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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
七章 館城建築
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15



「ダメだったみたいね」

「この作りだとダメっていうことっすか?」

「外が見えているとダメ……ということはないと思うのです。それだと窓とかがある時点で移動できないということになるのです」

「でももともとペティエットは窓も何もない部屋の中にいたからな。そういうことがあり得てもおかしくはなかった」

「だけど実際にはそうじゃないわよね。外に出ることはできないけど、建物の中ならどこでも移動で生きるのよねキイ様?」

「ああ、そうだ。つまり何らかのルールはある」


 ペティエットは外に出ることができない。建物の一部という認識はされるようだが通路は建物の内側、外という認識はされないらしい。まあ、通路だからではなくこの作りの通路……壁もない柱と屋根と地面だけの建築だからそういう認識になっているということなのだろう。ちゃんとした建築の通路であればペティエットは移動できる。建物内の通路を移動できるのと同じで。


「とりあえず壁を作ることをしないとな……」

「あ、やっぱり普通にほかの建物と同じようにするんすね」

「いや、外が見える……空が見えるようにする形で壁を作るつもりだ。地面もほとんどそのままでな」

「実際に城壁を作る際の試しにするつもりかしら?」

「そうだ」


 最終的に公也はペティエットを城の外に出すつもりである。厳密にいえば城の中ではあるが、天井もなくほとんど外と変わらない環境に出ることができるようにするつもりである。それは城の外側を城壁で覆い、その城壁を城の一部であると認識させ、城壁と城魔本体の間も城の範囲、城の内側と認識させることでペティエットの移動範囲とする、ということだ。これが本当に城の内側としてペティエットの移動範囲になるかは少々怪ししところであるが、できる限り試したいところだ。


「まあ、みんなは特にやらなくてもいい。基本的にこれは俺の仕事だからな」

「……師匠が訓練に参加しないのはそれはそれでこちらも物足りないっすよ」

「フーマル程度がご主人様と戦っても参考にはならないと思うのです。でも、今それなりに強くなってるので実力確認はしたほうがいいかもしれないのです」

「キイ様、最近建築で働き尽くしじゃない。時々は別のことしたり休んだりしなきゃ」

「魔法研究、ロムニルもキミヤ君に参加してもらいたいんじゃないかしら。ずっとこっちばかりっていうのもどうなの?」

「………………とりあえず壁作り、通路が移動できるのとあっちの倉庫な感じの建物が機能するようになってからな、諸々は」


 最近は建築作業ばかりしているため公也はほかのことをあまりしていない。しかし、公也の能力、発想など、求められないものがないわけではない。フーマルがしている魔物退治、それに伴い近傍の森に入り薬草などの素材集めなど、ほかにもやるべきことはあったりする。まあ、今回の建築に関してはここアンデルク城においては規模が大きいなことでもあるしペティエットや雪奈というアンデルク城にいる人間のためのことなのでこれもまたやるべきことではある。将来的なことを考えれば建物を大きくし人の住める範囲を広げるのも必要なことであるし、ある程度やっておくのはいいことだろう。その代わりに他のことを蔑ろにするのは少々どうなのか、ということになるが。






 壁作りは基本的に石積がメイン。煉瓦でもいいといえばいいが、処理、加工、作成の段階で手間も多いのでそのまま石を切って利用する形である。手間はそれなりにかかる。ただ積めばいいだけならば楽なのだが、当然ただ積めばいいというわけではない。積んだものが崩れないようにする必要があるわけでそのための処理のほうが余計に手間取ることになるだろう。しかし、まあ、なんとかできた。作業自体は建物を建てることよりも単純で手早い。


「……ペティ。これだとどうだ?」

「…………ん、入れる」


 それなりに高めの壁、通路の屋根付近にまで届く高さの壁を公也は作った。屋根にくっつき屋根が天井にはならないよう……いや、屋根は通路から空が見えないようほとんどを隠してはいるが、通路が部屋になるような形にはなっていない。屋根と壁の隙間から外が見える感じである。また通路から外れた部分は敷石のしていない外の地面と同じ地面になっている。これは別にここに限らずそもそも地面を整地しその上に床になるものを敷かなければ同じ状態になると思われるが。

 建物の状態はさておき。以前は通路に入ることのできなかったペティエットはちゃんと壁で覆うことで通路に入ることができるようになっていた。仮にこの壁の高さが人の背の大きさより小さい場合はどうなるか、などとも公也は考えるがそこまで検証するのは難しいだろう。とりあえず公也にとっては壁を作ることでペティエットが移動できる範囲になる、という事実が検証できた点こそが重要であると言える。


「この状態なら移動できるのか」

「外につながっていないことが重要かもしれない。壁があればそれに遮られる」

「出ようと思えば出られなくもないと思うが」

「それでも歩いて出られるのと、登らなければ出られないのは大きく違う」

「確かにな……」


 完全に外とつながり開放的な状態と、壁ができて外との隔たりが大きくなった状態で同じ通路である、とは言えないだろう。ペティエットの移動範囲は建物内であるが厳密な意味で密閉はしなくていいようだ。ただ、その隙間、窓などから外に出るようなことはアンデルク城内と同じでできないわけだが。


「とりあえず……ここにもペティエットの能力は届くか?」

「できないこともない。でも、城と同じには発揮できない。通路だから?」

「いや、俺に聞かれても困る……正確には建物といえるほどちゃんとした状態じゃないから、とかかもな。通路の先の建物のほうがどうなのかも判断の要因にできると思う」


 通路だからダメなのか、ちゃんとした建物のように密閉されていないからダメなのか。一応通路は城の一部という認識はされているが、厳密に城のような建物であると認識はされていないのかもしれない。そもそもこの通路のような建物がペティエットの力の及ぶ場所になるというのなら、防壁を建てたときの城の外、城の中庭ともいえるような建物の外の空間にペティエットの能力が及ぶということになる。そうなると地上、外の地面や空間にもその力が及ぶということ……建物の内側以上に影響が大きいと思われる。城魔は世界の摂理に反する魔物であるが、かといって完璧に無秩序というわけではない。その魔物によるが独特のルールがあったりする。現在のペティエットの状態、城魔の特殊能力に関してなどもその一例だろう。

 そうして建物のほうに移動した二人。ペティエットは建物を見て残念そうな様子を見せている。


「出来が良くない」

「…………言わなくてもわかってる」

「ん、でも私のために作ってくれた。それにはとても感謝してる」


 作るなら良いものがいい、と思うわけだが公也が最初からそれほど良いものを作れるわけではない。初めて作ったにしては悪くないとは思っている。しかし、やはり出来としては微妙なところであることには変わりない。


「ありがとう」

「気にするな」


 それでも感謝はある。自分のために頑張った主に対しての多大な感謝が。まあ、それでもまだまだではあるが。



※主人公があちこち引っ張りだこ……魔法で色々便利だから利用したい人たちが多いのです。

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