がどこまで可能なのか、どううまくいくのかはわからない。何せ城魔は魔物、この世界の摂理から外れる存在。どのような挙動をするかわからないゆえに。ペティエットの感覚ですら、本当にどこまであてにできるかもわからないくらいに魔物とはよくわからない生き物なのだから……城が生き物かどうかはさておいて。

 それでも公也は試す。知的欲求から何もできないよりも仕事をしているほうが暇もつぶれているという理由、城を増築する城魔の強化の恩恵、城自体を大きくする意味、場合によっては領地を地下都市とするのも面白いかもしれない、あるいは地下と地上の二層構造にするみたいな余計な考えもある。まあ想像するだけなら自由だろう。そもそもそんな構造の領地づくりをしたところでそもそも住む人間がいないのだから意味はない、という話だが。住環境的にも地下がちゃんと人が住める場所なのかもわからないし。まあ、想像……妄想するだけは自由、実際に作るにしても迷惑にならない程度に作るなら自由だ。地下室自体は倉庫的な意味でも使えるのでわるいものではない。その規模が多少大きくなってもそこまで問題はないかもしれない。ともかくやれるだけやってみるのはありだろう。最悪後で土に埋めて戻すのもありなのだし。


※一番の難問はどう広げるかよりも建てる側の建築能力。まずちゃんとした建築者を呼んでこないと難しい。

※地下室は可。ただし地下洞窟は厳しい。

※いろいろ考えているがうまくいくかはまた別の話。

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