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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
七章 館城建築
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 基本的に現在公也が行っている事柄は城壁の建築である。しかし別にそれ以外に関して一切しないというわけでもない。元々公也は冒険者であるし物資の補給、周囲の魔物の駆逐や開拓などやるべきことはほかにもある。ただ、やはり城の拡張、城魔の強化を優先している。物資の補給はさすがに厳しいが魔物退治や開拓、それ以外にも周囲での農業、開墾などはほかの人員でもできる。建築に関してはその作業量……知識云々ではなく、必要な力、労働力の関係で公也やメルシーネが行っている。単純な力という面ではこの二人が力持ちであり、魔法という面も使える公也は作業を行う上でかなり優秀である。なので彼らが建築作業を行っているわけである…………そしてその建築は別に城壁に限った話でもない。


「…………ワイバーンの厩舎の横に家が欲しい?」

「はい」

「いや、まだワイバーンの厩舎に関してはどこに作るかって話なんだが……城壁の外になるだろうから城壁を作ってから、今は仮の厩舎だからまだ作らないが……」

「ならばその時に。正式に厩舎を作るときにお願いします」

「まあ、別にかまわないが……」


 オーガン、本来トルメリリン、ワイバーンの谷にいた彼は今アンデルク城にいる。別に国民の登録がされているということもないのでいても問題ない。さらに言えば彼がいればワイバーンたちはそれなりにおとなしい……まあ、今ではメルシーネもいるのでワイバーンたちに関してそこまで気にする必要もなかったりする。しかしメルシーネが動かずともオーガンがワイバーンたちの相手をすればその間彼女が自由になる。メルシーネが自由になるだけでも結構違うだろう。またメルシーネとオーガンのワイバーンの御し方も違う。メルシーネは従属、支配、彼らの上に立つ者としてだがオーガンは同調、有効、仲間や友人としてのものだ。メルシーネがワイバーンたちを御すよりオーガンに任せるほうがワイバーンたちの心労は減る。そういう意味ではとてもありがたい。


「……わたしこいつ嫌いなのです」

「そう言うな……単に竜好きなだけだから」


 たまにメルシーネにオーガンがあれな視線を向けていたりするのを感じてどうにもメルシーネはオーガンを苦手としている。もっともオーガンのそれは竜であるメルシーネに向けられるものであり、普段のメルシーネに対してはそこまででもない。まあ期待を向けて見られたりするのもあってあれだが。


「しかし……ワイバーンたちの近くで……いや、問題ないのか。元々ワイバーンの谷にいたわけだし」

「ええ、まあ」

「それで今はワイバーンの世話か……それでいいのか?」

「私としては彼女の竜の姿を見たいのですがね」

「せめて普通に視線を向けてくるならまだいいのです! でもお前の視線はちょっとどこかいやらしいのでダメなのです!」

「そんな!?」


 別にオーガンは竜に対して性愛を抱くということもない。竜好きゆえに竜を見る、というだけの話だが……どこか邪な思いを持って視線を向けているのかもしれない。それをメルシーネは感じているため基本的にオーガンに関しては逃げたり避けたり拒絶したりしている。


「……オーガン、ワイバーン以外の動物の世話とかはできるか?」

「もちろんできますよ。そもそも私の能力はワイバーンに限ったものではないので」

「そうか……」


 公也はオーガンの言葉を聞き少し考える。そして一つの提案をする。


「牧畜とか頼んでもいいだろうか?」

「牧畜……ですか?」

「ああ。畜産、牛とか豚とか買って食料自給率を増やしたい」

「…………食料とする動物を育てたいということですか」


 オーガンの能力は動物や魔物の多くを対象にしたものである。動物や魔物に好かれやすい、好まれやすい、そういう能力であるため動物を育てるという点に関してはかなり有能であると考えられる。ただオーガンはその公也の提案に対して苦々しい表情をしている。


「すみませんが、それに関しては遠慮させてもらえますか?」

「……理由を聞きたい」

「仲良くなった動物が食物になるというのはどうも……」


 オーガンはそれらのことを苦手としている。理由は彼の能力、彼が動物と関われるのは仲良くなる、好かれる、そういう点で強みがあるからである。彼にとって動物や魔物たちは基本的に友人、仲間、そういう立場である。種族が違えど仲良くなることができる……しかしそれは将来的に食料にするためではない。牧場で動物を育てる人間とはまた違った感じ方、考え方なのである。ゆえにオーガンに牧畜はできない。


「そうか……」

「なら牛乳の確保とか鳥の卵の確保とかはどうなのです? 殺すことはできないかもしれないですけど、そちらは殺さずに済ませられる事柄なのです」

「そういうものならおそらく大丈夫ですね……卵に関してはどうでしょう?」

「無精卵と有精卵の区別が鳥側につけば話は違うかもしれないが、鶏とか毎日生むなら……? いや、それでもどうか。まあ、それに関しては実際に試してみるしかないだろうな……だができるというのならやってみるのはありか」


 しかし食料として飼い育てるのはできなくとも、その家畜が生み出すもの……乳や卵に関しては別だ。そちらであれば殺さずとも問題なく、それであればオーガンも生産することに苦はない。飼うことが難しくないためむしろやりやすいほうではあるのかもしれない。


「どうせなら蜂蜜とかもできればありがたいんだが」

「残念ながら虫の類は私の能力の対象外なのでできませんね」

「そうか……」


 オーガンの能力もあらゆる存在を対象にするものではない。一般的に動物としてみられる生物が主な対象である。それでも完璧にすべて、というわけでもない。対象にできない相手もいる。当然動物としてみられない虫や魚、植物などは対象にならない。


「それはしかたがないのです。とりあえず一般的な山羊、羊、鶏、牛あたりを確保して飼ってみるのはありかもしれないのですね」

「……まあ、それには牧舎とか作らないといけないけどな。場所の問題もある……それだけの動物を飼うとなると普段過ごす場所には置けないな。匂いとかの問題もある。将来的なことを考えて場所を設置しないと……」

「環境的な問題もあるですよ? 忘れがちですけどここ山の上なのですよ」

「そういえばそうだな……」

「……既にやることに決まっている!?」


 オーガンはやるとはまだ言っていない。なぜか自分がそれらのことをやることにいつの間にか決められている……まあ、彼もここアンデルク城、アンデール領で仕事をする一人の人間としてそういった仕事を回されるのも一つの役割なのかもしれない。ただ、今すぐではない。ワイバーンの厩舎すら作られていない状況だ。それを建ててからになるだろう。それに牧舎などを作る場所も必要である。現状でも開拓はそこまでちゃんと進んでいるわけではない。将来的にちゃんとした街を作る場所とはまた離れた場所に作るべきであるし、作るべき土台、場所の準備もある。またメルシーネの言った通り環境を整えることも必要だ。何せアンデルク城は山の上。いずれ寒くもなるだろう。ともかく今はまだ準備すらできていない状況である。まだまだ先の話となるだろう。



※オーガンはワイバーン関連作業に従事。余計に出番は減る。将来的に村くらいはできるためその時くらいには牧畜関連で出番は増えるかもしれない。

※メルシーネみたいに強い存在でも苦手の物はあるらしい。

※仲良くなった相手はダメだけどそうではない相手なら別に食べるのも加工することも気にしないので一切肉食できないというわけではない。

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