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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
七章 館城建築
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6



「やあ、精が出るね」

「ロムニル? 外に出るなんて珍しいな。研究はどうした?」


 公也が作業をしているところに普段部屋の中に閉じこもり研究ばかりしているロムニルが声をかけてきた。別にロムニルも全く外に出ないというわけではないが、ここアンデルク城では外に出てできることの少ないという問題もあってあまり外に出ずほぼ部屋の中でしか仕事をしない。


「それなりに充実はしてるよ。魔法薬作りとかは素材が少ないからできないけどね。山の中に探しに行きたいところだけど……流石に僕らでは危険、フーマル君がいても厳しいだろう」

「メルに頼んでおくか……」

「そうね、キイ様がここにいるなら家事以外にあいつがやることないものね」

「……それはヴィラが言っていいことなんだろうか」


 メルシーネは家事だったりワイバーンの世話だったりといろいろやっている。一方でヴィローサは特に仕事をしていない……まあ、ヴィローサは妖精で自由が売り、以前はワイバーンを従わせていたりとしていたが特に今はメルシーネに仕事が行ってそれもない。そのおかげでずっと公也のそばにいることができる。もっともそばにいるだけでそれ以上の意味はない。


「あの竜人の少女だね……竜か。素材としてはいろいろと使い道があるんだろうけど」

「爪ならいくらでも、鱗なら幾らか提供はできるだろうけど、それ以外は無理だからな」

「それはさすがに頼みづらいね。身を削ってくれ、なんて……」

「また生えてくる爪あたりならいくらでも伸ばせるし問題はない感じだが……まあ、鱗も回復するとはいえ、剥がすのもそれなりに痛いだろうし、角とかはさすがにダメだ」

「いやいや、そこまでしてほしいとは思わないよ……ワイバーンもいるけど、彼らから得るのも問題だろうし。まあそこまで欲しているわけでもないから気にしないでほしい」

「そうか?」


 特殊な形ではあるとはいえ竜がいて、ワイバーンも複数いるというある意味素材は豊富な環境である。竜の糞ならば手に入るかもしれないが……ワイバーンはともかくメルシーネの場合はいろいろ問題がありそうな気がしないでもない。


「それにしても、君の魔法は……やはり面白いね」

「そうか?」

「まさか魔法で土木作業をしているとは思わないよ。普通そういったことには使わないものだしね」


 現在公也は魔法で城の建築に使う資材を加工している。精工にまっすぐ、九十度に切られた柱。寸分違わぬといっていいくらいに同じ大きさに加工された木々。全く同じ大きさの煉瓦。同じ形の石の群。すべて公也が魔法で加工して作ったものである。


「普通は魔法でこういった作業はしないのか?」

「基本的にはあまりしないね。魔法を使える冒険者は戦闘にしか魔法を使わないことが多い。そもそもそう様々な形に魔法を使えるほど応用が利かないし、覚えている魔法の種類の問題もある。魔法使いは僕らみたいな研究者は様々な形で魔法を使うことは多いけど、こういった作業で使うことはあまりないかな。むしろ軍属の魔法使いが戦場で応用的に魔法を使う場合とかの方がこういった珍しい使い方をするほうが多いと思う」

「塹壕掘りとかそういうものかな……」

「そもそも魔法を使うのに必要な魔力が問題になるからね。多くの魔法を使える人間が学んでいる魔法は使い方の決まっているそこまで魔力消費の多くない魔法が多い。でも、今君が使っている魔法はその多くが新しい応用的な魔法で魔力の消費は通常のものより増える……しかもそれをこんなにたくさん、精度が高いやり方で。ここまで精密に作業を行える魔法となると……まず魔力消費は大きくなるだろうから普通はここまで使えないよ。公也君の魔力量が大きいからこそこれだけやっても問題ないんだ。うらやましい限りだね」


 魔法における魔力の消費はいろいろだが、その魔法の内容にもよるところはある。詠唱などで消費を下げる、魔法陣や杖などの外部の仕組みで消費を下げる、そういったこともできれば、魔法の内容がより精密に、難しく、細かくなればそれを制御するために魔力の消費が上がる……そういうこともある。


「しかし、本当に城づくりするのかい?」

「まあ、一応な。厳密には城そのものを作るわけにはならないだろうけど」

「一応館を作るつもりらしいわ。それでも簡単ではないと思うけど。ロムニル、手伝ったりはしないの?」

「はは、無理を言わないでもらいたいな。僕ができることは公也君よりもはるかに少ないよ」

「これに関しては俺の仕事だ。ロムニルはもともと魔法使いとしての仕事もある。あまり無理なことを頼まなくていいぞ、ヴィラ」


 一応ロムニルとリーリェは魔法使い、国に所属するものであり本来の仕事というものがある。もっとも……それらの仕事を今彼らがやっているかといえば、特にやっていないといえる。一応魔法薬作りだったり魔法研究がその仕事とも言えるが……まあ公也の元であれこれとやっているというのがある意味では彼らの仕事なのでそれほど大きな問題はない。


「まあ、ロムニルはロムニルでやれることやってくれていればそれでいい。俺はまだ建築資材づくりがあるから」

「ああ、途中で声をかけたようで悪いね」

「ほんとにね」

「……ヴィラ。自重」

「はーい」


 少々口の悪いヴィローサに注意しつつ、公也は仕事に戻る。魔法を使っての資材づくりは魔法の規格、どのような魔法を使うか、どう魔法を使うか、魔法の内容さえしっかりと決めておけば全く同じ資材を作るのが容易である。ただずっとそのために魔法を使うのは結構な単純作業で面倒くさいものである。魔力消費は問題ないにしてもそれを行う側の精神を削っていく。

 公也は比較的そういった単純作業は大丈夫であるが、しかしこれはこれで結構な手間である。


「魔法陣でも作ってそれを起動すれば加工するという風にするか……?」


 魔法陣を用いての魔法の発動。自動化、あるいは起動することによる作業効率の上昇……いろいろと考えるが、すぐにどうするかを決められるわけでもなく、とりあえずということでそのまま作業を続ける。資材自体はそれなりにできている。何か足りないものがないかの確認、持ってきたものの加工だけでどれだけの資材ができているかの確認、まだまだ建築を行うには数が足りてはいない。また資材にするための物を取りに行ったり、その加工を行ったりとやることは多い。


※メルシーネから素材を得る場合は主人公と同じ形。喪失分はその分のエネルギーの喪失となる。なので回復するにしてもあまり望ましいものではない。力が落ちる。

※一般的な魔法の利用は戦闘用。そういう風にこの世界の人間が認識してきたからこそ現在の攻撃魔法系統の魔法が十分な力と安い消費で済むものとなっている。多数の認識による固定化、補正のおかげ。

※魔法陣の魔法は魔法陣自体が発動する魔法を決める。つまり誰がどう使おうとも魔力さえ荒れえば同じ結果を出せる……結果の規格化には都合のいいものである。

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