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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
七章 館城建築
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18



 雪奈が経営するつもりの宿の建築は基本的に木製、木材を用いてのものとなる。ただ、建築資材が何であれ最終的に複数階層の建物にするつもりである。土台となる一階部分はしっかりと作るべきである。当然その基礎となる部分も。


「基礎……と言われてもそもそも基礎の作り方なんて知らないわけだが。まあ、しっかりとした巨大で安定する石材を埋めておけばいいか……? いや、現代のそれとは違うだろうし……柱を埋め込んだほうがいい? 鉄芯、鉄骨とかそういうものではないんだし…………」


 ぶつぶつと考えながら公也は宿となる建物の建築を考える。考えながら、とりあえずということで場合によっては後で改築してもいいし魔法で無理やり補強してもいいだろうと失敗してもなんとかできると言い聞かせてまず作ることから始める。ああだこうだと考えたところで結局建築経験者、ちゃんとした知識を学んだ人間がいない中での建築である。それが正しいのか間違っているのかの結論は出ない。だからともかくまず作るということを優先して建築を行っている。

 もちろんその過程で、建築後で問題が起きる可能性は高い。それはその時に対処すればいいし、最悪倒壊しても城魔自体、その本体部分さえ残っていればおそらく何とかなるだろうとも考えている。宿の経営の問題は出てくるが、宿を失っても雪奈がいれば宿自体の再建さえすればまた宿の経営はできるわけである。そもそもが宿自体は雪奈の能力によってほぼ完成形になるわけであるし、別に建物自体はそこまできちんとしてなくてもいい。

 まあ、外観は弄れないし外側部分はしっかりしていないと困るのでそこはちゃんとしないといけないが、内装はある程度なんとか形さえどうにかなっていればいい、そういう感じである。なので一応ちゃんと建てるつもりではある。その建て方に悩んでいるわけであるが。


「なんでもいいのです。ともかく傾かないようにしっかりしたつくりで建てればとりあえずそれでいいのですよ」

「……まあ、建築家でもない俺にちゃんとした建物を作れと言われても困るのは事実だからな」

「むしろご主人様が建てるのではなくちゃんとした建築家を連れてくるのです。大工がいるのです。ついでに領民にしてしまえば一石二鳥なのですよ」

「それができれば楽なんだけどな……一応他所の領地の人間なわけだし、迂闊に連れてくるわけにもいかないだろう。来たところで仕事が終われば城に缶詰めだ。せめてこの領地がちゃんと発展するまではそうやって他所からの誘致はしづらいと思う」


 現状のアンデール領はアンデルク城しか住むところがない。人もほぼいない状態であり、仮に他所から人が来ても仕事がない状態である……そもそも住む場所も少ないくらいなので人がいないのはある意味し方がない。そもそもアンデール領自体がアクセスの悪い土地である。こんな場所に来る人間は公也たちに連れてこられる形で来るか、あるいはここに城があることを知っている一部の人間、アンデルク山を登りたいと思っている冒険者くらいではないだろうか。つまり基本的に領民となるような普通の人間は望めないということだ。なんというか、現在がどうしようもないため将来的な改善も望めないといったところである。


「流民を連れてくるのです。ホームレスとかもいれば連れくればいいのです。住むところがないのなら住むところを保証すれば生活難の人間なら来るのではないです?」

「まあ、可能性は低くはないだろう。問題はやっぱり移動手段と場所柄の問題と……」

「言い訳をしてもしかたがないのです。ご主人様はそれをするつもりがないのですよね?」

「………………まあ、そうだな。どうすればいいのか、と思ってしまうからだろう」


 他所から人を連れてくる……それはその連れてきた人間に公也が責任を持たなければならないということである。それは公也は別にできないわけではない。アンデール領は公也の手で開拓している現状、そういった連れてきた人を住まわせる環境がないわけではない。ただ、やはり連れてくることに関しては公也自身どことなく自分自身で難しいと思っている。できるできないではなく、それがいいか悪いか、で考える。住むところのない、その地で住人として認められていない人間、罪を犯したとされ身の置き場のない人間、身体障害や精神障害で他者から厳しい視線を向けられその場所で過ごしにくい人間、世の中には行く当てもない辛い立場、厳しい立場の人間はいくらでもいることだろう。そういった人間を連れてきて領民とする……そういうことを公也は考えないでもない。

