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「さすがにこの規模は力で掘るのは大変なのです。ご主人様の魔法でやるべきではないのです?」
「まあ、確かに大変なのはわかるが……俺の魔法は別の作業に使ってるからメルが作業をしていてくれ」
「頼まれたら断れないのです。でも、大変なのは事実なのですよ?」
現在公也とメルシーネは壁作りの作業中である。メルシーネは壁の土台となる部分を埋め込むための穴掘り、公也はその土台となる巨石づくり中である。城壁に関しては一応石材で作るつもりであるが、柱をつなげるか、色々と考えてとりあえずまずは作ってのちに改良するということで細かいことを気にせず作ることにした。そもそも城壁はただ壁を作ればいいというわけではない。本気で城壁を作るのであればそこに駐屯できるような構造にするべきである。見張り塔などを作るのもありだし、矢を撃つための穴なんかを作ったりと、色々と考えるところはある。そんな将来的な城壁の構造を考えなければいけないので城壁はある程度余裕を持った作りにできるよう外側に広げられるように、あるいは内側に伸ばせるようにスペースを空けておくことも考えなければいけない。
城壁が建物に含まれるのか。それに関しては城魔次第である。ただ、将来的な城壁は内部に通路などを作った人の入れる、滞在できるような空間も作るので建物の一部に認識はしてくれるだろう。ただ城魔の本体、アンデルク城とつなげる必要性はある。そういった部分も考えなければいけないし手間は多いだろう。気にかかる点は城壁の内側が城魔の領域内、建物の内側認識になるかどうか。通路と同じように天井がないとダメな可能性はある。天井なしでも移動できるような状況ならありがたいが、あまりに開放的な場合移動できない可能性もある。そういう点では少々難しい。
「メルはどう思う?」
「いきなりな質問なのです。具体的に何がどうなのか、と言ってもらえないとわからないのです」
「……城壁を作り、それを城魔に城の一部として認識させ、その内側を城の内側という認識にさせる。それでペティエットを外に出せるかどうか」
「また難しい話なのです。わたしからできる回答としては、半々と言ったところなのですね。通路のように建物としての閉じが曖昧でも移動できる以上、天井がなくても問題なく移動できる可能性はあるのです。ただ、城壁の内側を外として認識してもらえるかどうかはまだ不明なのです。天井があっても城壁の内側を城の一部、建物の中として認識するかはわからないわけなのですし」
結局のところ全ては城魔の判断次第。ペティエットが外に出られるかどうか……厳密にいえばペティエットは城魔、城に縛られる存在でありどう頑張っても城の外には出られないわけだが。そこを屁理屈をこねてどうにか城の外でも城の内側に認識できるようにと頑張っているのが現状だ。まあ、ペティエットのための城壁づくり、城の範囲を広げ移動できる範囲を広げるという活動ではあるが、城壁そのものは城の守りを固めるし居住できる範囲を広げるためのもの、街づくり、領地の発展にもつなげられるためのものである。なので本当の意味でペティエットのためだけのもの、というわけではない。作り始めるきっかけは彼女のためというわけではあるが。いや、厳密には彼女から頼まれたからがきっかけだが。
「徒労に終わるかもしれないか……」
「壁自体には意味があるのです。それにこれがダメならダメで別の手段があるのです。城の内側に中庭を作るだけでもだいぶ違うと思うのですよ?」
「まあ、それは考えたが……外に出るのとはまた少し違うからな」
「そうなのですね」
建物に囲まれた内側に自然環境を作る建物内の公園、中庭、そういった環境ならば城も城の内側と認識する可能背は高い……という想定がある。仮にそうでなくとも、城の一部、天井を抜いていき吹き抜けにすることで外のような環境にはできるだろう。そういった形で外に近い環境を作る形にすることも考えの一つにはある。さすがに天井がないからその地点にペティエットが出ていけないということにはならないだろう。中庭はうまくいくかどうかは不明だが。
「ご主人様」
「なんだ?」
「スコップかシャベルが欲しいのです」
「………………素手は厳しいか」
「当然なのです! 当たり前なのです! 素手で人に穴を掘らせるものではないのですよ!」
現在メルシーネは穴掘り中であるが、その穴掘りは素手でやっている。さすがに素手でやるのは無茶ぶりが過ぎる。それでもメルシーネは爪を伸ばすなどができるし、そもそも本来竜の姿が本来であるので多少土に汚れるくらい気にならない。現在の人間に近い肉体でも部分的に竜化を広げ、その状態ならばだいぶ人間の状態よりも掘りやすさは変わってくる……とはいえ、やはり道具を使用するのとは全然規模もやりやすさも作業速度も変わってくるわけである。
「わかった。買ってこよう……というより、買いに行くか」
「なのです。ついでに物資の補給もしてくるのです」
「そうだな」
一応一つ建物は立てているし、城壁の規模は大きなものとなる。城壁に木材を用いるのはさすがに厳しいと考えられるので石材ばかりになるわけでほかの建物に石材を用いたりもしているので物資的には減っている。そう考え物資の補給をしよう、ということになった。別に建築のための物資だけではなくアンデルク城に存在する様々な物資に関してもまた同様である。それなりに消費されているし、最近は公也は建築に集中していたので外に出ていく機会がないのでそろそろ買いに行って補給したほうがいいだろう。まあ、ある程度は自給自足できるようになっているのでそれほど必要とはしないのだが……それでもここアンデルク城、アンデール領には人がいない、つまり植物や肉などの食料はともかく、服飾や道具などの物資は足りなくなる。消費したものを補う補給も自給自足ではまだ足りるというほど用意できるわけでもないのでやはり補給は必須である。
そういうことでまた公也とメルシーネは物資の補給に向かう。街などにももちろん寄り、建築以外の物資も補給する。そしてその途中、適当な街で建築しているところがないかの調査をし、簡単に建築過程を見てみたりもした。そうしてまたアンデルク城に戻ってきて城壁づくりの作業に戻った。
※主人公の考える防壁イメージはRPGなどで見られる中に入れる城の防壁。ただし今作るのは不可能なので将来的な構想。




