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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
七章 館城建築
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「城の仕組みでそんなことになっているのか……」

「今は魔法陣が刻めないと。まあ、それはしかたがないのかな?」

「ペティの言う通りなら仕方ないんでしょうね」

「そういうこともあるのです」

「ダメなんだ? ふーん……」


 建物に魔法陣を刻めない。そもそも城魔に魔法陣を刻むことでどうしてその魔法陣の魔法を使うことができるのか。これは逆に考えれば城魔に魔法を使う資質があるということではないだろうか。あるいは、城魔の保有するエネルギーは魔力であるということの保証である。そもそも城魔は魔力を持っているというのはなぜか。特殊能力としてペティエットが城内に使える様々な効果、機能がある。清掃能力であったりとか、建物の水の確保も彼女の持つ機能の一つだ。もっとも積極的に彼女自身が使える機能ばかりではなく、建物にそもそも根ざしている効果というのも多い。

 それらを使うために魔力が使われている……他の特殊能力を使うにも魔力が必要であり、つまり魔法に限らず特殊能力を使うのには魔力が必要なのでは? 魔法もまた特殊能力の一つなのでは? そういうロムニルの考えを補強するものになるかもしれない。しかしここで疑問が出るのは城魔の魔力の確保。そもそも人間がどうして魔力を得るのかすらわかっていない現状城魔がどうして魔力を得るのかを考える意味はあまりないかもしれない。さまざまな相手を暴食にて食らいその力を吸収している公也も魔力そのものを食らったことはない。魔力は食らえない。他者を食らうことで成長するのは魔力総量、魔力を保有する器の部分である。ゆえに魔力というものは大いに謎が多い。

 城魔がさまざまな魔法を使うのに必要な魔力を持つ……刻まれている魔法陣の数、その性能を考えても待機状態でも結構な魔力を食うものが多く、それで考えれば城魔が有する魔力はかなりのものだ。公也とは少々比べるとおかしな話になるが、人間よりは遥かに膨大な魔力を有していると言えるものだ。そんな魔力を一体どうやって確保するのか? 仮に空気中に魔力が存在するものであるとして、それだけの魔力を消費した分確保するとなると空気中の魔力が他よりも少なくなるのではないか? そんなことになれば魔法使いならばその違いを感知できるかもしれない。まあそもそもそれくらいの魔力を消費したことはないので何とも言えないが、そういった様子があるようには見えない。


「……ペティ、魔力の確保ってのはそもそもどうやっているんだ?」

「わからない。城自体がどうにかして確保しているのだと思うけど、私は知らない」


 ペティエットもそもそも魔力の確保法は知らない。ペティエットは城の意思ではあるが城とはそもそも別物である。城魔の特殊能力を使い城の管理を行えるのだが、結局は代行に近い存在で城魔そのものとはいいがたい存在である。ゆえにその謎に関して答える知識を持ちえない。


「……そもそも城はなぜここにできたのか」

「他の場所にできることもあるわ。別にここだけに限らないわよ?」

「まあ、確かにな」

「でもできる場所は別に城魔が選んだというわけではないよね。それともここを城魔が選んだとかかな?」

「……ペティは知らなそうだな」

「……ごめんなさい」

「気にしなくていい」


 城はなぜこんな山の中に建ったのか。そもそも城魔という存在自体謎なのになぜこんな場所に建ったのか、ということを考えても仕方がない。魔物はこの世界の摂理に反する存在であり、なぜ生まれるのかもわからない存在だ。魔物の発生する様子を見たことのある者もいないくらいに魔物は不明な点が多い。


「…………」


 ふと、公也はあることを思い出す。魔物の発生、あるいはそれに近いものを見たことがあると。そしてそれは力の流入も要素として含んでいた。魔力、というと少し怪しいが、それは確かに力でありそれによってその存在はかなり強力な存在となった。魔力というものがあらゆる生物の特殊な力を操るためのエネルギーであると考えられるのならば、それもまた魔力を有しているはずである……まあ、厳密に魔力としての認識は魔法などの力を扱わなければ認識できないのでわからないが。


「………………地脈の力か。どう思う、メル?」

「私に話を振るのです?」


 メルシーネ、仕え魔竜。この世界において特殊で特別な唯一独自の存在。この世界で彼女に類似する存在はおそらくいないだろうかなり特殊な魔物である。それが生まれるとき、地脈の力を自分のもとに流れ込ませていた。地脈の力は魔力とは言えない。そもそもその力を通じてほかの生物からおそらく生命力を吸い取っていたのではないかと思うようなものであり、しかしそれでは地脈の力は生命力なのかといわれるとそれもまた違うといいたくなるものだ。そもそも地脈の力とは何なのか、という話になる。それが放出されるところに公也は向かい、そこでその力を実際に見たが、やはり厳密な意味で魔力とは違う力であると感じている。少なくとも魔力ではないと一応断言はできるものではある。