 しかし、それはできない。なぜかといえば、公也が土地を広げ領民を住まわせるというのは別に困っている人を助けるためのものではないからである。もちろん彼らが困っている立場だから助けるというよりは領民の確保のために助けるわけだが、それはどこか公也自身が嫌だと感じている。それにそれならば別にそういう人間でなくとも、奴隷となっている人間を買って連れてきて奴隷から解放する代わりにこの地で領民として過ごさせる、というのでもいい。結局のところ何らかの理由をつけて無理やり住まわせるということではどちらも同じであり、それが公也が嫌だからそれをやらないという話なのである。

 それを様々な理由をつけて拒否している、というのが現状だ。別にアンデール領は現在の状態でも別に問題はない。そもそもがアンデルク城を確保するためだけの領地指定であり、アンデルク城を守るために公也をその土地の領主とし城主とした……まあ、その原因は公也がアンデルク城、城魔、ペティエットの主となってしまったという事情があり、それが解除できない以上公也が城に住まう立場になるしかないという話になったからである。公也としても帰る家ができたのは悪いことではない。まあ、いいといえるかは分からないのだが。ワイバーンたちのことやアリルフィーラ、メルシーネ、雪奈など拾ってきた存在のこと思えばある意味良かったともいえる。連れてこられた仕事を行う人員や公也の貴族関係の事柄を取りまとめるクラムベルトにはかなり不運なことではある。


「っと。こんなところでいいのです?」

「とりあえずそんなところでいいかな……」

「石で基礎作りとかどことなーく何か違う気がするのです……」

「俺もそう思うが、コンクリートなんてここじゃ作れないからな……」

「作ったとしても建物を作れるほどの量が集まるかはわからないのですね。魔物とかがいるのです。木材石材に限らずその手の魔物を狩って素材を集めるというのも一つの手段としてはありなのではないです?」

「考えたことがなかったな……確かにそういう手段もありか。問題は素材として使える魔物の素材が分からないことだが」


 この世界には魔物がいて、魔物は様々な要素を持つと特殊な素材として使える可能性が高い。その中には優秀な建材として利用できるような魔物もいるかもしれない。もっとも、公也はこの世界のすべての魔物分布を知っているわけではないし、建築資材として使える魔物の素材も知らない。その情報を集め、その素材となる魔物のいる場所の情報を集め、自分で出向くなり探すなりして魔物を倒し集めなければいけない……はっきり言ってかなりの大きな手間となるのでそこまでするよりは身近な木材や石材を加工して建築資材にするほうが手っ取り早いだろうと公也は考えている。


「まあ言ってみただけなのです。とりあえず建築の続きを行うのですよ」

「そうだな……今のところこれで問題ないわけだし、このまま続けていくぞ」

「はいなのです!」


 問題が出たときに改善すればいい……何か起きたときに対処するという考えでとりあえず今はやっていく。考えたところで結局やっていった結果どうなるかがわからない以上やって結果を出していくしかないのである。


※魔法はそこまで万能ではない。ただし城魔の場合魔法陣も使えるので多少は無茶ができるかもしれない。

※領地にまともに人が来るのは何時頃になるやら……予定では十七章あたり?

※主人公が色々と細かいことを気にせず人を連れこれば一応領地の体裁くらいは整えることはできる。ただ本人はあまりやりたくないらしい。まあ仮に人が来ても主人公以外の人員の仕事の方が増えそうだが。

※魔法もそうだけど魔物もそこまで便利ではない。多分。

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