「確かに地脈の力、大地の力、世界に根差す力は可能性としてこの地に建つ存在である城魔に力を与える可能性はあるのです。でも城魔がそれで力を得るのはおそらく違うのです。わずかに流れる力に掠めて吸収する、くらいの話になると思うのです」

「……そもそも地脈の力って言うのはなんだ?」

「大地の力なのです。土地、大地、大陸、星、この土台となる巨大な塊の中に流れる力の一端、人間でいえば血流に近いものになるのです。もっとも大地は生き物ではないのでそういったものとはまた少し違うと思うのです」


 この世界の人間、あるいは人間に限らず多くの生命はその力を正しく認識はしていない。しかし、流れる力というものは確かにある。大地に根差し、その力の流れがそれぞれの場所の環境に影響を与える。地域によって環境が違うのはその力の流れが違うから。ワイバーンの谷のように一定の魔物が多く住む地域というのはその魔物にとって住みやすい場所だから、というのがあるが、これはそういった力の流れによる影響があるから。実際その力の流れが存在していたがゆえに逆に利用してメルシーネが生まれる際に谷にいる生物たちから力を奪うことになったわけであるが。

 ワイバーンの谷に限らずそれぞれの地域に様々な形で影響を与え、その環境を作り出すものとして大地の力、地脈が一つの要素として成り立っている。認識できる存在がいない……力の塊、流れとして大地の外側に流れ出るようなことでもなければそう簡単に認識できるものではないのでほとんどの場合は認識されない。それゆえにその存在に関してこの世界の多くの生物は知りえない。それでもなんとなく感じることのできる存在や、特殊の力などでその力を借りることができる場合もある。あるいは各地に根差す民間信仰的な儀式の一部では魔法陣が使われそれが効果を発揮することがあるが、それは地脈の力を借り受けているからという可能性もある。

 もっともこれらのことに関しては地脈の力というものがどういうものかということが正式にわかっていない現状いろいろなことに対して推察という形で話しているにすぎない。現在地脈の力というものを正式認識しているのはこの場ではメルシーネと公也だけである。ゆえに。この場にいるほかの面々は話についていくことができていなかった。


「地脈の力って何なのかしら……?」

「初めて聞く話……いや、もしかしたら実例はあるのかな。伝説や伝承の類を調べればもしかしたら見つかるかも……」

「二人だけの秘密? 二人だけしか知らない……なんていやらしい響きなのかしら」


 ヴィローサはともかく、ロムニルやリーリェでも知りえないこと……調べれば見つかるかもしれないが、魔法使いでも知らない事柄である。


「…………二人も知らないのか」

「もしかしたら大雑把な認識はだれでもあるかもしれないのです。でも、正しくそれがなんであるかは認識できないと思うのです」


 地脈の力がもしかしたら魔物の発生につながるかもしれない……と公也は一瞬予測を立てるが、そもそも地脈の力という事柄に関しての知識が公也自身ろくに存在しない。メルシーネは一応知っている様子であるが、知識があるというよりも認識している、というほうが正しい。彼女はある意味この世界でも外側、この世界の存在でない存在としての性質を持つ特殊な存在に近い。公也もまた特殊な存在であるが、この世界で生まれたこの世界に由来しない部分を持つ彼女はより特殊だろう。あるいはそれは彼女の眼の奥に存在する桜の印の恩恵か。

 今は状況的に混乱しかねないため、詳しい話はまた今度ということで解散することにした。あのまま話を続けても不毛だし、建物に魔法陣を刻めない以上今は何もできない。試すにしてもそもそも魔法陣の作成を前提に必要とする。そして公也には城壁作りの作業もある。宿づくりに移行したため途中だった作業である。ほかにもいろいろとやることがあるかもしれないし、ともかくのんびり話しているだけではない。いろいろとやることがあるのでそちらに取り掛かるのであった。



※魔力に関する設定は正直どうなっているのか自分でもわからない。根幹の設定自体は変わっていないがこの世界への反映の都合でどう設定が付加されているのか疑問。

※一応は、世界に満ちる力である<希世力>をそれぞれが吸収しこの世界の規格に見合う力に変換して魔法などの特殊能力で使う……みたいな考えになっているが厳密に細かい設定はしていないと思う。大雑把に考えたほうが多分いい。

※主人公が暴食を使うことで魔力保有量が増える要因? 個々の魔力保有量はその個人の肉体寄りの性質だから肉体を食らうことでその肉体を吸収し保有、肉体分の魔力保有量が加算、みたいな感じじゃないかな多分。

※唐突に出る地脈の設定。仮に地脈が魔力のような物、ならばそれが満ちる星がその魔力を使った場合どうなるだろう。まあどちらかというと地脈は世界の力、魔力寄りというよりは生命力寄りだと思われる。より世界の根幹に近い部分の力であるためどちらにでも振らせることはできるが、星がその力を外部に漏らすことで起きるのが生命の発生。つまり魔物の発生である……という地脈について考えたときに新しく生まれた設定。なお正式に反映されるかは不明。あくまで可能性の段階。

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